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2018/09/21

マイルズの7インチ

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いつごろからか CD でもネット配信でも聴けるようになったマイルズ・デイヴィスの7インチ・シングル盤音源。といっても1981年復帰後のもののことじゃなくて、1970年代にリリースされたものの話だ。ぜんぶで六枚九曲。どうして12曲じゃないのかというと、六枚のうち二枚の両面は同じもののパート1、パート2だから。

リリース順に整理すると、以下のとおり。

「マイルズ・ランズ・ザ・ヴードゥー・ダウン/スパニッシュ・キー」1970
「グレイト・エクスペクテイションズ/リトル・ブルー・フロッグ」1970(モノラル)
「モレスター、パート1/パート2」1972/9/29
「ヴォート・フォー・マイルズ、パート1/パート2」1973/3/16
「ビッグ・ファン/ホーリー・ウード」1973/11/2
「レッド・チャイナ・ブルーズ/マイーシャ」1975/4/1

これらのうち、「モレスター、パート1/パート2」、「ヴォート・フォー・マイルズ、パート1/パート2」、「レッド・チャイナ・ブルーズ/マイーシャ」は、いまだ公式 CD(配信でも)リイシューがない。しかし「レッド・チャイナ・ブルーズ」だけは、アルバム『ゲット・アップ・ウィズ・イット』収録のものが約四分程度なので、ほぼ変わらない内容だったかもと推測できる。それ以外はとにかく公式リイシューがないので、聴いて判断していただけない。

「モレスター」というのは聞き慣れない曲名かもしれないが、これはアルバム『オン・ザ・コーナー』A 面ラストの「ブラック・サテン」だ。ブートレグでなら聴けるので、このことを知っている。そのほか、聴いていないものもあるけれど、アルバム収録のものと同題だから、まあだいたいこんな感じかなと内容を推測できるかもしれない。

上記六枚のうち、公式 CD リイシューが早かったのは「ビッグ・ファン/ホーリー・ウード」で、2007年の『ザ・コンプリート・オン・ザ・コーナー・セッションズ』六枚目の最後に収録されている。この7インチ・シングル一枚の両面二曲こそ、ぼくはマイルズの生涯ベスト・ソングふたつだと信じていて、実際、カッコイイよなあ。ファンクだけど暑苦しくなく、軽やかで爽やかな風がサ〜ッと吹き抜けるかのよう。上のプレイリストで聴いていただけたらと思います。

「モレスター、パート1/パート2」「ヴォート・フォー・マイルズ、パート1/パート2」「レッド・チャイナ・ブルーズ/マイーシャ」は公式リイシューがないので、今日はそんな詳しく書かないことにする。ブートで聴ける「モレスター」(aka「ブラック・サテン」)はなかなかいい。なぜなら『オン・ザ・コーナー』収録の「ブラック・サテン」は、イントロとアウトロ以外、どこを切り取っても同じっていう反復だけで成り立っている金太郎飴だから、7インチ用の約三分程度に短縮しても魅力があまり減らない。

裏返せば、ほかのものはアルバム収録の(展開のある)長尺曲をばっさりとカットしてあるわけで、リイシューがあるから聴いて確認できる「マイルズ・ランズ・ザ・ヴードゥー・ダウン/スパニッシュ・キー」「グレイト・エクスペクテイションズ/リトル・ブルー・フロッグ」(これら四つは2015年発売の『ビッチズ・ブルー:40th アニヴァーサリー・デラックス・エディション』四枚組収録)にしたって、アルバム・ヴァージョンと比較したら魅力が落ちてしまう。

例外が上で書いた傑作「ビッグ・ファン/ホーリー・ウード」で、はっきりしている理由が二つ。一つは7インチ・シングルとして美味しいようにテオ・マセロの編集の手が込んでいて丁寧だ。もう一つはこの2トラックのソース音源もわりと長い(七分以上)のだが、それは当時リアルタイムで発表されなかった。『オン・ザ・コーナー』ボックスが出たときが正真正銘初リリースだったんだよ。
そんなこともあってか、「ビッグ・ファン/ホーリー・ウード」の編集に際しては、テオがかなりちゃんとした仕事をやっていると、お聴きになればわかっていただけるはず。比べて「マイルズ・ランズ・ザ・ヴードゥー・ダウン/スパニッシュ・キー」「グレイト・エクスペクテイションズ/リトル・ブルー・フロッグ」は、たんに頭の部分から約三分だけを持ってきたのみなど、イージーだよね。

それら安易な編集だとぼくは感じるシングル四曲のオリジナル・アルバム・ヴァージョンは、すべて『ザ・コンプリート・ビッチズ・ブルー・セッションズ』で聴けるので、もしご興味のあるかたはご確認いただきたい。
そんなわけでぼくの見解では、マイルズの1970年代もの7インチでかなり聴けると思うのは、「ビッグ・ファン/ホーリー・ウード」だけ。上で触れた「モレスター、パート1/パート2」はいまだ公式リイシューがないが、これも悪くないので、出せるなら出してほしい。ほかは、まあちょっと…、どうでしょう?

しかしいずれにしても1970〜75年のマイルズの音楽を、プロデューサーやコロンビアも腐心して、なんとかポップ(ロック)・マーケットに売り込もうと目論んでいたっていうことは証明できる事実だ。45回転の7インチ・シングルとは、基本、ラジオ放送やジューク・ボックスや、購買力の弱い若年層向けのものだからね。それを70年代にはマイルズだってリリースしていたんだ。

マイルズのばあい、1969年ごろからのスタジオ・セッションで録音されたものはどれも一曲の演奏時間が長すぎて、本人がいくらあんなふうに発言しても、そのままでは一般のロック/ポップ・リスナー層にはアピールしにくかったはず。45回転の7インチにしようという提案は、たぶんコロンビアのクライヴ・デイヴィスから持ちかけたことだったんじゃないかとぼくは見ている。クライヴは、マイルズ・バンドの(東西)フィルモア出演を実現させた人物だ。

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