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2018/09/10

ビートルズも示すソウルとカントリーの近さ

 

 

いあや、1曲目「ドライヴ・マイ・カー」がカッコイイったらありゃしない。なんだこれ、なんでこんなにカッコイイんだ?ビートルズでも『ラバー・ソウル』みたいなアルバムになると、ぼくがなにか新鮮なことを言えるなんて可能性はないから、いま聴いての個人的好みと感想だけ記しておこう。どの曲をだれが書き、メイン・ヴォーカルはだれ、楽器ソロをとるのはだれ、みたいな各種情報を記しておく必要はまったくない音楽家だ。

 

 

まあそんで、幕開けの「ドライヴ・マイ・カー」一発のカッコよさで決まりっていうのがぼくにとっての『ラバー・ソウル』なんだけど、この曲はちょっと黒っぽいフィーリングというかアメリカ黒人音楽に相通ずるノリがあるように思うよね。この「ドライヴ・マイ・カー」だけじゃなく、『ラバー・ソウル』のなかにはいくつもある。

 

 

たとえば、5曲目「シンク・フォー・ユアセルフ」、6「ザ・ワード」、12「ウェイト」などには、わりと典型的なブラック・フィールがあるように聴こえるよね。米リズム&ブルーズ/ソウル・ミュージックみたいに響くんじゃないかと思うんだ。3「ユー・ウォント・シー・ミー」もここに入れていい?ちょっと違う?

 

 

ところでさ、「シンク・フォー・ユアセルフ」では、一曲全編をクラヴィネット・サウンドがおおっている。なんてことはもちろんなくて(まだこの楽器は誕生していない)エレキ・ギターなんだけど、かなり深めにエフェクトを効かせ、やっぱりまるでスティーヴィ・ワンダーを聴いているかのような気分になるよ、ぼくは。この粘っこい音色とノリがさ。大好き。

 

 

だからビートルズ『ラバー・ソウル』5曲目「シンク・フォー・ユアセルフ」で、実質的なクラヴィネット・サウンド誕生と言いたい。もっとあとになると、彼ら四人はビリー・プレストンと正式共演することになるね。そんなことの先取りが、ここにすでにあった、んだとぼくは最近考えている。6「ザ・ワード」で聴こえるオルガンも黒っぽくファンキーだ。

 

 

かつてデビュー前後あたりの時期のビートルズには、アメリカ産黒人ブルーズやリズム&ブルーズ・ソングのカヴァーがたくさんあった。あのころはストレート・カヴァーだったけれど、『ラバー・ソウル』のころになるとみずからの音楽のなかに完全に渾然と融和しているのは、こういった数曲を聴けばわかることだよね。理解と表現が深くなっている。オリジナル・ソングのなかに(そうとわからないほどにまで)溶け込んでいる。

 

 

この点で興味深いのが、『ラバー・ソウル』には米カントリー・ミュージック・テイストな曲も数個あることだ。具体的には8曲目「ワット・ゴーズ・オン」、10曲目「アイム・ルッキング・スルー・ユー」、14曲目「ラン・フォー・ユア・ライフ」あたりかがそうかな。一見、ソウル・ミュージック風味とは無関係そうに思えるかもしれないけれど。

 

 

実際のところ、アメリカ(の南部)におけるヒルビリー・ミュージックは、以前からぼくも書いているが白人版ブルーズとして誕生し、実際そのころには曲のレパートリーだって黒人白人で共有していたし、そういうのが後のカントリー・ミュージックへと発展した。1950年代末ごろからのソウル勃興(は、べつにリズム&ブルーズの呼び名のままでも中身はいっしょだが)は、黒人ブルーズもさることながら、カントリー・ミュージックからの流れも大きい。実際、南部のスタジオで録音されたサザン・ソウルの伴奏者は白人が多かったし、曲のレパートリーだって、ね。

 

 

ビートルズの『ラバー・ソウル』だと、黒っぽいリズム&ブルーズ曲と白っぽいカントリー曲が、まだそこまで一体化はしてなくて、それぞれ別個に並んでいるだけかもしれないが、だからこそ「生の」音楽のありようを垣間見るようで、なかなかおもしろいんじゃないかと思う。曲によっては、二者が溶けかけてポップに昇華されつつあると判断してもいいかも?と思える瞬間もある。「ノーウィジアン・ウッド」「ノーウェア・マン」「イフ・アイ・ニーディッド・サムワン」とかさ。

 

 

個人的には「ミシェル」「ガール」「イン・マイ・ライフ」といった、センチメンタルで切な系バラードがかなりの好物なんだけど、このへんにかんして言えることはなんにもないはず。一般的な人気では「イン・マイ・ライフ」だけど(離婚した妻が大好きだった、だからよく弾き語った)、ぼく的には「ミシェル」だなあ、特に。だれもいない部屋でこれをいちばんよく弾いた。

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