ニジェールの河内音頭か浪曲か 〜 タル・ナシオナル
このニジェールのバンド、タル・ナシオナルの2018年作『タンタバラ』というアルバム、今年春前に bunboni さんの以下の記事で教えていただいてすぐ CD で買いました。ロックには聴こえませんけれど、いい作品。
最近、盆踊りだとかお祭りビートだとか河内音頭だとか阿波踊りだとか(は言ってないのか)、そんなことばかりいろんな音楽をつかまえては書いているような気がするぼくだけど、でもタル・ナシオナルのこの新作はマジで日本のお囃子だ。河内音頭かな、いちばん近いのは。でも浪曲っぽくもある。
なんたってすっごい迫力とナマナマしさじゃないか。だから、ばあいによってはかなりヤカマシイというか、ウルサイのだよねえ〜。つまり、気分によってはさ。音楽ってだいたいどんなもんでも興味ないひとにはヤカマシイものだけど、タル・ナシオナルの『タンタバラ』はどう聴いたって河内音頭なんだから、そりゃあウルサイよ(笑)。
みなさんがタル・ナシオナルのこのアルバムに好意的なのも、まさにこれが河内音頭だからに違いない。まずアルバム1曲目「Tantabara」を聴けば、リズムが出る前にそれを実感できる。だれが歌っているのか、アルバム一曲ごとに違う声が聴こえるが、この1曲目イントロで、語りに続きコブシをまわすヴォーカリストと、その背後での打楽器の使いかたを聴いてほしい。河内音頭だとぼくが言うのはまっとうだとご納得いただけるはず。
そうはいっても、リズムが出てからはハチロク(6/8拍子)になるので、そこからは河内音頭や浪曲からやや遠ざかる。けれど、2曲目以後も含め、入れ替わり立ち替わりリード・ヴォーカルをとる全員のコブシまわしの流儀、エレキ・ギターの細かいリフ弾きの反復、バンドのつんのめるような迫力と高揚感など、河内のダンス・ミュージックに相通ずる要素は濃いよなあ。
それから『タンタバラ』で聴けるドラムスの音、特にスネアのそれは、ややイジってあるようだ。ハイ・ファイなサウンドには聴こえない。でも bunboni さんのおっしゃるように故意にロー・ファイを狙った意図的ミキシングでもない。たぶんこれは一発録りのライヴ感を重視したということなんだろうね。一発録音かどうかはわからないというか、違うんだろうけれど、そういった生、ライヴ感のエネルギーを活かそうとしたと、そういうことじゃないだろうか。
ドラムスだけでなく、エレキ・ギターの音も、歌手の声も、2018年作にしてはハイ・ファイな録音&ミキシングからちょぴり遠い『タンタバラ』だけど、直前で書いたように、ライヴ感、ナマナマしさを、というのはつまり、どうやらタル・ナシオナルは現場で本領を発揮するライヴ・バンドなんだそうだから、そんなサウンドをなんとか CD(や配信や)などの商品に詰めようとした結果なのかもしれない。
そんなライヴな現場感重視のレコーディング・プロダクションも、河内音頭に似ている。
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