come on, let the good times roll! 〜 ストーンズのブルーズ賛歌ライヴ
ローリング・ストーンズの『ラヴ・ユー・ライヴ』。いまから41年前、1977年のちょうどいまごろ(に、これを書いている)9月23日に二枚組ライヴ・アルバムとして発売された。1975年夏の北米ツアー、1976年のヨーロッパ・ツアー、1977年のトロント公演(エル・モカンボ・クラブ)からの音源を収録。ロニー・ウッド正式参加後初のライヴ盤で、現在までも、ストーンズの公式ライヴ盤では、結局のところ、これがいちばんなのかもしれない。
いやいや、数年前(もっと前だっけ?)に、まず最初は公式ダウンロード形式でだけ販売された1973年ライヴ『ザ・ブリュッセル・アフェア』や、その前年72年ライヴの DVD『レイディーズ・アンド・ジェントルメン』も公式CD として販売されているが、長年公式には存在しなかったそれらは、やっぱりちょっと遅きに失した感がある。内容は極上だけど、『ラヴ・ユー・ライヴ』で定着したイメージは抜きがたい。
さらに『ラヴ・ユー・ライヴ』にはこの作品ならでは!という、とても強いアピールがあるんだよね。大きく分けて二点。そしてその二点は深く関連して、このライヴ・アルバムの主題をあぶりだしている。一点は、オープニングとクロージングでフィーチャーされているスティール・バンド・アソシエイション・オヴ・アメリカのパーカッション・アンサンブル。もう一点は、アメリカ黒人ブルーズへのオマージュで構成されているということ。
二点目のブルーズ・オマージュという面はわかりやすいはず。レコードでは二枚目 A 面だったエル・モカンボ・サイドに典型的に象徴されているから。ここの四曲がこのアルバムのハイライトだということではみんなの意見が一致するはず。三つ目の「リトル・レッド・ルースター」(ハウリン・ウルフ)が終わると、右チャンネルから "come on, let the good times roll!" とのお客さんの大きな声が飛ぶのが鮮明に記録されている。そう、ブルーズをやったり聴いたりの体験とは、そういったものだよね。
アルバム『ラヴ・ユー・ライヴ』のほかの部分も、選曲といい演唱といい、よく考えてみたら黒人ブルーズに即したものになっている。ストレートな定型ブルーズは(ほぼ)ないものの、ブルーズを土台とする、というよりも本質的にブルーズそのものであるようなものがどんどん並んでいるじゃないか。ぼくにはそう聴こえるんだけどね。そんなところも、いまやこのバンドは時代遅れかもしれないが、2018年の時流に乗っていることとリスナーが楽しめるかどうかということは、必ずしも関係がない。
アルバム・ラストに「シンパシー・フォー・ザ・デヴル」があるよね。1968年のアルバム『ベガーズ・バンケット』がどんな作品だったかをよく思い出してほしい。アメリカの、特に南部黒人の、ブルーズ・ミュージックへの捧げものだったよね。そのシンボリックなワン・トラックとして、悪魔の音楽と呼ばれるブルーズへの共感(sympathy)を表現するものとして、曲「シンパシー・フォー・ザ・デヴル」が幕開けに置かれていた。
そして『ベガーズ・バンケット』での「シンパシー・フォー・ザ・デヴル」ではパーカッション・アンサンブルがフィーチャーされていたよね。アンサンブルというかゲスト参加はロッキー・ディジョーンのコンガだけだったけれど、チャーリー・ウォッツのドラムスとあわせての打楽器重なり合いで、このブルーズ・シンパシー・ソングのいろどりをにぎやかにしていた。
『ラヴ・ユー・ライヴ』でのスティール・バンド・アソシエイション・オヴ・アメリカは、オープニングの「庶民のファンファーレ」で彼らだけがフィーチャーされている以外は、ラストの「シンパシー・フォー・ザ・デヴル」でだけストーンズと共演しているんだよね。アルバムの幕開けと締めくくりに登場するということと、アルバム幕閉めのブルーズ賛歌が持つ意味合いを『ベガーズ・バンケット』開幕と同様のものにしているということと、エル・モカンボ・サイドのことやなどなど、今日書いてきたことを考え合わせると、ストーンズがアルバム『ラヴ・ユー・ライヴ』で掲げた主題、あ、いや、というかぼくが勝手に読み込んだ作品の意味みたいなことは、これ以上、説明不要だよね。
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