ちょっとのボレーロ「ペルフィディア」〜 自分用メモ
メキシコのアルベルト・ドミンゲスが書いたボレーロ「ペルフィディア」。いい曲だよねえ。アメリカ合衆国ではザビア・クガートやヴェンチャーズなどが有名にした曲らしいけれど、知らないのだった。ぼくがはじめてこの曲に出会ったのはナット・キング・コールがスペイン語のまま歌ったものだ。それで参っちゃった。なんていい曲なんだと。ナットのスペイン語歌曲集は三作あって、二作目の『ア・ミス・アミーゴス』に「ペルフィディア」はある。
といっても最初からナット・キング・コールのスペイン語歌曲集で聴いていたわけじゃない。きっかけがあったんだ。それはエル・スールさん謹製のフィーリン・コンピレイション『フィーリンを感じて』のこと。そのなかにナットの「ペルフィディア」があった。あのコンピを聴いていて、ふと流れきたナットの「ペルフィディア」に惚れちゃった。それまでナットにスペイン語歌集があるということすら知らなかったんだ。エル・スール原田さんに多大なる感謝を捧げたい。
それで好きになってしまった。ナットのスペイン語歌曲も、ドミンゲスの「ペルフィディア」のことも、それからこういった甘いボレーロ(〜フィーリン)のこともさ。でもその後たいしてこの曲のことを追いかけまわしているわけでもない。ただ流れくる偶然の出会い、すれちがい、たとえばだれかボレーロ歌手の作品、ラテン・ソング集などで「ペルフィディア」があればうれしいといった程度。そう、男女が街中での偶然の出逢いを大切にするかのごとく、特に待ち合わせもせず、ぶらりとすれちがいざまに目を交わせれば、それで満足。
だから、今日は特別に自分の iTunes 内を 'Perfidia' で検索して出てきたものだけちゃちゃっと並べて、それらを Spotify で検索すればぜんぶ見つかったのでプレイリストを作成したっていう、これはこの曲にかんするときのぼくとしては、ちょっと珍しいことなのだ。そんなわけでザビア・クガートもヴェンチャーズもない。メインはボレーロ歌手だ。きっかけだったナット・キング・コールをトップに置いた。
その後はボレーロ歌手が続く。4つめのラピータ・パロメーラは、上記エル・スール製アンソロジーのおまけ的なミニ・ディスク『フィーリング・フィーリン:エクストラ・トラックス』に収録されているもの。その前のエルビラ・リオスとエルビラ・キンターナは、いずれもスペインの会社 Vintage Music が CD 復刻した1950年代ボレーロ10インチ盤から。
エルビラ・リオスにしろエルビラ・キンターナにしろラピータ・パロメーラにしろ、このドミンゲスのボレーロ「ペルフィディア」を歌っているのを聴くと、なんというか、どこか暗い影、決して、なににも期待しまいという生きかたのなかから、それでも訪れようとしては消えていくかもしれない幸運やロマンスを、静かに見つめながら歌う感じとでもいうか(©︎ エル・スール原田さん)、そんな仄暗さとロマンティシズムが感じられる。そういったところが大好きなんだよね、ぼくは。
だから、プレイリスト5、6曲目で展開する「ペルフィディア」はかなりフィーリングが異なっているように聴こえる。ロック・ステディ歌手フィリス・ディロンのヴァージョンには仄暗さがなく、裏切られただとか別れだとかいったかなしみがあまり感じられない。フリオ・グティエレスのデスカルガ・ヴァージョンも、同様に明るい。ほぼ底抜けに陽気だと言っていい。
でもそういった解釈もまたいいんじゃないかな。重く哀しく苦しい歌詞内容を持つ歌であっても、いや、それだからこそかえって、こういった明るい曲調にリアレンジしてとらえなおすのに大きな意味がありそうだ。フィリスのヴァージョンなんか、ちょっと歌い終えたら「サック・イット・トゥ・ミー、ベイビー」なんて言うし、そこがかわいくチャーミングだ。楽器演奏だけのジャム・セッションとなっているフリオ・グティエレスのも、ぼくは好きだ。
要は、この曲「ペルフィディア」にふと不意に出会えれば、それだけでいいんだね、たぶん。
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