ホレス・シルヴァーのロンサム・ピアノ、真夜中の
01. Shirl (Six Pieces of Silver)
02. For Heaven's Sake (Six Pieces of Silver)
03. Melancholy Mood (Further Explorations)
04. Sweet Stuff (Finger Poppin')
05. The St. Vitus Dance (Blowin' The Blues Away)
06. Melancholy Mood (Blowin' The Blues Away)
07. Cherry Blossom (The Tokyo Blues)
08. Lonely Woman (Song For My Father)
09. Que Pasa (Song For My Father)
10. Next Time I Fall In Love (Serenade to a Soul Sister)
ホレス・シルヴァーのリーダー作品はぜんぶ(基本)クインテット編成だと思うんだけど、多くのアルバムに、管楽器奏者を抜いて自身のピアノだけをフィーチャーしたトリオ演奏ピースがちょこっとある。たいていのばあい一枚に一曲だけど、複数収録のことだってある。これはいったいなんだろう?ちょっとしたチェンジ・オヴ・ペースみたいなもん?
むろんこんなことはホレスだけじゃなく多くのジャズ・メンがやっていることだ。コンボ編成での作品にちょこっとだけピアノ・ソロとかトリオとかの演奏を混ぜ込むってことはね。でもマイルズ・デイヴィス含めほとんどのケースで、それはまれな例外なのだ。ホレスのばあい、ほぼどのアルバムにも必ず一曲あるっていうくらいの定常的な具合だから、やはりちょっと異彩を放っていると思うんだよね。
ホレスのアルバムを Spotify でざっと眺めてそんなのをささっと拾ってプレイリストにしておいた。オリジナル・レコードにもとからあったものと、ある時期のリマスター CD で追加されたものとが混じっているが、詳記するのは面倒だからしない。ご興味をお持ちのかたはネットで調べてみてほしい。ぜんぶわかるはず。9「ケ・パサ」はクインテット演奏ヴァージョンがオリジナル。
上記10曲のうち3と6は同じ曲だけど、ヴァージョン違いだからいちおう入れといた。まあでもだいたいおんなじだな。さて、これらのうち、5「聖ヴィトゥスの踊り」と9「ケ・パサ」だけやや傾向が異なっている。エキゾティックなラテン・リズムを使ってミドル・テンポでグルーヴする感じだよね。これら以外は、知らないひとに黙って聴かせたら、「あれっ、ぜんぶ同じなんじゃない?」って言われそうなほど、中身は似ている。
なんというか、真夜中にどこかの暗い室内でひとりたたずんでいるような、そんな曲想のものばかりだよね。収録されているアルバムのなかで聴くからいいのであって、ちょうどいいムード転換になるんであって、アンタみたいにそればっかり抜き出して一堂に並べてみたっておもしろくないよ、ぜんぶおんなじようなもんだし、って言われそうだ。たしかにおっしゃるとおり。
ずっと前の大学生のころから、でもこれはちょっと妙な感じだなあ、ほかのハード・バップの音楽家のリーダー作品では聴かれない傾向だとずっと感じていて、なんだかロンリー・ウーマン、じゃなくてロンリー・マン・イン・ザ・ミッドナイトか、そんな雰囲気だ、なかなかいいぞと、むかしからそうだったが、特に最近とみにそう感じるようになっている。
今日のプレイリストみたいに、ホレスのこんな傾向のピアノ・トリオ・ピースだけ集めてどんどん聴くのは、夜、お風呂も終えて、そろそろベッドに向かおうかという入眠準備で、部屋の照明も落とし暗くして、流れている音楽のヴォリュームもやや下げて、平穏で安閑な気分でジッとすわっているという、そんなときにまさにピッタリふさわしいムードをつくりあげてくれる BGM だからでもあるんだよね。
音楽の効用は各種ある。聴く時間帯、自分の肉体的精神的コンディション、いまなにを聴きたいか、どんな必要性でもあったりするのかなどなど、それぞれに応じて、なにを聴くかどう聴くかは変わる。同じ音楽でも姿を変える。暗闇でただジッとひとり孤独にたたずんでいるみたいなホレスのこういったピアノ・トリオ作品集だって、ときどきはそれにふさわしい状況っていうのがあるんだよね。
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