サッチモ化しているポール・マッカートニーがとてもいい
ちょうどいま来日中なので、機を逸さずメモしておきたい。
昨夜 2018.10.31 に松山市内で OKI さんのソロ・ライヴを体験しにいった同じとき、ポール・マッカートニーの東京ドーム公演が行われた。Twitter や Instagram のぼくのタイムラインにも、いろんな投稿があふれている。いまのポールとは、21世紀のサッチモ(ルイ・アームストロング)なのだということを、ここで声を大にして言っておきたいのだ。
音楽エンターテイメントとはなにか、音楽家とはどういうものか、の理想型がここにあるということなんだ。褒めすぎかもしれないが、1960年代のサッチモに間に合わなかったぼくたちにとっては、いまやポールこそかけがえのない存在なのだ。歌手とは、音楽家とは、芸の人間とは、オーディエンスに楽しんでもらうことがナンバー・ワンの目的で、というかそれがすべてで、そのために100%全力を尽くす、これが理想だとぼくだったら思う。
そんなポピュラー・ミュージックの音楽家の理想を、ただの空想ではなく地で行っていたのが、すなわちフル実現していた、している、のがサッチモであり、現在なら、そうだなあ、1990年代ごろからかな、そのあたりからのポールなんじゃないかと思っているんだよね。いやあ、ポールはここまで来たんだ、あのサッチモの境地にまで到達し、みんなを喜ばせ、楽しませ、幸せな気分にしている。笑顔をふりまき、ギターやベースやピアノを弾き、歌い、ファン・サーヴィスを欠かさず、なにもかもぼくたちリスナーのために、と思ってその思い一筋で、ステージをこなし録音作品を届けてくれる。楽器をトランペットに置き換えれば、そのままサッチモのありようと同じじゃないか。
クラシック音楽の世界には疎いのでなにも言えない。ポピュラー音楽とは、世界のどんなものでも、現場でのライヴや録音物でもって、聴くひとみんなに楽しんでもらいたい喜んでもらいたいとか、ビックリしたり、ときどき切なくかなしい気分にひたって、ちょっぴり泣いたりもし、でも最終的にはきれいに昇華され心が晴れて、それでもって生活を、人生を、元気にやっていこうという 〜〜 そんなことの一助となるというのが、最大最高の効用だとぼくは信じている。
一助どころか、ひとによっては、というかぼくのばあいは間違いなく、人生最大のヘルパーが、というか人生とは、音楽だ。音楽を聴くことに実用的な意味がもしかりにあるとするならば、まさにこの一点にかかわっている。ぼくにとっては生きるよすが、それが音楽だ。聴くひとを、最終的には幸せにしたい、このことだけをひたすら念頭に置いて、音楽を届けてくれたのがサッチモで、20世紀の終わりごろからその役目を自覚し実行しているのがポール・マッカートニーなんじゃないのかな。
だから、サッチモがそうであったようにポールもライヴ・ステージでは歯を見せて満面の笑みを浮かべ手を振り、日本では日の丸の旗を振るようにどこへ行ってもそこの旗を振りまくり、そこのことばでしゃべりかけ、そしてなにより歌と演奏で楽しませれてくれて、会場を去るときのオーディエンスが心ゆくまで満足できた、思い残すことはない、という状態になるまで全力を尽くし音楽をやってくれる。
音楽は、結局、エンターテイメント。このことがすべてだ。エンターテイメントとは、つまるところ、なんなのか?このことを常に忘れず自問自答し、出た答えを不断に実行できる歌手、音楽家こそ、ぼくたちにとっては至高の存在じゃないだろうか。サッチモのばあい、ある時期以後ステージ芸人と化したような姿を批判された、こともある。いまのポールにも、ひょっとしたら否定的な声がある、かもしれない。
でも、そんなネガティヴ発言に耳を貸すことはない。サッチモもポールも、音楽家とはなにか、なにをすべきか、わかっている。わかって、それを実行し、成功している。尊敬しかないじゃないか。
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