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2018/11/08

プリンスのデスカルガ

今2018年晩夏、『レコード・コレクターズ』誌にディスク・レヴューが載ったので知ったプリンスのライヴ・アルバム『グラム・スラム、マイアミ '94』。 Vol. 1と2で計四枚。しかしこれはなんだろう?オフィシャルじゃなくて密造酒を半分飲みかけみたいなものか、あるいは100%海賊かもしれないが、かなりちゃんとした日本語解説文がそれぞれ封入されている。そんなブートレグは見たことないなあ。まあいい。当日は全米で衛星放送されたそうだから、それがソースなんだろう。アマゾンでふつうに買えるんだから話題にしたい。

『グラム・スラム、マイアミ '94』は、1994年6月7日(音楽家の誕生日)から三日間、マイアミにあるグラム・スラム・クラブ(自身で経営)出演のプリンス・バンドによる演唱から構成されているようだ。Vol. 2 のほうにあるスティーヴィ・ワンダー「メイビー・ユア・ベイビー」と、歌なしでギター弾きまくりのサンタナ・メドレーが最大の聴きものかな。そして、ラテン・ナンバー複数が即興ジャムと化しているんだからあたりまえの話だが、サンタナ・メドレーでこそ、いちばんデスカルガになっている。いやあ、楽しい〜。カッコイイですねえ〜。

バンドの編成は、プリンス、トミー・バーバレラ(key)、モーリス・ヘイズ(org)、ソニー・T(bass)、マイケル・ブランド(dms)、マイテ・ガルシア(vo)。サイド・ヴォーカルはマイテだけじゃなく他のメンバーも担当している模様。さらに司会者らしき人物の声も聴こえる。このメンツで『グラム・スラム、マイアミ '94』の Vol. 1 は1994/6/7のフル・ステージを、Vol. 2 は一枚目が6/8、二枚目が6/9から抜粋収録してあるということかな。

この計四枚に収録のカヴァー・ソングは Vol. 2 に集中していて、上記スティーヴィとサンタナ以外にも、ソルト・ン・ペパ(「イッツ・オーライト」)、グレアム・セントラル・ステイション(「アイ・ビリーヴ・イン・ユー」)をやっている。がまあしかしスティーヴィとサンタナこそが白眉だと聴こえるね。さらにいえば、Vol. 1のほうにある生演奏アシッド・ジャズ「スペース」(『カム』)、12小節定型ブルーズの「ザ・ライド」(『クリスタル・ボール』)も最高だし、1st ナイトの締めくくり「シー」のソロなどもかなりいい。

なかでも「ザ・ライド」では、長尺(11分以上)のギター・ソロのなかで、みずから「ハッピー・バースデイ」を弾いているのが微笑ましい。いいねこれ。全体的にはダウン・ホームなアーシー感の強いエグ味のあるブルーズ演奏にしあがっていて、下世話にグイグイもりあげるのが、ブルーズ好きにはたまらない快感だ。いやあ、すばらしい。

Vol. 1&2と両方にある当時の自作コンテンポラリー・ナンバー「ザ・モスト・ビューティフル・ガール・イン・ザ・ワールド」は、Vol. 2 収録ヴァージョンのほうがいいね。しかしこれ、マイテのことを歌った曲のはずだけど、その当人がバンドの一員として参加しているわけだよ。ちょうどワーナーと揉めていた時期だけど、私生活は、あるいは音楽的にも、かなり充実していたってことなんだろうなあ。

さて、目玉であるスティーヴィの「メイビー・ユア・ベイビー」と、「サンタナ・メドレー」。前者では、ちょうど『トーキング・ブック』でレイ・パーカー Jr がそうしていたように、プリンスもギター・ソロで歌を、というか一曲全体をラッピングしている。しかしスティーヴィと違うのは、ギターも歌も本人が同時にやっているということだ。こりゃ〜、目を(耳を?)剥いちゃうよ。すごいなあ、っていまさらですけどね、こんな史上空前の天才に向かって。

三夜目のオープニングだったのかもしれない「サンタナ・メドレー」ではまずドラム・ソロからはじまっているが、それはプリンスが叩いているのだろう。そうだからわざわざ曲名に入っているんだと思う。その後、怒涛のギター弾きまくりパートに突入し、まさにこれぞプリンスのデスカルガと呼ぶべき即興ジャム・セッションを展開。もちろんソンのモントゥーノ、マンボ、サルサの伝統に則ったものではちっともないけれども、サンタナ・ナンバーの連続なんだし、あながち外しすぎではないのかもよ〜。

「サンタナ・メドレー」では一つづつの曲名が記されていない。文字どおりトロトロのジャムになっているから判別困難という面もある。ぼくの聴くかぎり「トゥーサン・ローヴェルチュール(『サンタナ III』)、「ジプシー・クイーン」(『天の守護神』)、「ソウル・サクリファイス」(『サンタナ』)の三曲、とほかすこしが渾然一体となって溶けているように聴こえる。それをインプロヴァイズしてやっているのかなと。

プリンスのライヴではこのマイアミ1994だけじゃなく、そのほかの公式盤二種などでもそうなんだけど、煮込みに煮込んで具材が原型をとどめない濃厚スープとなっているばあいが多く、それを、バンド・メンの演奏あわせ全員で即興ジャム・セッションみたいにやっているという具合だと思うんだ。サンタナ好きだったプリンスらしく、そういうのがしばしばラテン・ミュージック・ジャム化しているから、だからデスカルガだって言うわけ。

もちろん(昨日の記事で書いた)キューバ音楽でのいわゆるデスカルガじゃないんだけどね、ぜんぜん。でもまあいいじゃないか、たまにはことばの意味をひろげて応用しても。JATP みたいなただのライヴ・ジャム・セッションじゃない、プリンス・バンドのばあいは緊密な統合性のもとビシッとタイトに統率され、きっちり展開している。リズムだってハードでグルーヴィでダンサブルなことこの上ない。それにしばしば中南米音楽に寄っているしさぁ。プリンスのライヴ盤を聴くキューバ音楽ファンなら、デスカルガだっていうのにちょっとはうなずいていただけるかもよ〜。

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