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2018/12/29

声とギター、2018 〜 ブラジル三題(1)

年間ベスト・テンの記事でも書いたけれど、2018年はブラジル音楽の新作が充実していたという印象がある。そんな年を締めくくる三日間に、今年終盤に知ったブラジル音楽の傑作三枚をとりあげてメモしておきたい。三日連続で。それで大晦日まで行く。ブラジル三題でブラジルの年2018年は終わりだ。

・Danilo Moraes "Obra Filha"
・Monarco "De Todos Os Tempos"
・Martinho Da Vila "Bandeira Da Fé"

この三枚、購入時期からしてベスト・テン選出に間に合わなかっただけだ。あと一ヶ月早く聴いていれば、三つともベスト・テン入りだったはず。それほど内容はすばらしい。って、これを書いている今日は12月9日だから(ベスト・テンを書いたのはもっと前)、年間ベストに入れられないことはないんだけどさっ。いやあ、かなりつらいことがいくえにも重なった年だったけど、音楽的にはやっぱり超充実していたよなあ。

そんなわけで、今日はブラジルのシンガー・ソングライター、ダニーロ・モラエスのギター弾き語りライヴ『Obra Filha』を。これもまたまたまた bunboni さんに教えていただいたもの(いつもながら、感謝しかない)。bunboni さんですらこれではじめて知ったとおっしゃるくらいなんだから、ぼくが自力でたどりつくはずもない。ありがとうございます。本当にいいアルバム。そんでもって、ぼく好み。
最高にすばらしいのは、とっても親密なアット・ホーム感がこのライヴ・アルバムに漂っているところ。2017年5月27日、サン・パウロのスタジオ Family Mob でのライヴ録音だけど、人間的あたたかみがあふれているんだよね。感情が、というか情緒というかエモーションがねえ、いいよ、とっても、ダニーロ・モラエスの『オブラ・フィーリャ』。一曲女性歌手レナ・バウルがゲスト参加するだけ(4曲目)で、ほかはぜんぶがダニーロひとりでのギター弾き語り。

CD(配信でも)で作品『オブラ・フィーリャ』をお聴きいただければ、(たぶん)小規模な客席とダニーロとの距離感の近さや、親密な雰囲気、あたたかい空気感をご理解いただけるはずだ。スタジオ・ライヴで機材も音響もちゃんとしているから、録音状態も極上。さらに弾き語るダニーロの演唱の完成度がこれまた高い。

こういったナイロン弦ギター一本での<声とギター>的な作品は、ブラジルの伝統なんだよね。ジョアン・ジルベルト以来ってことかな。ダニーロも、そんな偉大な伝統に連なる現代の名手ということに、『オブラ・フィーリャ』で、なったと言える。なお、ブックレットにはカイピーラ・ギターも弾いていると記載があるが、どこだろう(^^;?

ダニーロの『オブラ・フィーリャ』での本領は、おそらくは(ちょっぴり激しく?)リズミカルに細かく刻みながらやや滑稽さもまといながら快活に跳ねるようにやっているものにあるんだよね、きっと。1「オブラ・フィーリャ」、3「ナウフラーゴ・ド・アモール」、5「ハイカイ・ニ・ミン」、12「ナ・ヴォルタ・ド・パリ」、14「セウ・ペイト・メウ・レイト」など。

さらに7曲目「フレーヴォ・パラ・スージー」、それからこれはダニーロの曲じゃない10「ティリンゴ」。ここまで書いたもので聴けるギター・リズムのおもしろさは特筆すべき。一曲ごとにすこしづつリズムのスタイルやニュアンスを変えながら、多彩な表情を表現しているよね。せわしない感じはちっともなく、ゆったりと余裕を見せながらやっているのが好感度大。ヴォーカルもそんなギターにあわせた細かい歌いかたで、速射砲のように、しかし歯切れよくことばをつむぎだす。実に見事だと感心しちゃう。

それでも、ダニーロの『オブラ・フィーリャ』でぼくがとっても強く心惹かれるのは、サウダージ横溢の切な系バラードっぽいものだ。それらでは本当に泣きそうになってしまうんだ。ギターのリズムもフレイジングも、メロディ・ラインも歌いかたも、ビンビン響いて涙腺が刺激される。6曲目「プロ・ジアマンテ・アマネセール」、9「セン・ショラーレ、アカブイ」、11「マイズ・ウン・ラメント」、16「アマーリア」がそれ。8「オ・ペルフーミ・ダス・フローレス」も入れていいかな。

これらはメロディ・ラインが本当に切なく美しいと思うんだよね。その底に激しいパッションや苦悶が感じられるものだけど、悩み悶え苦しむ美こそこの世で最高の美なんじゃないだろうか。それはしかも刹那的なものでもあって、はかない。はかないからこそ、美しい。そんな至高の音楽美を、上記曲にぼくは感じている。

なかでも特に11「マイズ・ウン・ラメント」だなあ。最高だ。好きで好きでたまらない。セウのヴァージョンではそうでもなかったのになあ。ダニーロ自作自演ヴァージョンはギター演奏のパターンも最高に沁みる。いやあ、こんなにも哀しく切なく美しい弾き語り音楽って、なっかなかないよねえ。

アルバム・クロージングの「アマーリア」では、客席の合唱とのコール&レスポンスになっているのもすばらしい。ダニーロの「アマーリア」という曲が持つ親密さが端的に表れているし、エモーショナルに響き共感できるももだからだろうなあ。

そしてたぶんこの曲はこの日のスタジオ・ライヴのラスト・ナンバーだったんだろう、そこまでのダニーロの演唱のすばらしさとあたたかさで客席がすっかり和んで打ち解けているのも、聴けばよくわかる。こんなトポスが大好きだ。この場にぼくもいたかった。CD で追体験妄想している。このアルバム、comfortable のひとこと。

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