いまやシカゴ・ブルーズ旧世代?〜 バディ・ガイの現役感
まあやっぱりね、レッド・ツェッペリンその他ブルーズ・ロック勢が洋楽入門だった人間にはね、こういった作品がこたえられないんですよ〜、バディ・ガイのシルヴァートーン・レーベル時代1996年のライヴ・アルバム『ライヴ!ザ・リール・ディール』。いいぞこれマジで。ぼくには。
それで、1950年代末〜60年代に登場したシカゴ・ブルーズ新世代のうち、2018年に現役活動中でいちばん輝いているおじいちゃんがバディ・ガイかもしれないよなあ。今2018年にも新作をリリースしたし、その内容だってぼくは好きだった。そんなバディのシルヴァートーン時代でいちばんいいと個人的に感じているのが1996年の『ライヴ!ザ・リール・ディール』なんだよね。リリース当時からの愛聴盤。
『ライヴ!ザ・リール・ディール』は、シカゴにあるバディ・ガイ本人のお店でのライヴ収録で、メンツはバディ・ガイのほか、ジョニー・ジョンスン(ピアノ)は名のあるところ。バック・バンドは G.E. スミスとサタデイ・ナイト・ライヴ・バンドで、そのメンツも附属リーフレットに明記されてあるが、よく知らない。レパートリーは有名ブルーズ・スタンダードと自作曲を織り交ぜてやっている。
最初に触れたように、このライヴ・アルバムの内容はだいぶロック寄り。シルヴァートーン時代のバディ・ガイはだいたいそうなっているよね。ここは聴くひとによって好悪が分かれるのかもしれない。ぼくは大好きだけど。冒頭の司会者の声に続き G.E. スミスが反復リフを弾き、バンドが入って、さぁ、バディ・ガイの野太いギター・サウンドが出ただけで脳天くい打ち状態で背筋がしびれるもんなあ。出だしの第一音のこの存在感!この太デカさはなんだよこれ〜!すげえ!
その1曲目「アイヴ・ガット・マイ・アイズ・オン・ユー」も有名ブルーズだけど、ここでのバディ・ガイらの解釈は、基本、ブギ・ウギだよね。このアルバム『ライヴ!ザ・リール・ディール』では、そのほかそうなっている曲は多い。電化バンド・ブルーズでのブギ・ウギ活かしが随所で聴ける。新世代のモダン・シカゴ・ブルーズの拠ってきたるところを鮮明に示し、それを1990年代半ばのフィーリングで再解釈している。
2曲目のメロウ・スロー「スウィート・ブラック・エンジェル」、3曲目の「トーク・トゥ・ミー・ベイビー」(アイ・キャント・ホールド・アウト)と、冒頭から三つ、ブルーズ・スタンダードが続く。これでつかみはおっけーみたいな感じかな。ピアノのジミー・ジョンスンもいい味でバッキングにソロにと大活躍。バンドも熟練のうまあじだ。
4曲目に続きこれもメロウ・スローな5曲目「アイヴ・ガット・ニューズ・フォー・ユー」はアルバム中最長尺で、楽器ソロをまわしている時間が長い。バディ・ガイだけでなく G.E. スミスもギター・ソロをとり、またジョニー・ジョンスンのピアノ・ソロがかなりの聴きものだ。アルバム中これ以外のぜんぶの曲でそうだけど、ホーン・セクションの演奏がモダンさをかもしだしているよね。ややジャジーでもあり、リズム&ブルーズ/ソウルっぽくもある。
そうそう、ジャジーといえば、この『ライヴ!ザ・リール・ディール』8曲目の「エイント・ザット・ラヴィン・ユー」はジャズ・ブルーズ仕立てなんだよなあ。こういうのをバディ・ガイみたいなブルーズ・マンがやるっていうのはやや意外だったけれど、アレンジもよく、聴ける出来に仕上がっている。バディは本来、なんというかこう、ガシャガシャとせわしなく、ややヒステリックに弾き歌うスタイルだから、こういうジャズをやるとはホント意外だったよ。老年なりの熟練ってことかなあ。
『ライヴ!ザ・リール・ディール』全体で、そんな老境にさしかかりつつあった1996年のバディ・ガイの丸みと太みを帯びたギター・サウンドやヴォーカル表現のコクみたいなものが味わえるとぼくは思う。ロック寄りの、まあはっきり言えばブルーズ・ロック作品だからと遠ざけることはないんじゃないかな。好き嫌いはともかく、内容は極上なんだしね。細かくせわしないフレイジングで、特にギター演奏のほうは、やっぱりバディ・ガイ本来の持ち味だってしっかり出ているしね。
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