« おだやかによく歌うショーロ・トリオがあたたかい | トップページ | my ideal »

2018/12/02

ゲテモノ地下芸人?スクリーミン・ジェイ・ホーキンス

最大のヒット曲「アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー」を、クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァルを含むいろんなロック歌手が歌ったり、ジム・ジャームッシュが自分の映画で使ったりしたので、たぶんそれで多くのファンに憶えてもらっているのかもしれないスクリーミン・ジェイ・ホーキンス。彼は、基本、ジャンプ〜リズム&ブルーズ歌手だよね。それも外伝中のひと。

ということになっているものの、スクリーミン・ジェイの本質は、決してゲテモノではないはず。「アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー」がウケたので、レコードだけじゃなく、というよりもどっちかというとおもしろいのはライヴ・ステージでのあの大げさでシアトリカルな演出で、キワモノ的小道具や演出をともなっておどろおどろしくやる(ヴードゥー儀式っぽい?)一連の曲が代名詞になった。

がしかし CD 復刻されているもので聴きかえして確認しても、スクリーミン・ジェイは保守本道のジャズ〜ジャンプ〜リズム&ブルーズのひとで、売りは売りとして(「アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー」的なものを)やっているが、あんなふうに強調しなければ、わりとふつうの黒人音楽歌手だ。

日本のタモリと重なる面が、その意味では、あるような気がする。スクリーミン・ジェイにも「ホン・コン」その他、インチキ外国語でまくしたてる怪しげで毒々しい芸風があるのだが、またイグアナをやるような部分はこれも似たようなものがスクリーミン・ジェイにもあるが、ある時期以後のタモリが日本人みんなのお昼のお茶の間の顔となったように、実は穏当な部分が両者にはある。

九州のタモリを見出したのは、山下洋輔ほかジャズ・メンとその関連界隈だったが、スクリーミン・ジェイのばあいはアンラッキーが重なった。だから最初はあんなにトゲトゲしかったタモリがある時期までそれを維持するものの、日テレ『今夜は最高』あたりからきれいに整ってとっつきやすくなっていったのと、最初はふつうにやりたかったスクリーミン・ジェイがうまくいかず結果ああなったのとは、真逆な方向性だったと言うべきかもしれない。

つまり、ぼくの言いたいのは、本流/ハミ出しとか正統/ゲテモノとかいう二分では音楽芸能の世界は決して理解できないほど、この両面はピッタリくっついて、あるとき機会さえあればひっくり返ったり両者ないまぜで表出されたりするものなんじゃないかということだ。ただでさえサブ・カルチャーである大衆音楽の世界で、しかもスクリーミン・ジェイのばあいは黒人歌手だし、さらに一段マイノリティに分類されるんだから、そこであえてゲテ、キワなどと言いたてる必要がどこにあるのか。

録音集を(CD や配信で)聴いても、たしかに一連の魔術儀式路線が目立つものの、「ユー・メイド・ミー・ラヴ・ユー」「パースン・トゥ・パースン」といった典型的スワンプ・ポップ路線、有り体に言えばファッツ・ドミノ流三連ダダダもある。「ダーリン、プリーズ・フォーギヴ・ミー」はシャンソンふう、「テンプテイション」「フレンジー」は、ちょっとモンドなラテン R&B で、王道のものだ。コール・ポーター作のスタンダード「アイ・ラヴ・パリ」もある。途中ことば遊びが入るけどね。

「リトル・ディーモン」「ユー・エイント・フーリン・ミー」なんかは、ふつうのジャンプ・ナンバーだよなあ。まあジャンプ・ミュージックがハミ出しものだということにしたい愛好家のみなさんは勝手にしたらいいんだけど、ぼくに言わせりゃ、本道のスウィング・ジャズといっしょのものだからね。ジャンプもジャイヴもジャズなのだ。

人間だれだってアンラッキー続きでうっかりしたら、スクリーミン・ジェイ・ホーキンスのようなマイナーでエグいハミ出しかたをしなくちゃなんないことだってあるはずだ。それはメインストリームと表裏一体のもので、いったんは地下芸人であってもお茶の間の代名詞になっていくことだってあるわけで。そこの差、溝なんて、本当はありゃしない。

« おだやかによく歌うショーロ・トリオがあたたかい | トップページ | my ideal »

音楽」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ゲテモノ地下芸人?スクリーミン・ジェイ・ホーキンス:

« おだやかによく歌うショーロ・トリオがあたたかい | トップページ | my ideal »

フォト
2019年11月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
無料ブログはココログ