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2018/12/16

シカゴ、ストーンズをやる

 

 

この2018年作『シカゴ・プレイズ・ザ・ストーンズ』は、ローリング・ストーンズ2016年の『ブルー・アンド・ロンサム』に対するシカゴ・ブルーズ側からのオマージュだ。

 

 

以下、いちおう曲名・演者名を書いとこうっと。

 

 

01. Let It Bleed (John Primer)

 

02. Play With Fire (Billy Boy Arnold)

 

03. Doo Doo Doo Doo Doo [Heartbreaker] (Buddy Guy with Mick Jagger)

 

04. Satisfaction (Ronnie Baker Brooks)

 

05. Sympathy For The Devil (Billy Branch)

 

06. Angie (John Primer)

 

07. Gimme Shelter (Leanne Faine)

 

08. Beast of Burden (Jimmy Burns with Keith Richards)

 

09. Miss You (Mike Avery)

 

10. I Go Wild (Omar Coleman)

 

11. Out of Control (Carlos Johnson)

 

12. Dead Flowers (Jimmy Burns)

 

 

on all tracks, The Living History Band : Bob Margolin (g), Johnny Iguana (p), Vincent Butcher (h), Felton Crews (b), Kenny 'Beedy-Eyes' Smith (d).

 

 

毎度毎度の同じ話で恐縮ですが、ローリンズ・ストーンズがアメリカ黒人ブルーズの普及啓蒙活動に果たした役割・功績は大きい。これは史実だから、どなたにも認めていただかないといけない。好き嫌いは別として、ロック界で、ブルーズ、とりわけシカゴ・ブルーズに最も真摯・真剣に取り組んできたのがストーンズだとして間違いないはず。

 

 

ストーンズは絶大な人気を誇るメガ・バンドだから、ストーンズがやるおかげでそれだけで、アメリカ黒人ブルーズにもある程度は光が当たったという部分があるかも。光が当たらないほうがいいというのは、たんなる根性曲がりのヒネクレもの。いい音楽、音楽家は、知名度が上がって売れたほうがいい。アメリカ黒人ブルーズ、特にいわゆるシカゴ・ブルーズのばあい、だから、そんな貢献をちょっとはストーンズがしたんじゃないだろうか。

 

 

だから、シカゴ・ブルーズ・シーンでもストーンズへの感謝の気持ちを持つ黒人音楽家が多いかもしれないと思うんだよね。そこへ2016年にストーンズがシカゴ・ブルーズばかりをカヴァーした最新作『ブルー・アンド・ロンサム』が発売されそこそこ評判になったので、ちょうどいいタイミングだったんだろう、きっと、シカゴ側からこの英国白人の子どもたちへ感謝を表するのにね。その結果、今2018年の『シカゴ・プレイズ・ザ・ストーンズ』につながったんだと思う。

 

 

そんなわけで、ストーンズのオリジナル・ソングを、シカゴの黒人ブルーズ・メンがみずからのスタイルに解釈しなおしたものをやってみよう、新旧シカゴ人脈を使って、ばあいによってはミック・ジャガーやキース・リチャーズをゲストに招いたりしながら、というプロジェクトが立ち上がったんだと思う。くわしい経緯は CD 附属の紙に書いてある(と思うけど、いくえにも折りたたまれた巨大な一枚紙を広げねばならない仕様にイラっときて、読んでない)。

 

 

まず1曲目の「レット・イット・ブリード」がはじまった途端に笑っちゃうよね。これがあの曲かと。あまりにもコテコテ。基本、ブギ・ウギをベースとする1950年代以後のモダン・シカゴ・ブルーズのやりかたになおしてあるが、この曲、こんなふうになりうる可能性があったんだなあ。すばらしい、これがブルーズだ&ストーンズ・ナンバーだと思い知る。

 

 

しかしこんな「レット・イット・ブリード」なんか序の口だ。ビックリするのは、たぶん6曲目「アンジー」、8「ビースト・オヴ・バーデン」、12「デッド・フラワーズ」あたりかな。あんな曲たちがこんなふうに変貌しちゃって、思い切りワラケてくるよ。いや、悪い意味じゃない、楽しくおもしろい。そして最高だ。それでもしかし「アンジー」はなんだよこれ〜(笑)。原曲のあの情緒のかけらもないじゃないかヾ(๑╹◡╹)ノ。

 

 

「ビースト・オヴ・バーデン」はまだそれでもカーティス・メイフィールドふうのニュー・ソウル・ナンバーに仕上がっているのがオリジナルだったので、180度様変わりしているとまでは言えないのか。ここでもブギ・ウギを土台とするジャンプ・ブルーズになっているんだけどね〜。ブロック・タンギングを多用するブルージーなハーモニカはここでも入る。ほぼ全曲で入っている。

 

 

ラスト12曲目の「デッド・フラワーズ」なんかカントリー・ロックな曲だったのに、こんなブルーズ・ソングになっちゃって。でも、ほんのちょっとのグラム・パースンズ色が残っているように聴こえるのがおもしろい。さらにさらに、ここではラテン・リズムなニュアンスがあるのが楽しい。ピアノはニュー・オーリンズ・スタイルだし。最高にイイね。コテコテのラテン・ブルーズ化した「デッド・フラワーズ」が聴けるなんてねえ〜。言うことなしだ。

 

 

「デッド・フラワーズ」でもそうだし、アルバム中ほかでも随所で聴けるけれど、エレキ・スライド・ギター。これはだれが弾いてんの?ボブ・マーゴリン?気になるのはどうしてかというと、ドゥエイン・オールマンに似て聴こえる部分があるからなんだよね。つまり、英国ブルーズ・ロック・バンドを媒介にして、シカゴとマスル・ショールズがとなりあわせになっている。ストーンズの経歴を考えたら自然なことだね。

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