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2019/01/07

ノーティー・ナスティ・マリア・マルダー、好きだぁ〜!

 

 

2018年9月末のリリースだったマリア・マルダーの最新作『ドント・ユー・フィール・マイ・レッグ(ザ・ノーティ・ボーディ・ブルーズ・オヴ・ブルー・ル・バーカー)』。ジャケットを一瞥し、ある種の想像をなさったみなさまがた、その期待を裏切らない内容ですので、安心してお求めいただけます。いやあ、すばらしい。もうおばあちゃんのマリアだけど、本当に色っぽい、艶っぽいよね。いや違う、これが歌芸の力だってことか。いずれにせよ、楽しいアルバムだ。

 

 

内容は、アルバム題どおりルイーズ・ブルー・ル・バーカー曲集。ニュー・オーリンズのジャズ・ブルーズ歌手だったブルー・ル。パートナーのダニー・バーカー(ギター、バンジョー)の名はジャズ・ファンなら知っている有名どころ。マリア・マルダーは以前よりブルー・ルに共感を示してきていたようだ。

 

 

というかここのところのマリア・マルダーは、ずっと古いブルーズの世界に寄り添ってきていたらしいが、最近はずっとマリアのことをスルーし続けていたので、なんにも知らなかったのだ。今回、新作がスケベで楽しいので、と思って情報にあたり、はじめて知った。不明を恥じるばかり。

 

 

『ドント・ユー・フィール・マイ・レッグ』、ブルー・ル曲集ということで、音楽的には古いジャズ・ブルーズとなっている。それもコンボ編成でやるレトロなニュー・オーリンズ / ディキシーランド・ジャズが伴奏をつけているんだよね。マリア・マルダーのヴォーカルは、声がもうおばあちゃんのそれだけど、それがかえってこの猥歌集に独特の香りをもたらすことになり、生々しすぎないちょうどいいセクシーさをもたらしてていて、それでいながらまだまだ現役よと言わんばかりの老いてますます盛んみたいな雰囲気もあって、とってもいいね。

 

 

マリア・マルダー自身がプロデュースしているこの新作アルバムでは、多くの曲がだいたい2/4拍子で、バンドはギター、ピアノ、ベース、ドラムスのリズム・セクションに、管楽器がサックス(クラリネット持ち替え)、トロンボーン、トランペットの三本。随所でホーン・アンサンブルがリフを入れるけれど、どれもシンプルな反復で、アレンジャーらしき人物はいないかもしれない。男声バック・コーラスもどんどん入るが、たぶんホーン奏者たちの担当かなあ。

 

 

リズム隊のなかではデイヴ・トルカノフスキのピアノが一番活躍している。最新録音盤なので音はいいが、スタイルはレトロだ。ドラマー(ハーリン・ライリー)もベーシスト(ローランド・ゲリン)もそうだけど、クリストファー・アドキンスの弾くギターは、たんにレトロ・ジャズというにとどまらないおもしろさを出している部分もあるよね。ギターはマリア・マルダー自身もちょっと弾いているかも。

 

 

1曲目の「ジョージア・グラインド」からぐいぐい下世話に攻めるマリア・マルダーとバンド。卑猥なんだけど、ねっとりとしたいやらしさが薄く、さっぱり乾いたユーモアや猥雑さを感じさせるのがとてもいいね。2/4拍子で演奏するバンドのノリもステキだ、というかぼく好み。こういった古いジャズ・ブルーズが好きな人間にはこたえられない内容だと思う。いやあ、楽しい。セックスを扱うマリアの歌いかたがいいと思うよ。ナスティ&ノーティでさ。

 

 

3曲目「あんたのダンナを貸してよ」なんかでのこの大きくゆったりと乗るビートもとてもいい。マリア・マルダーのこのヴォーカルがまたステキだし、リズム伴奏もホーン・ソロもリラックスしていて聴きやすい。5曲目「あんたはおちぶれ」のマリアの快活なリズムへのノリも見事。歌の合間合間にウ〜ッ!とかアッ!とか叫ぶように入れる合いの手も色っぽい。ホーン・セクションのワン・リフ反復でリズムが決まっているのもグッド・アイデア。

 

 

7曲目「ニックス・オン・ゾーズ・ラッシュ・ヘッズ」もスケベで最高だが、リズム隊の伴奏がユニークなのと、ここでもサックス・ソロがいいのに注目したい。トランペット・ソロの途中でストップ・タイムを使ってあって、その間ミュート気味のギター・カッティングがシャカシャカ刻み入るのも心地いい。

 

 

11曲目「ハンディ・アンディ」とか12「ドンチュー・フィール・マイ・レッグ」なんかもどスケベで最高なんだけど、老婆のいやらしさ全開でマリア・マルダーが歌う歌詞内容の解説は書けないのでご勘弁ください。聴けばなんとなくの雰囲気は嗅ぎとっていただけるのではないだろうか。バック・バンドの演奏がズンズンと大きくゆったりノッているのも最高にムーディ。

 

 

たんに年増好きなだけかもしれないぼくで、だからおばあちゃんシンガーがこういう猥歌を雰囲気を出してやっているのを聴いて、このジャケットを眺めながら妄想し、いい気分にひたっているだけなのかもしれないんだけど、マリア・マルダーの『ドント・ユー・フィール・マイ・レッグ』、なかなどうして、たいしたもんじゃありませんか。快哉を叫びたい。お元気そうでなによりです。

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