« ジャズ・リスナーたちとヴォーカルもの | トップページ | パリのブラウニー(2)〜 あんがいビックス的な »

2019/02/13

パリのブラウニー(1)〜 茶褐色のテーマ

ライオネル・ハンプトン楽団在籍時のクリフォード・ブラウンらが、1953年秋の欧州ツアーの際にパリで行なったセッションのいきさつなどについてはいくらでも文章があるので、ぼくが繰り返す必要などない。もしご存知ないかたもパパッとネット検索してみてほしい。ぼくが現在持っている CD 三枚(バラ売り、なぜセットにしない?)は、1997/98年リリースの BMG France 盤で "original vogue masters” と銘打ってある。一日一枚づつ取りあげてメモしておこう。

Vo.1 はビッグ・バンド編成のものとセクステットでのものがほぼ半々づつ収録されているが、個人的には前半部を占めるオーケストラ録音のほうが好きだ。っていうか正直に言ってしまえば冒頭の「ブラウン・スキンズ」2テイクスで決まり。ブラウニーのパリ・セッション三枚ぜんぶでこの2トラックスこそが最大の好物で、評価の高いカルテットものよりも断然「ブラウン・スキンズ」なのだ。

どうしてここまで「ブラウン・スキンズ」が好きなのか。いくつか理由があるように思う。まず曲題がいい。本人の苗字と黒人であることのふたつにひっかけたシャレだけど、なんともいえずすばらしい。このタイトルだけで絶対いいぞ!とおおむかし直感して聴いたらビンゴだったよ。それはそうと関係あるのかないのか「ブラウン」って、カリブ海方面の音楽というか曲にわりと頻用されることばだけど、音楽における<ブラウン・テーマ>とか考えてみたらおもしろそうじゃない?だれかやってくんないかなあ。'Brown Skin Girl' とか 'Brown Street' とか、いっぱいあるよ。'Ebony Eyes' も同系かな。

それはいい。ブラウニーの「ブラウン・スキンズ」ふたつ。マスターも別テイクもどっちも出来がいい。前半部がスローに漂うような夜のしじま。ここはまるでグレン・ミラー楽団の一連の「セレナーデ」ものによく似た雰囲気だ。こんなことだれも言わないっていうか、グレン・ミラー楽団とか、マトモなジャズ聴きはまず100%スルーする(と村井康司 @cosey さんがおっしゃっていた)から、ピンと来ていただけないはずだけど、間違いない実感。

この「ブラウン・スキンズ」前半部の<セレナーデ>ふうスローな夜の徘徊部でも、ブラウニーのトランペット・サウンドが輝いている。ブリリアントの一言。まるで暗闇の幕にサッと光が当たるかのよう。しかも中盤でファンファーレみたいなブラス・サウンドが咆哮し、アップ・ビートが効きはじめ急速調になってからは、歌心が全開で、しかも超なめらか。よどみないとは、まさにブラウニーのためにあることば。一音の躊躇もゆるぎもなく、湧き出て止まらない泉の水のごとくブラウニーがソロを吹く。ジジ・グライスのアレンジもいい。それは前半部のセレナーデ・パートでもそうだった。

こんな完璧な「ブラウン・スキンズ」ふたつがアルバム冒頭にあるもんだから、『ザ・コンプリート・パリ・セッションズ Vol. 1』では残りの曲が、実際かすんでしまうね。ブラウニーをフィーチャーしているかどうかだって、「ブラウン・スキンズ」では全面的にだけど、3曲目以後は部分的にだから、そりゃあどうしたって分が悪いよなあ。ぜんぶ無視したい。

がそうもいかないので、いままでみなさんが無視してきているか、ばあいによってはこのパリ・セッションのいきさつに関係して嫌悪なさってきているかもしれないことを、一個だけ付言しておく。それは当時のボスだったライオネル・ハンプトンのその楽団は、1953年のほんのちょっと前まではジャンプ・バンドだったということ。それはリズム&ブルーズにも直結していた音楽だった。

ブラウニーの『ザ・コンプリート・パリ・セッションズ Vol. 1』4、5曲目「キーピング・アップ・ウィズ・ジョンジー」後半部で、リズムがボンボンと大きく跳ねるところをちゃんと聴いてほしい。ぼくに言わせりゃ、その部分こそ、この曲における最大の聴きどころで、前半のブラウニー/アート・ファーマーのかけあい部よりもそこのリズムなんだ。

特にドラマーのアラン・ドーソンが、特にスネアで表現していると思うんだけど、それに合わせるように管楽器隊も粘っこいうねりを聴かせているじゃないか。そこではソロをジジ・グライスそのほかが吹いているが、ジャンピーなアレンジはもちろんジジの手になるものだ。

ボスに隠れてこそこそとホテルを抜け出して、ボスの楽団ではできないことをパリのスタジオでやった、というのが定説のブラウニーのパリ・セッションズだけどもさあ、なかなかどうして、ふだん着ている衣装を脱ごうたってそう簡単にはいかない、なんてものじゃなく、そもそもビ・バップとリズム&ブルーズは同じ母親から産まれた音楽じゃないか。母の名とは、すなわちジャンプ・ミュージック。

たんにブラウニーの見事さに感心していればいい録音集なんだけど、今日後半で書いたことはだれも言っていない重要事項だとぼくは信じている。ジョンジーって、ここに参加しているクインシー・ジョーンズのことなんでしょ〜。

« ジャズ・リスナーたちとヴォーカルもの | トップページ | パリのブラウニー(2)〜 あんがいビックス的な »

音楽」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: パリのブラウニー(1)〜 茶褐色のテーマ:

« ジャズ・リスナーたちとヴォーカルもの | トップページ | パリのブラウニー(2)〜 あんがいビックス的な »

フォト
2019年11月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
無料ブログはココログ