ふだんと違う曲順で聴くのもいい 〜 セレクションの効用
いつもはオリジナル・アルバムを聴いていても、ときどきベスト盤とかアンソロジーとか選集とか、ネット配信なら公式 or 私的なプレイリストとか、そういったもので聴くのは新鮮な体験だ。お気に入りのオリジナル・アルバムは曲順が自分のなかに焼きつくから、一曲の終わりかけで次の曲の出だしが鳴りはじめるけれど、それでふだんは快感でも、たまに予定調和のつまらなさを感じてしまうときが、ぼくはある。
そんなばあい、セレクションで聴くと、ふだんと違う曲順になるから、この曲の次にアッ!って若干の意外性と驚きがあって、新鮮だ。よく知っている曲の、いままで気づいていなかった要素や魅力に簡単にたどりつける好適な手段なんだよね。ひるがえって、その曲が収録されているオリジナル・アルバムまでも違って見えてくるというもの。新たな姿を現すんだ。どう、おもしろいことじゃないか。ワクワクするね。
それ以上にセレクションで聴く最大の効用は、いままでよさがわからなかったアルバムや曲の魅力に気づける契機になるということだ。ふだんとは異なる曲順(やその他)で流れてくることによる意外性で、オォ〜、こんないい曲だったのか、ちょっとビックリしたぞ、ありがとうとなることが、ぼくはある。みなさんにはないかもしれないが、これがあるからセレクションで聴くことを、定期的に欠かさない。
いままで聴いていなかった曲、アルバム、またオリジナル・アルバムを持っておらず聴いてもいないそんなアルバムの収録曲に触れることができるのもアンソロジーの大きな効用だ。どんなに好きな音楽家でも、どうしてもその気にならず聴いていないアルバムというものが、あると思う(例外はマイルズ・デイヴィスでぜんぶ持って聴いている)。でもあんがいそういった意外なものが自分向きだったりすることがあるんだよ。でも、なにか機会がないと気づけないでしょ。
そんなとき、ベスト盤とかアンソロジーとかプレイリストがいいんだ。好きな曲に混じっていままで耳にしていなかった曲が流れきて、お、けっこういいんだねと気づくチャンスだ。すくなくともぼくはそうやって、聴かず嫌いのままでいた曲のおもしろさを発見し、それが収録されているオリジナル・アルバムを買うっていうことがある。今後も同じだろう。
複数の音楽家や分野をまたいだハイブリッドなセレクションだと、さらに大きな効用があるね。いくら脱ジャンル、越境などと唱えたって、ふつうみんな(含むぼく)、なかなかそれができない。混ぜ返しのガラガラポンが簡単にできて、それで新たな視野や認識を獲得できるのが、そういったプレイリストで聴く大きなメリットじゃないかな。ひとりの歌手、音楽家、ひとつのバンドのセレクションでも、ハイブリッドなセレクションでも、それではじめて魅力に気づいて、好きになり、結果、持っていたり持っていなかったりするオリジナル・アルバムも見直し評価を高めたり、はじめて買ったりする。
こんな楽しさがセレクションにはあるので、それを痛感しているので、もとから拝オリジナル・アルバム的発想のないぼくだけど、むかしから自分でもよくセレクションを作成する。むかしはカセット、MD で。いまは CD-R、あるいは iTunes や Spotify のプレイリストでね。作成過程でたくさんの楽しい発見があって、愛好度が増すんだ。
自作セレクションは、ふだんはひとりの音楽家についてのものだけど、音楽家やジャンルまたぎの混交セレクションだってよく作るんだよ。みんなもやっているようだ。Spotify だと自作プレイリストづくりが実にイージーで、だれでもできるようになったので大勢がやるようになって、たいへん喜ばしいと感じている。たくさんあふれているなかに光るものがいくつもある。
べつに光らなくたって個人的にこういったことをやるのは、これも音楽の楽しみのひとつだから。ただじっと与えられるオリジナル・アルバムを享受するだけじゃ飽き足りないんだ。大げさだろうがみずからプロデュースの領域に踏み込んで、一層大きな楽しみを獲得できれば、それで音楽に対する理解もひろがり深まるように感じる。
そんなわけで、与えられたものでも自作のものでも、セレクション、アンソロジー、ベスト盤、プレイリストで聴く意味、価値っていうのはあるものなんだよね。
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