ブラジルのギター弾き語り名盤の系譜にまたひとつ加わった 〜 アルフレード・デル・ペーニョ
なんたってこのジャケットがいいよね、『サンバ・ソー』(2018)。渋谷エル・スールに行ったのは1月27日だったので、その直後の入荷ということだったんだね、このブラジル盤。無知にてアルフレード・デル・ペーニョがだれなのか知らなかったけれど、エル・スールのホーム・ページでこのジャケ写を見た瞬間にピンと来て買ったら大正解。やっぱりさ、CD でもジャケ買いって当たるもんなんだよね。
アルフレードの『サンバ・ソー』は、ほぼ全編ひとりでの7弦ギター弾き語り(14曲目で三人のバック・コーラスが入るだけ)。しかもサンバとかボサ・ノーヴァとかなにかにくくれない、ただブラジルの弾き語り音楽とでも言うしかないものなんだ。さらにあったかく、しかし鮮烈で、かつギターもヴォーカルも、特にギターのほうの技巧はかなりすぐれている。しかもそれがそうとは感じないほどオーガニックな肌合いに昇華されている。
アルフレードの『サンバ・ソー』。複雑なリズムを持つ速いテンポの曲と、バラードみたいな中庸〜ゆったりナンバーに大別できる。ぼくがなかでも感心するのは前者でのギター・リズム表現法だ。かなり難度の高い技を繰り出しているんだけど、リズム面でもハーモニー面でもそうで、しかしできあがりは実にサッパリしている。じっくり聴くと目を剥きそうな速弾きパッセージもあってオォ〜って思うけれど、それは演唱のなかに溶け込んでいて、これみよがしに目立たないのが好印象。
実際、このアルバム『サンバ・ソー』でのアルフレードのギター弾き語りは入り組んでいて高難度な複雑さ。それでいてシンプルに、しかもあたたかく聴こえるのは、決してひとりでの弾き語りだから、というだけじゃないはず。ジョアン・ジルベルト以来の伝統なんじゃないかな、こういった有機性は。できあがりにぬくもりがあってさっぱりしてシンプルな味わいに聴こえるっていうのはね。
昨年暮れに、やはりひとりでのギター弾き語り新名盤としてダニーロ・モラエスの『オブラ・フィーリャ』のことを書いたけれど、アルフレード・デル・ペーニョの『サンバ・ソー』は、それとはやや趣の異なる新たな名盤だ。ジャケの面構えがいいなとピンと来て中身を直感したそこのあなた、聴いてみて。マジでいいから!アルバムの曲もぜんぶアルフレードの自作。
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