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2019/03/27

リンダがリンダだったころ

61ifai2rcyl_sy355_https://open.spotify.com/album/2BbcfLv9Sa82xqHdB1Nf15?si=C-ZHWvQvSZ6Wz9hDCBK5yg


ライノから今2019年に発売されたリンダ・ロンシュタット1980年のライヴ・アルバム『ライヴ・イン・ハリウッド』。意外なことにリンダのキャリア初のライヴ盤となるこれの唯一の瑕疵は、最後の曲「デスペラード」を歌い終えて、「おやすみなさい」と言って音がフェイド・アウトしたのに、そのままにしているとしばらくしてもう一回音が出て、バンド・メン紹介が流れることだ。ここは「デスペラード」より前のパートだったのでは?このしんみりとしたイーグルズ・ナンバーを歌ったリンダの声でおやすみって言われて、そのままアルバムも終われば100%文句なしだった。


しかしこれはけなしているのではない。逆だ。このたった一点を除き、リンダの『ライヴ・イン・ハリウッド』はあらゆる意味で完璧なんだ。1970年代アメリカン・ポップス/ロックのもっとも良質な部分をある意味体現していたと言える70年代後半〜末ごろのリンダ。だから80年の、しかも西海岸ハリウッドでのライヴとなれば、中身は保障されたも同然だけど、実際『ライヴ・イン・ハリウッド』は折り紙つきの上質さ。収録の12曲は、その夜80年4月24日のオリジナル・コンサートから、リンダ自身がお気に入りを選んだらしい。


附属解説文によれば、この『ライヴ・イン・ハリウッド』はブートレグ対策として公式リリースされたという面もあったようだ。しかもそのブートレグは DVD だとのことで、ってことは映像もオフィシャルに記録されているだろうと思うんだよね。テレビ番組用の収録だったようだしさ。今回 CD でのリリースだけど、あの、1980年の、チャーミングなことこの上なかったリンダの姿をもう一回観たいもんだと思う。歌はもちろん言うことなしだから。


『ライヴ・イン・ハリウッド』のバック・バンドは、三人のギタリストを含む八人。たぶんこのテレビ・ライヴ収録用の臨時編成なんだろう。ダニー・コーチマー、ラス・カンクル、ビリー・ペイン、ダン・ダグモア、ボブ・グローブなど、西海岸の腕利きメンツが揃っている。リンダのプロデューサーだったピーター・アッシャーもいる。演奏もこなれたもので、必ずしもリンダの伴奏をしたことがなかったひともいると思うんだけど、立派な出来だ。


西海岸のといえば、『ライヴ・イン・ハリウッド』にはリトル・フィートの曲もある。ビル・ペインの演奏面での参加と関係あるようなないような、要は西海岸勢としての一体感ってことだろうね、イーグルズの「デスペラード」を幕閉めみたいにしてやっていると上で書いたけど、フィートのほうはロウエル・ジョージの「ウィリン」を歌っている。


イーグルズとかリトル・フィートなどとリンダの関係はいまさら言うことはないほど有名だから省略。歌唱の出来をいうと、「ウィリン」のほうはロウエルと比較できない。あんなロウエルしゃべりがあってこその曲だからむずかしいよね、ふつうに歌ってもサマになんないもんねえ。でも伴奏陣はかなりいい内容を展開していると思うよ。


「デスペラード」でのリンダは極上だ。ビリー・ペインのアクースティック・ピアノだけを伴奏にして淡々と、実にしんみりとこんな歌詞を綴っている。沁みるなあ。声を強く出し張るところもあるけれど、全体的にはイーグルズ・ヴァージョン同様の落ち着いたフィーリングでしゃべりかけてくれる。そこには、ひとり者の心境にそっと寄り添う真のやさしさみたいなものだって感じられるもんね。いいなあ、このリンダの「デスペラード」。あぁ、くどいけれども、これでアルバムが終わっていれば…。


『ライヴ・イン・ハリウッド』の目玉は、しかしもっとリズムの効いたロック系ポップ・ナンバーで、しかもそこにはあきらかな、あるいはそこはかとなき、メキシコ/カリブ/ラテン風香がまぶされていて、ぼくなんかはニンマリ。そりゃあねえ、ご存知のとおり西海岸にはヒスパニック系も多いですからね。だいたいサン・フランシスコだってロス・アンジェルスだって、スペイン語の地名だから。


いちばんはっきりしているのが5曲目、ロイ・オービスンの「ブルー・バイユー」で、これはもうラテン・ナンバーと呼んでさしつかえないほどのできばえ。いやあ、すばらしい。伴奏陣もいいんだが、リンダのよく通りわたる澄んだヴォーカルになんたってため息が出る。終盤部、スペイン語で歌うパートが特にいい。エンディングで「アズ〜ル」の「ル」で声を裏返しファルセットになる瞬間のキラキラ!


2曲目「イッツ・ソー・イージー」でもリズム・シンコペイションがいいし、4曲目「ジャスト・ワン・ルック」でもだれなのかエレキ・ギターで引っ掻くようなコード・ワークを聴かせてくれているのが効果大。そのカッティングにはあきらかなラテン・ビートの痕跡があるよね。跳ねるリズムだしね。いや、跳ねているのはアルバムのほぼ全曲そうなんだけど。


リンダにとってブレイクスルーだった大ヒット、9曲目「ユア・ノー・グッド」では、オリジナルにないジャム・パートをはさんでの約六分間。ジャムはギター二名のソロ・バトル。この日のライヴ、クレジットでは三人のギタリストがいるし、スタイルを聴解する力がぼくにはないので、どなたかお願いします。ジャム・パートはライヴならではのおまけだけど、あらためていい曲だよねえと実感。

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