現役ジャズ・メンはやはりすごい 〜 Dr. ロニー・スミス篇
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完全に見逃していたドクター・ロニー・スミスの2018年新作『オール・イン・マイ・マインド』。今年三月、気が付いたのは、ブルー・ノート・レーベル公式配信プレイリスト「Dr. ロニー・スミス:ザ・ファイネスト」を聴いたから。ロニー・スミスのベスト盤みたいなもの。ふつうにカッコイイよねと思いながらお風呂で流していたら、ラストに来て耳慣れないのが聴こえてきた。ポール・サイモンの「50 ウェイズ・トゥ・リーヴ・ユア・ラヴァー」だったのだ。
そ〜れがすんばらしくて!、この曲をロニー・スミスやってんだ、どのアルバム?と思ってクリックしたら2018年リリースの最新作『オール・イン・マイ・マインド』が出てきたというわけ。あわてて CD 買いましたよ〜。これはライヴ・アルバムで、ニュー・ヨーク・シティでの収録。パフォーマンスの年月日は記載なし。いやあ、こりゃあなかなかの快作だ。現役ミュージシャンのことは常にチェックしておかないといけないなあと反省。
Dr. ロニー・スミスの『オール・イン・マイ・マインド』アルバム全体では、書いたようにポール・サイモンの「50 ウェイズ・トゥ・リーヴ・ユア・ラヴァー」が異様にすごいし、ブルー・ノート公式だってこれをベスト盤的プレイリストに選んでいるんだからやはり同様の考えなんだろう。そのほか、なんでもないメインストリームなオルガン・ジャズも混じっているが、そうじゃない1曲目「ジュジュ」、5「アルハンブラ」、6「オール・イン・マイ・マインド」あたりが聴きものだ。
パーソネルは、ロニー・スミス(キーボードのほうが先に書いてある)、ジョナサン・クライスバーグのギター、ジョナサン・ブレイクのドラムスという典型的オルガン・トリオ。ロニーはヴォーカルもこなし、また3曲目でだけドラマーがジョー・ダイスンに交代。6曲目でゲスト参加の女性歌手、アリシア・オラトゥージャ。
1「ジュジュ」は、かのウェイン・ショーター・ナンバー。ロニー・スミスはポリリズミックなアレンジを施してあって、ドラマーの叩きかたがおもしろいのでかなり聴ける。実際、この曲での主役はジョナサン・ブレイクだね。オルガンのあとドラムス・ソロも出るのが聴きものだけど、ギターやオルガンの背後でも大活躍している。ソロのあとで、スネアのリム・ショットにダブふうなエコー処理が施してあるのもいい。おもしろいけど、ひょっとしたらスタジオでの音加工とかじゃなかった可能性があるかも?
3「50 ウェイズ・トゥ・リーヴ・ユア・ラヴァー」をどうしてロニー・スミスが選曲したのかわからないが、アレンジは全曲ロニー本人との記載はあれど、この曲にかんしてはポール・サイモンの1974年オリジナルにほぼ忠実。それはスティーヴ・ガッドのドラミングをフィーチャーしていたが、そのパターンをジョー・ダイスンもそのまま踏襲している。
がしかし大きく異なるのがギター・ソロだ。このロニー・スミス・ヴァージョンでの最大の聴きどころがジョナサン・クライスバーグの饒舌なギター・ソロなんだよね。うまいのひとこと。しかもソロ後半でパッとエフェクターのフット・スウィッチを踏んで音色を飾り、まるでスティール・パンみたいな音色で弾きまくるパートなんか、サブイボ出そうなほどすばらしい。
5「アルハンブラ」(ロニー自作)は、曲題に反しアンダルシアふうなところはまったくないジャズ・ファンク。でもカッコイイぞ。疑問なのは冒頭でハーマン・ミュートをつけたトランペットの音(に間違いない)がしばらくプレリュードふうに聴こえるんだけど、トランペッターが参加している様子はないので、サンプリングしたものをロニーが弾いているのかなあ、たぶん。
女性ヴォーカリストをフィーチャーした6「オール・イン・マイ・マインド」(ロニー自作)は、ちょうどコンテンポラリー R&B みたいで、ダウナーでブルー。エラ・メイとか、あのへんのサウンドと歌にとても近い。歌っているアリシア・オラトゥージャってぼくは知らないんだけど、アレンジとサウンド・メイクをやったのは Dr. ロニー・スミスなんだろうからね〜。
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