ボレーロみたいな(ボサ・ノーヴァ?)〜 ローザ・パソス
https://open.spotify.com/album/1ldRzJsCQNTS5JIb6IFclW?si=IR8cUZx_QLWA6ijmVA0RwQ
ブラジルの歌手ローザ・パソスの最新作『Amanhã Vai Ser Verão』(2019)。でもこれ、どうして買ったんだろう?なんとなくの直感みたいなもんかな。ジャケ買いであるようなそうでもないような、こういった南洋リゾートの風景をイラストにしたみたいなお洒落ジャケットは一般的には人気あるだろうけれど、中身がイマイチだったりすることもあるので、ちょっぴりの警戒心も働いたかも。
でも聴いてみたら中身の音楽はおもしろかったよ。結論から端的に言っとくと、このローザの『Amanhã Vai Ser Verão』は、ブラジルのボサ・ノーヴァ歌手のやるボレーロ/フィーリン系の音楽なんだよね。ん〜、どっちかというとボレーロを意識したのかなという内容だね。しかしキューバ/メキシコの歌手がやるようなしっかりしたボレーロではなく、フワ〜ッ、ボワ〜ッとしたつかみどころのない超ソフトでおだやかすぎるボレーロ(っぽいボサ・ノーヴァ?)なんだ。
なかにはジャジーな、というかたぶんジャズ・ナンバーと呼んでさしつかえない8曲目「Inocente Blues」もあるし、またやっぱり全体的にいかにもブラジルの音楽家がやりそうな雰囲気横溢の BGM っぽい軽い音楽なんだけど、それでもここまでラテン性というかボレーロ系を強く意識した音楽をローザ・パソスはいままでやってこなかったはずだ。
収録の全13曲はどれもローザの自作(というか共作)だけど、1曲目のタイトルが「Alma de Bolero」だしね。それで多くの曲でドラマーが軽くボレーロっぽいあのちゃかちゃかっていう8ビートを表現しているのが特徴的。アコーディオンもアルバム全編で頻用されていて、サウンドの色調を支配している。ギターも印象的だが、そのギターリスト、ルーラ・ガルヴァンがほとんどの曲でアレンジも担当。
サウンド・カラーはどっちかというとフィーリンっぽいふんわりソフト加減で、それらの上にローザのあのやさしくやわらかい声が乗っかっているっていう、そんなアルバムなんだよね。全体的に、やっぱりムード重視の南洋リゾート砂浜 BGM みたいな、う〜ん、やっぱそうだよなあ、そんな音楽になっているよなあ。悪い意味じゃなく、ときどきはこういった軽〜い音楽もいいんじゃないだろうか。ガツンと来ないけどれど、悪くないというか、かなりいい、印象というかあたりが。
アルバム中おしりの二曲だけがローザのナイロン弦ギター弾き語りで、それらふたつだけはジャンル不問のブラジリアン弾き語りミュージックだ。昨年来、ブラジルのギター弾き語り音楽にいいアルバムが頻出していると書いているけれど、もともとそんな音楽も得意なこのローザ・パソスの『Amanhã Vai Ser Verão』でもラスト二曲はそんな音楽で、これらは文句なし。自作自演のギター弾き語りでボレーロ/フィーリンというと、ホセ・アントニオ・メンデスを想起させるしね。
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