暖かくなってきたのでズーク快作を 〜 タニヤ・サン・ヴァル
https://open.spotify.com/album/1ij07EUG3qUR3JR4NLK7XU?si=yHQVW2hRQr6HEVg3bRbP3Q
本題と関係ない話から入りますが、アルファベットの人名でハイフンが入るのをカタカナ表記する際、それをダブル・ハイフンで置き換える表記には大反対です。みなさんやっていらっしゃいますけれども、ダブル・ハイフンは数学等号と区別できません。等号ですよ等号、みなさんがお使いになっているのは。左と右が同じ、っていう意味ですよ。ガブリエル・ガルシア・マルケスみたいに原語でハイフンないのにカナでは等号入ったりして、ワケわかりません。三語の名前だと自動的に入るのでしょうか?
まあいい。そんなわけでタニヤ・サン・ヴァル。グアドループのズーク歌手で、2016年の『ヴォワイヤージュ』二枚組が快作だったよねえ。これは一枚それぞれ約30分程度なんで、長さだけなら CD 一枚に収録することもできた。それをせず、CD1を「ソレイユ」、CD2を「ルーヌ」と題し、ジャケットも表と裏で変えて、あえて分けているという音楽性の違いはたしかにあるなあ。
Spotify アプリで見るジャケットは、その表と裏を合体させたもので、これじゃあちょっと…、と思うんだけど、まあしょうがないんだろうね。CD1の太陽篇はわりとストレートなズークで、ダンス・ミュージックとしてのこの音楽にそのまま焦点を当てたような一直線。これはもちろん楽しい。わりとアッパーなズークが続く印象で、CD1ラストの「Sans Rides」だけがやや落ち着いたしっとり路線かなと思う。
どうしてマーティン・ルーサー・キングの有名な演説を挿入してあるのかぼくにはわからない3曲目を含め、タニヤのこの CD1の太陽篇でもわかるけれど、ぼくにとってズークのダンス・ミュージックとしての魅力はタイコにある。タニヤのこれのばあい、打ち込みと生演奏ドラミングを混ぜてあるかなと思うんだけど、特にベース・ドラムのずんずんお腹に来るビート感、これが大好き。
いっぽう月篇の CD2はもっとぐっと落ち着いたフィーリングで、ダンスというより歌と演奏を聴かせるような、そんなジャジーな歌謡性をも帯びている。それでも1曲目はやっぱりダンス・ズークかなと思うけど、2曲目「Assis Dans Le Noir」で雰囲気がチェンジするよねえ。曲題どおりというべきか、夜の暗さを感じさせるジャジーさで、しっとりと落ち着いている。タニヤもそんな歌いかたをしている。背後でパーカッション群はかなり細かく刻んでいるけどね。
ちょっと驚くのは4曲目「Vini Fou」と5曲目「Mwen Sé Taw」だ。コンテンポラリー R&B みたいなジャズ・ナンバーで、前者ではいきなりハーマン・ミュート・トランペットの音でイントロが創られているし、その後サックスとの合奏になって、次いで本編の歌が出るという具合。そうなってからのリズムも、まるで『アマンドラ』のころのマイルズ・デイヴィスの音楽みたいだ。
それはブラック・ジャズ・フュージョンみたいな5曲目でもそうで、これは完璧なバラード。夜の雰囲気で、どこもダンサブルでないズーク。深夜の都会のクラブかどっかでしっぽり決めてくつろいでいるみたいな、そんな雰囲気横溢だよなあ。でもドラマー&パーカッショニストはやっぱりポリリズミックに刻んでいる。シンセサイザーもギターもベースもジャジーだ。これはいいなあ。
6曲目「Papillion Ka」なんか、まるでジャコ・パストリアスがやっているみたいな曲だし(出だしのエレベ)、このタニヤ・サン・ヴァルの2016年作『ヴォワイヤージュ』CD2の「ルーヌ」、けっこうなお気に入りなのだ。陽気な CD1とあわせ、暖かくなってきたいまの時期の春とこれからの夏にかけて、またどんどん聴こうっと。
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