懐かしのスウィート・エマ
https://open.spotify.com/album/0eBkttkF5HHYrsFEV14oi7?si=g6d97nAHTAWnFtK22QmI9w
あぁ、スウィート・エマ・バレット。なんて書いたって、いまやだれが憶えているだろう?一部の超好事家以外は、みんな忘れてしまったんじゃないかな。っていうかむかしもハナからそもそも関心を寄せられていない?わからないが、1940年代のニュー・オーリンズ・リヴァイヴァルでその地の古老たちがどんどん復活してレコードを出したなかのひとりなのだ。
そのむかし、そういったニュー・オーリンズ・リヴァイヴァルを契機に録音されるようになったニュー・オーリンズのおばあちゃん、おじいちゃんのジャズ・ミュージシャンのレコードがたくさんあったよねえ。ぼくはけっこう好きでどんどん買っては聴いて、わりと気に入っていたんだ。でも、CD リイシューなんてされるのはごく一部。
かのニュー・オーリンズ・リヴァイヴァルの意味みたいなことはまた筆を改めるとして、ぼくは1940〜60年代あたりにたくさん録音されレコード商品化されたそれらのことが、かなり好きだったのだ。ぼくがそれらのレコードを買ったのは1980年代前半だけど、まだまだたくさんあった。でもたぶんもはやブームは過ぎていた。いつも遅れているぼく…。その後はジャズ・ファン、ジャズ評論からも相手にされなくなり、みんなの記憶の彼方へと消し飛んだ。
かのように思えていたのだが、つい三日ほど前、2019年の四月頭に Spotify をブラブラしていてスウィート・エマのアルバムを三枚ほど発見したのだ。ぼくが一番好きだったレコードがいちばん上で写真を掲げた『スウィート・エマ・アンド・ハー・ディキシーランド・ボーイズ』で、印象的な馬車のジャケット。Spotify のだとジャケットもアルバム題も違っているけれど、上でリンクしたのが同じもの。
このジャケットの印象そのまんまの楽しく、にぎやかで、しかも清廉なジャズ・サウンドが漂っているし、ぼくはホ〜ント大好きだったなあ、このレコード。Spotify にあったから、と思って CD を探したら、見つかったんだよね。2 in 1の二枚組、だから 4 in 2 か、オリジナル・アルバムの計四枚が二枚組でくっついているという好かない仕様だけど、ないよりは百倍マシだ。それがこれ。
スウィート・エマは、もちろんニュー・オーリンズの、ピアニスト&ヴォーカリストで、このレコードが1961年のものということは、1897年生まれだから64歳…、って、あれっ、あんがいまだ若かったんじゃないか。古老ということばが似合わない歳だなあ。
そして実際、スウィート・エマのピアノも声も若いんだ。やっぱりおばあちゃん声だねと言われたらたしかにそうなんだけど、味があっていいよ〜。けっこう卑猥な歌もやっているしね。大学生のころ、そんなエッチな部分についてはまったくわかっていなかった。だいたい「わたしのジェリー・ロールはだれにもちっともあげないわ」なんて、なんのことやら「?」マークだったもんなあ〜。
音楽のスタイルは完璧なニュー・オーリンズ・フォームで、19世紀から20世紀への転換点ごろに当地で盛んだったであろうジャズ・ミュージックの姿を、ニュー・オーリンズ・リヴァイヴァルで録音したひとたちはわりとよく再現している。というか、彼らのレコードでしか当時のジャズの姿を音ではわからない。ジェリー・ロール・モートンでもキング・オリヴァーでもルイ・アームストロングでもわからないんだよね。
スウィート・エマは、大学生のころにどれかのライナーノーツで読んだ文章の記憶が正しければ、身体にジャラジャラいっぱい鳴り物をくっつけて、ピアノを弾いて歌うとき身体をゆすってそれらを鳴らしながらやるんだそうだ。レコード(や CD、配信)で聴いてもそのへんは判然としない。
ともあれ、大好きだった馬車ジャケのスウィート・エマのレコードに、CD や配信でだけど再会できて、ぼくはとってもうれしく、いい気分。流れてくる音楽のこの雰囲気にしばらくひたって、1980年代前半当時の大学生としても相当珍奇で物好きなジャズ・レコード買い青年だったろう自身の回顧に身をゆだねておこう。
いやあ、うれしかった。スウィート・エマ、なつかしかった。
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