サウロ・ドゥアルチとの出会い
https://open.spotify.com/album/3RYTqFBBXC9Yzd1GgIU8It?si=yLniGNAjQgaN7_ZHFXYgRg
これは2019年版ジルベルト・ジルみたいなもんかな(って、ジルも現役だけど)、ブラジルのサウロ・ドゥアルチの新作『アヴァンチ・デリーリオ』。ファンキーなサンバ・ソウルとか、そんなようなもんだと思うんだけどね。CD の裏ジャケットには2019の文字があるけれど、2018年発表作なのかもしれない。それはでもたいしたことじゃない。
サウロ・ドゥアルチってぼくはぜんぜん知らなかったんだけど、MPB のシンガー・ソングライターみたいな存在とされているらしい。そんでもって出身がブラジル北部のパラ州とのことで、そう言われたらたしかに『アヴァンチ・デリーリオ』でもリズム・アプローチが多彩で、しかも深い。そんでもってそれをこれみよがしに前面に出さないのも好感度大だ。
リズムというと『アヴァンチ・デリーリオ』には(主に)ドラムスでクルミンがゲスト参加している。ドラムスを叩くだけでなく曲のプロデュースをしたりサウロと共同で曲を書いたりもしていて、貢献度は高いみたいだね。ドラムス担当じゃない、たとえば9曲目「Tropa de Meninxs」なんかでも大活躍。これは実験的先端前衛ナンバーみたいなもんかな。
でもそういったものは『アヴァンチ・デリーリオ』では唯一の例外で、ほかはわかりやすくノリやすいダンサブルなサンバ・ソウル、サンバ・ファンクが並んでいる。やわらかい質感でおだやかであたたかい音楽なんだなあ。こりゃあいいよ。アルバム中随所でクラリネットがフィーチャーされているのも、伝統的なようでいてモダンにも響く(たとえば、アルバムの白眉である7曲目「Estrela D'Água」)。ジャズ・フュージョンっぽいのもある(ラスト11曲目の「Avante Delílio」)。
ソングライティング(全曲サウロ自作)やメロディ・ラインもメロウだし、耳あたりがよく心地いい。聴いていて障るものがなにもないんだよねえ。トータルで37分間という長さもちょうどいいし、オーセンティックなサンバ・フィールを持ちつつ最先端 MPB でもあるっていう、オススメですね、サウロ・ドゥアルチの『アヴァンチ・デリーリオ』。これも今年のベスト作候補になりそうで、2019年もやっぱりブラジルは充実しているね。
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