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2019/04/15

愛しのアンガーム(1)〜 けっこうモダン R&B っぽい2003年作

Unknownhttps://open.spotify.com/album/3vvDdIvYc1Y4NnLtdA8Zzt?si=g7iQH2J7Sk-t2P4foiSUrQ

 

エジプトの歌手アンガーム。フィジカルが入手できないけれど、2018、19年と順調に新作が発売されていて問題なく聴けるから、それらもそのうち書くつもり。CD なくても書かずにいられないっていう充実度。アンガームはいまキャリアの絶頂期にあるんだもんね。今日は2003年の『あなたと生きる』(Omry Maak)の話。ぼくもかねてより愛聴している。ホ〜ントいい歌手だよねえ。しかも美人だ。それもぼく好み。

 

『あなたと生きる』は日本でいちばん聴かれているアンガームなんじゃないかと思う。なぜなら日本盤が出ていて、その解説文をわれらが bunboni こと荻原和也さんがお書きになっているからだ。実際、ぼくもおおいにお世話になっている。このアルバムは、モダンなエジプト/アラブ・ポップのアンガームによるひとつのブレイクスルーだったとみなしていいんだろうか。

 

『あなたと生きる』のバックトラックはかなりの部分がコンピューターで創られている。すくなくともリズム・トラックは間違いなくほぼ100%近く打ち込みで、ベースとドラムスの音が強調され、その上に乗るストリングスは生演奏なのかシンセサイザーなのか、ぼくの耳では判断できないが、やっぱちょっぴりシンセ音くさいような…。

 

アクースティック・ピアノやギターなどの音は人力の演奏者がいるんだろうね。ともかくバック・トラックが完成してからアンガームがヴォーカルを重ねるという手法で製作されたことは間違いない。リズムとサウンドには、ややラテン・ポップスやラテンふう(の影響を受けた)R&B の色が濃く、そこだけ取り出すと、エジプト/アラブのローカル色はほぼなし(7曲目を除く)。

 

アンガームの歌にしても、わりとサラリとこなしている様子に一聴すると受けとれて、そこに濃厚なあのアラブ古典歌謡のコブシまわしは聴かれない。わりと普遍的な国籍不問のポップ・シンガー然としたヴォーカル・パフォーマンスだよね。軽く声を出してアッサリ乗せているような感じがする。

 

アンガームの経歴を知ると、若い時分にアラブ古典歌謡の歌唱を学んだそうで、素養はあるんだそうだ。そう言われたら、この『あなたと生きる』でも聴けるこの軽めの歌い口のなかにも、そんな古典素養が下敷きになっているとうかがえる部分はあるね。ただ軽いだけの(アラブ・)ポップ・シンガーじゃない技術力を漂わせているとわかる。

 

ただし、できあがりだけで判断すると、打ち込みメインのモダン(でラテンな)R&B っぽい音楽に仕上げようというプロデュース意図にアンガームも沿って、あまり粘りつかずしつくこなく、濃厚さを薄めてアッサリ味の繊細さにして歌っていると言えるんじゃないかな。それがこんなバック・トラックにうまくフィットして人気を獲得できていると思う。

 

なんだかんだいってアラブ古典歌謡がやっぱり(日本で)イマイチな人気なのは、あの正攻法な濃ゆすぎる重厚なコブシまわしが敬遠されているせいじゃないかと思うから、新世代のアンガームがこんな方向性を取っていたのは大正解だったんじゃないかと思うんだ。

 

アルバム『あなたと生きる』では、また、たとえば6曲目はしっとりバラード(コントラバスの音から出る)で、軽くジャジーなボサ・ノーヴァの香りすら漂っていたりもするし、8曲目もちょっぴりだけジャズ R&B・バラードふうで、11曲目はワルツ。どれにしても完璧にアンガームはこなしている。

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