ジョアナの爽やかな想いあふれて
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なぜかジョアナ・アメンドエイラのファドが聴きたくなった。どうしてだろう?マリア・テレーザ・デ・ノローニャの完全集なんかも最近あって、それでちょっとファドづいているせいかなあ?わからないが、選び出したのはジャケットの雰囲気が好きな2006年の『ア・フロール・ダ・ペーレ』。これ、いいんだよぉ。いまでもぼくは大好き。
聴いていて感じるのは、ファド新世代ということかどうかよくわからないのだが、ジョアナの声は、また伴奏も、軽い。そして明るい。いい意味でね。さっぱりしていて聴きやすいのだ。これは大きなメリットじゃないだろうか。ふつう一般的にファドというと暗く重苦しいイメージがつきまとう。ジョアナのばあいはスウィンギーですらあって、また歌いくちがベタつかず爽やかで心地いい。そんな気がしたんだけどね。
『ア・フロール・ダ・ペーレ』のばあい、5曲目まではわりと従来路線っぽいファド・ナンバーが並んでいる。アマリア・ロドリゲスなどと比較したらそれでも相当軽いんだけど、それでもジョアナもファド歌手だけあるという湿った重い質感を表現しているよね。しかしそのなかに、ジョアナにしかない独特の爽やかサウダーデがこもっているのを聴きとることが可能だ。やはり新世代。
1〜5曲目までのあいだでも、たとえば4曲目「Plantaei um cravo à janela I」なんかは明るくて聴きやすい。そう、ジョアナのファド歌唱(や伴奏)は聴いていて、気持ちがドンヨリしないのだ。あくまで前向きに進んでいこうっていうそんな明るさが音楽から聴きとれるとぼくは思うけどね。引きずっていない。そんなところもポイント高し。
それが6曲目「Amor, o teu nome」でいきなり真っ青な陽光のもとに飛び出たみたいなキラキラさと輝きと軽さ、明るさが全開。伴奏のふたりのギタリストがそんな弾きかたをしているのが大きいんだけど、こんな伴奏をファドで聴いたことないよなあ。そう、ジョアナのばあい、曲もそうだし伴奏のアレンジや演奏も考え抜かれている。ジョアナのどんな味を際だたせるか、徹底して創り込まれているんだね。
その後も、伝統的なファドとジョアナらしい軽く明るい新世代ファドとが織り交ぜられて出てくるのだが、全体から受ける総合的なイメージはライトでソフト。そんなファドってあります?ジョアナ独自の持ち味なんじゃないだろうか?もちろんコントラバスもくわえての三人の伴奏陣とそのアレンジ、さらに選曲や曲創りの工夫も大きい。ひとことにすれば、爽やかファド。やはり新世代。
9曲目「Barco de sonhos」、13「Lisboa amor e saudade」なんかも聴いてみて。これが果たしてファドなのか?と、イメージをくつがえされるかもしれないよ。伴奏のトリオ演奏も完璧だし、ジョアナは軽く明るいだけでなく、しっかりとした情緒を表現する技巧はすでに最高だし、声にキラキラと同時にしっとりした落ち着きもあって。だから、総合点はかなり高いんだ。
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