ブラジルのギター・ミュージック三題(1)〜 グアンデュオ
https://diskunion.net/portal/ct/detail/1007876217
こないだ三枚買ったブラジル盤のなかでいちばんよかったのがグアンデュオ(Guanduo)のセカンド『Música Disfarçada de Gente』(2019)。これしかし Spotify にも Apple Music にもないのかよ。いまどきの新作で珍しいな。ないものはしょうがない。かなりいい一枚なんだよね。グアンデュオはブラジルのギター・デュオ・ユニットで、ジュリアーノ・カマーラとエドゥアルド・ピニェイラ。どっちも七弦。
ギター・デュオ・ユニットのアルバムながら、『Música Disfarçada de Gente』の中核を占めるのは、全13曲中6〜9曲目と中盤に置かれた四つのムーヴメントから成るビリンバウ組曲かもしれない。グアンデュオの二名にくわえ、ビリンバウ演奏隊三名が参加している。ビリンバウのあの音色が大好きなぼくだから、これはたいへんに楽しめるものだ。実際、このアルバムで最も力が入っているセクションかもしれない。
ビリンバウの音色が単純に好きなだけだからそれでいいんだけど、この組曲はこのアルバムでの音楽的な聴きどころとは言えないのかもしれない。ビリンバウ組曲以外だと、おおざっぱに3タイプに分別できるかなと思う。元エルメート・パスコアールのバンドのドラマーをむかえて(ややハードめに)スウィングしているもの、ショーロっぽい泣きのしっとり系、ストリング・アンサンブルといっしょにやる、クラシック音楽と区別できない室内楽。
なかでも、元エルメート・グルーポのマルシオ・バイーアが叩く三曲(1、3、13)がかなり充実していると思う。3「Samba noturno」はマルシオ以外にはグアンデュオの二名だけで、激しくスウィングし、曲想は3パートに分かれチェンジし、中盤はしっとりおとなしめ。
https://www.youtube.com/watch?v=W8pFIo6A3ak
これ以外の二曲はいずれもマルシオのほかにもペドロ・フランコが参加している。1「Francamente」ではエレキ・ギター&エレキ・ベースをこなし、ちょっとジャズっぽくてこれもいいし、また13「Tarde de carnaval」(「カーニヴァルの朝」のもじり?)ではバンドリンを弾き、そのせいじゃないけれどショーロみたいに聴こえたりもするのがグッド。
https://www.youtube.com/watch?v=IlU12AFNmLo
ペドロがバンドリンで参加してショーロっぽいといえば、アルバム10曲目。最初この CD を聴いていて、ありゃ、これは知っている曲だぞと思ったら、ジャコー・ド・バンドリンの「Vibraçōes」なんだよねえ。しかもフルート・トリオも参加している。フルート・トリオ(アレシャンドリ・アンドレス)はソロをとらずアンサンブルだけ。そのアレンジはエドゥアルドが(フラヴィオ・フォンテネッリに捧げて)書いている。かなりいいんだけど、ネットに音源がないなあ。
グアンデュオの『Música Disfarçada de Gente』、アルバム全体の音楽性が多彩で、華やかだし、古典的ショーロとかクラシック音楽みたいだなと思うと現代ジャズみたいに聴こえたりもして、ブラジルのインストルメンタル・ミュージック好きだったらかなり楽しめる一枚だと思う。
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