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2019/05/14

チック・コリアの仮想マイルズ・クインテット?〜『ザ・コンプリート・”イズ”・セッションズ』

41o8izowrl_sy355_https://open.spotify.com/album/5AyQxbu3U3Pdtfvdp2GmjV?si=joKvbu8_SOSPmQBa4F34Eg

 

チック・コリアの音楽キャリア最高期はマイルズ・デイヴィス・バンド在籍時の1969年ロスト・クインテットでのライヴ録音にあり、というのが長年の自説なんだけど、チック自身のリーダー名義のスタジオ録音で、それに匹敵する絶頂レヴェルな作品があると知り、とてもうれしい気分。それが、こないだちらっと触れた2002年リイシューの『ザ・コンプリート・”イズ”・セッションズ』二枚組。二枚組といっても CD は中古が異様な高値で手が出ないので Spotify で聴いている。

 

『ザ・コンプリート・”イズ”・セッションズ』は1969年5月11〜13日のセッションで録音されたもの。そのマテリアルは、もともと二枚のレコードで分散発売されていたらしい。一枚は「イズ」「ディス」「ジャマラ」「イット」を収録した69年発売のソリッド・ステイト盤『イズ』。そのほかを収録した72年のグルーヴ・マーチャント盤『サンダンス』。

 

分散発売のことや、2002年にブルー・ノートが集大成したいきさつなど、なにかと事情がありそうで、CD 附属解説文をマイクル・カスクーナが書いているそうだから読みたいんだけど、いまのところはしょうがない。正常価格で再リイシューされるまで待つしかないね。音楽だけなら問題なく聴けるので、個人的印象をちょちょっとメモしておこう。

 

まず、自分自身のためにパーソネルを確認しておく。

 

チック・コリア(ピアノ、フェンダー・ローズ)
デイヴ・ホランド(ベース)
ジャック・ディジョネット(ドラムス)
ベニー・モウピン(テナー・サックス)
ヒューバート・ロウズ(フルート、ピッコロ・フルート)
ウディ・ショウ(トランペット)
ホレス・アーノルド(パーカッション、ドラムス)

 

『ザ・コンプリート・”イズ”・セッションズ』二枚組は、ディスク1と2とで明確な音楽性の差がある。一枚目はストレート・ジャズ、というかこれは新主流派ジャズだね。1965年ごろに、マイルズ・クインテットのサイド・メンを中心に、ブルー・ノート・レーベルで展開された、新感覚ハード・バップ(ポスト・バップ)のこと。二枚目はフリーで無調なコレクティヴ・インプロヴィゼイションの記録だ。

 

さて、録音セッションが行われた1969年5月という時点だと、この『ザ・コンプリート・”イズ”・セッションズ』のリズム三人は全員マイルズ・クインテットのレギュラー・メンバーだった。そして、ディスク1の新主流派ジャズもディスク2のフリー・インプロヴィゼイションも、当時のマイルズ・バンドを聴き慣れているみなさんなら違和感なく受け止められるはず。

 

チックとしては、ディスク1の、たとえば「ザ・ブレイン」とか「ディス」のような演奏は、ちょうどマイルズ・バンドの前任者ハービー・ハンコックらが展開していたことですっかりおなじみの音楽だったはず。それを次代のマイルズ・バンド・メン三人でもう一回やりたかったということだろうか。実際、とてもよく似ているしねえ。

 

サックスがベニー・モウピンでウェイン・ショーターとは比較できないが、それでもベニーだって大健闘だと思う。トランペットのウディ・ショウやフルートのヒューバート・ロウズはほとんど出てこないので、実質的にカルテット演奏だね。それで、当時かちょっと前のマイルズ・バンドや新主流派を再構築しているもののように聴こえる。演奏のクオリティも高い。

 

ところでここで演奏している「ディス」。これはマイルズ・バンドの演奏で聴いて知っていた曲だ。1969年のロスト・クインテットから70年のバンドまでマイルズのライヴではしばしば演奏されていた。チックの曲だとも知っていたのだが、スタジオ録音を聴いたのは今回が初。かなりいいよなあ。マイルズ・バンドのライヴ・ヴァージョンよりいいぞ。

 

『ザ・コンプリート・”イズ”・セッションズ』ディスク2のフリー・インプロヴィゼイション篇。アルバム題にもなっている「イズ」が29分近くもあって、実質これ一曲を聴くべきサイドと言っていいだろう。しかしここでもおそれることはない。マイルズ・バンドの、たとえば1969年8月録音の曲「ビッチズ・ブルー」では、ノー・テンポのパートなどで同様の展開を聴かせているじゃないか。そこでも主導権はチックが握っていた。

 

マイルズ・バンドにああいったフリーなコレクティヴ・インプロヴィゼイションを持ち込んだのは、こういったチック自身のセッションからの成果だったのかもなあと思わないでもない内容だよね、曲「イズ」は。ここではウディ・ショウもヒューバート・ロウズも活躍している。演奏最終盤で4/4拍子に移行してスウィングしながら終わるんだけど、そこも快感だ。長く強い緊張がとけるかのような心地よさがある。

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