ボッサってな〜に?
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世界で最も知られているブラジル音楽がボサ・ノーヴァだけど、ボサ・ノーヴァってなに?このことばはどういう意味?と聞かれたら右往左往してしまうぼく。ノーヴァのほうは、英語なんかでもスーパー・ノーヴァ、すなわち超新星と言ったりするので「新しい」という意味なんだな、つまりは音楽の新潮流みたいなことを言おうとしているのか、と推測がつくけれど(ウェイン・ショーターに同題のアルバムあり)、ボサ、またはボッサがわからないよねえ。
そんなとき、1999年のオフィス・サンビーニャ盤アンソロジー『サンビスタス・ジ・ボッサ』がかなり参考になる。アルバム題どおり、ボッサ感覚を持つサンバ歌手たちの録音をどんどん並べて、ボッサがなんなのか、解説文の田中勝則さんも特にこういうことと明言されていないけれども音源で実感してもらおうという一枚じゃないかな。
だから収録されているのは24曲すべてサンバだけど、ボッサ感覚を持つものってなんだろうと、ぼくは最初わかっていなかったが、だんだんこういうことかな?とぼんやり感じるようになった。それを今日ぼくは明記しておきたい。ボッサ感覚とは、サンバのなかでも特に都会的で粋なセンスのオシャレでファンキーなもの、そんなフィーリングを指していると思う。
サンバといっても実にいろいろあって、もとがカーニヴァル用の音楽だからダンサブルで泥臭いものもあったりするのだが、『サンビスタス・ジ・ボッサ』に収録されているサンバにそういったものはない。ちょっとあえていえばヤワな、華奢な、おしゃれなやさおとこ的なというか(女性カルメン・ミランダが収録されているが)、そんなサンバばかりどんどん並んでいるとしていいんじゃないかな。
『サンビスタス・ジ・ボッサ』に収録されている歌手は、だいたいがルイス・バルボーザ、シロ・モンテイロのふたりだと言ってもいいくらいで、ソングライターでいえばウィルソン・バチスタとジェラルド・ペレイラにしぼられるとしたいほど。年代で言えば、たとえばサンバ・ジ・ボッサの最盛期は1940年代前半と言っていい。
そのころ、サンバとショーロが再合体し、サンバに小粋なスウィング感が聴かれるようになり、同時にファンキーなユーモア感覚もあわせ持ち、軽妙にノリよい曲をスッと軽く歌うことが時代の潮流だった。そんなことを<ボッサ感覚>と呼んでもいいんじゃないかなと思う。最初はサンバのなかに出てきた(新しい)感じといった程度の使われかただったのかもしれないんだけど、ノエール・ローザやカルメン・ミランダの歌詞のなかにも歌い込まれるようになって徐々にサンバ音楽になかに定着し、1940年代になってサンバ・ジ・ボッサなどと呼ぶようになったのだろう。それがボサ・ノーヴァという命名の起源となった。
『サンビスタス・ジ・ボッサ』のなかにある、たとえばシロ・モンテイロの歌のなかには、ほぼボサ・ノーヴァに近づいている、あるいはボサ・ノーヴァそのものであると言いたいくらいのものだってあるんだ。だから、サンバからサンバ・ジ・ボッサを経てボサ・ノーヴァへいたる道のりはひとつながりだったんだなと実感できる。
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