ライヴ盤の少ないパット・マシーニーだけど
https://open.spotify.com/album/6zhcd9npDiEUGn66l1lzSU?si=jgsVbX43SJWWJhxOcsko2g
ほんと、パット・マシーニーはキャリアの長さと充実度からしたら異常とも言えるほどのライヴ・アルバムの少なさだ。2019年現在で二枚だっけ?たしかそれくらいだよね。そのうちでも、1993年のゲフィン盤『ザ・ロード・トゥ・ユー』がかなりいい。この時点でのパット・マシーニー・グループのベスト盤的な聴きかたもできる選曲だし、中身も充実している。パット入門にもうってつけ。
ライヴ盤ながら『ザ・ロード・トゥ・ユー』には録音年月日場所の詳細は記載なし。表ジャケットにヨーロッパでのライヴ録音とあるのでそうなんだろうとしかわからない。1993年リリースだからそのすこし前の収録なんだろうと推測できる。メンバーはアーマンド・マーサル、ペドロ・アズナールのいるレギュラー・グループ。たぶん、最強期だね。
パット・マシーニー・グループのばあい、やっぱりヴォーカルが入る曲のほうが楽しいし、美しく、そして切なく胸に迫る。だから『ザ・ロード・トゥ・ユー』でもそういった数々の曲がぼくはやっぱり好きだ。1「ハヴ・ユー・ハード」、2「ファースト・サークル」、5「ラスト・トレイン・ホーム」、8「ビート 70」、10「サード・ウィンド」。
爽快にかっ飛ばしているし、スウィング感も見事。二名のヒューマン・ヴォイスもいいし、歌いながら同時に演奏するパーカッションも見事に効果的。出だしの1、2曲目でたぶんリスナーは心をつかまれてしまうと思う。その後、やや前衛的なギター・ピースなどもはさみながら、長尺な4曲目を経て、おなじみの5「ラスト・トレイン・ホーム」で泣く。
アーマンド、ペドロの二名の(楽器と同時にユニゾンで進んだりもする)ヴォーカル・ラインは、もちろんあらかじめアレンジされてあるものだから、スタジオ・オリジナルとなにも違わない。パットやライルのソロはアド・リブだなとわかるし、またヴォーカルも即興的に歌っているなと思う部分もありはするものの、だいたいどの曲もスタジオ・オリジナルと大きくは違わない。
それならオリジナルを聴いていればいいか、とはならないんだなあ。やはりライヴ・パフォーマンス、一発同時演奏ならではのグルーヴがここにはある。あきらかに空気が違っているんだよね。あまりにもちゃんとしているというか整然としているので、『ザ・ロード・トゥ・ユー』を聴いていて、ライヴなんだということを忘れてしまいそうだ。
ヴォーカルの二名が参加しない、カルテット演奏ピースは、パットのジャズ・ギタリストとしてのハイ・レヴェルな腕前がよくわかるもので、彼自身、そういったショウケースにしたい、ライヴでそれをアピールしてみようというものだったんじゃないかと思う。印象がなめらかだからうっかり聴き逃しそうになるけれど、どこをとっても超一流のギターリストだ。
しかしやっぱりね、ライヴのメイン・アクト最後の曲「サード・ウィンド」の演奏が終了してもなお、客席からの大合唱がやまないっていう、それはヴォーカリスト二名の歌うラインを観客も歌っている、バンドがやめてもなお、しばらくお客さんが歌っているという事実だけもってしても、パット・マシーニー・グループの魅力、真骨頂が奈辺にあるかを如実に物語っていると思うんだ。
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