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2019/05/12

トニー・アレンのブレイキー・トリビュート、実はかなり好きなのだ

Fullsizeoutput_1e58https://open.spotify.com/album/6Di99uGNb1ITzZVPigCpES?si=hVhi1tvsTxqSn5Gbt_8rhA

 

いままで遠慮したりして言ってこなかったんだけど、2017年に『ザ・ソース』の前振りみたいにしてリリースされたトニー・アレンのミニ・アルバム『ア・トリビュート・トゥ・アート・ブレイキー・アンド・ザ・ジャズ・メッセンジャーズ』のことがかなり好きなのだ。なにが好きといって、このリズム。トニー・アレンのドラミングを聴いているだけで気持ちいいもんなあ。

 

たった四曲で24分程度の EP なんだけど、なかなかどうして密度は濃い。そりゃあ傑作『ザ・ソース』とは比較できないけれど、『ア・トリビュート・トゥ・アート・ブレイキー・アンド・ザ・ジャズ・メッセンジャーズ』のほうは、おなじみのジャズ・ナンバーばかりカヴァーしているおかげで、この2017年型トニー・アレンの音楽の特異性がかえってわかりやすいかも。

 

一見ふつうのハード・バップをやっていると思うでしょ、違うんだ。トニー・アレンのこのドラミングを聴いてほしい。手数多めで細分化されたビートを叩き出しているし、それを一曲をとおしずっとキープすることで、おなじみの曲が違った容貌を見せているじゃないか。リズム面でね。2曲目「チュニジアの夜」出だしのドラミングなんか、クールでカッコよくて、ゾックゾクするよなあ。

 

リズム面での斬新さは、テーマ・メロディのパラフレイズにも顕著に表れている。「モーニン」でも「チュニジアの夜」でもみんなそのテーマ・メロディはよく知っているものだから、トニー・アレン・ヴァージョンを聴いたらエッ!?と思うんじゃないかな。そのリズム重視でスタッカートを多用するテーマ・メロディの崩しかたに。

 

リズム隊三人(ドラムス、ベース、ピアノ)の奏でる斬新な2010年代後半型最新ジャズ・リズムに乗って、おなじみのスタンダード曲のメロディもリズム重視で姿を変えているし、ホーン五、六管の重ねかたもずっしりくるし、しかもその響きは新しく現代的。このへん、リズム・アレンジもメロディのパラフレイジングもホーン・アレンジも、ぜんぶトニー・アレンがやっているのかなあ。

 

ともあれ、従来的な、つまり保守的で1950年代後半のハード・バップが好きなようなジャズ・ファンが最新ジャズに入っていこうと思ったときの格好のイントロダクションになりうるアルバムじゃないかと思うんだね。そんなこと言わなくたって、たんに聴いていて快感だけどね、このビート(ホーンズのそれを含む)が。

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