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2019/06/01

家具調ステレオ・セットの時代

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ぼくが大学卒業まで使っていたレコード再生装置は、小学生のころに祖父が買ったものです。祖父は三波春夫の歌謡浪曲が大好きで、そのレコードを自宅で聴きたい一心でそれを買ってきました。日本コロムビア製のステレオ・セットだったのを憶えています。写真はネットで検索して拾った同社製のものですが、家にあったのはこれじゃありません。ですが当時のそんな写真をいまぼくが持っているはずもなく、だからやむなく。これで許してください。だいたい似たようなものでしたから。

 

こういった家具調のっていうんですか、いまならオーディオ装置はどっちかというとちょっと無骨な雰囲気でメタリックなものが多いと思うんですけど、写真のようなインテリアに溶け込む木製外観の一体型ステレオ・セットがむかしはあったんです。祖父がそれを買ってきたのは、正確に何年と憶えていませんが、ぼくが小学校高学年のころです。

 

ぼくは1962年生まれですので、だからたぶん1960年代末か70年前後か、そのあたりですよね。すくなくともぼくがはじめて買ったレコードである山本リンダ「どうにもとまらない」ドーナツ盤(1972年)をそれで聴いたという記憶は間違いありませんので、10歳までには家にステレオ・セットがあったはずです。そもそもそれがなかったら山本リンダのシングルを買ったかどうかもわかりません。

 

祖父からこの話を聴いたことはないのですが、いったいどこで三波春夫を聴いて、レコードがほしい、自宅で聴きたい、そのためにステレオ・セットを買おう、と思ったのでしょう?テレビ出演を観たか、実演が松山市内であってそれに接した可能性もありましょうが、推測するに、たぶんどなたかすでにレコード再生装置をお持ちの友人か知り合いか、あるいはレコード・ショップかなんらかのお店か、そんなところで三波春夫のレコードを祖父は聴いたのではないでしょうか。

 

ともかくそんなことで、遅くとも孫のぼくが10歳のときには家具調ステレオ・セットが家にありました。祖父はぼくが中学二年のときに亡くなりまして、その後ステレオ・セットは家族みんなで使うということになったのです。だいたいが音楽レコード好きの多い家族でしたしね。しかし(上掲写真のごとき)家具調ステレオ・セットはどんどん廃れていったのではないかと思います。

 

だから木製のああいったものは、ひょっとしたら1960〜70年代独自のものだったのかもしれませんね。レコード・プレイヤー、ラジオ受信機、アンプ、スピーカーが一体化しているもので、配線がどこにも見えませんでしたので、内部で結ばれていたのだと思います。そのあたりも家具調というかインテリアとして部屋の雰囲気をこわさないように、との配慮だったのでしょう。

 

それから、家にあったものはラジオ受信機の下に蓋があって、それを開けるとレコード収納棚がありました。左右のスピーカーにはさまれた真ん中は、上からレコード・プレイヤー、ラジオ受信機、そしてそれらと一体化しどこがそうだともわからないアンプ、そしてレコード収納棚でした。祖父はそのなかに、買ってきた三波春夫のレコードを並べていたんです。

 

レコード・ラックに蓋ができて中身がふだんは見えないようになる、なんていう部屋を、いまレコードや CD 愛好家のみなさんがお持ちかどうかわかりません。が、そのむかしぼくが大学卒業まで使っていたステレオ・セットはそうだったんですね。もちろん、ぼくをはじめ家族がレコードを買ってきては置きますので、そんなセットの下部の棚のなかだけでは到底収まりませんでしたけど。

 

オール・イン・ワンのステレオ・セットでしたので、ちょっと困ったのはぼくが高校生のころカセット・テープを使うようになり、それにレコードをダビングしたいと思っても、カセット・デッキを接続できる端子がなかなか見つからなかったことです。結局はなんとか接続できたのですが、なんだかとっても特殊なケーブルを使う必要があって面倒くさかったです。細かいことは省略します。

 

レッド・ツェッペリンやビリー・ジョエルも、それから17歳で電撃的にジャズ・ファンになって人生が一変して以後どんどんアホみたいに買いまくるようになったジャズ・レコードも、あるいはロックやシャンソンも、B.B. キングもジェイムズ・ブラウンも、バリのガムランも、とにかくなにもかもすべてを、この祖父の買ってきた家具調ステレオ・セットで聴いたんですよ。

 

ジャズ狂になってからの大学生時代、たまに同じジャズ趣味の友人を自宅に呼んでいっしょにレコードを聴くこともありました。ひとり暮らしだとだいたいみんな自室では小さなコンポで聴いていたようですから、ぼくんちにこんな大きなスピーカーがあるのがうらやましいと口をそろえていました。でも、たいしたスペックではありませんから、大きさほどのちゃんとした音は出ていなかったんじゃないでしょうか。

 

だいたいスピーカーのサイズが大きいといっても木製の外見だけのことで、サランネットもたぶん一体化していて外せませんでしたから、どんなユニットを使っているなどと確認することもできません。レコード・プレイヤーもアンプもちゃちなものだったのだと、当時聴いていた音の記憶といまぼくが聴いている音の現況とを比較するとそう思います。

 

でも自力でちゃんとしたステレオ・セットを買う経済力もなく(というかあんなにどんどんレコードを買いまくっていたんだからなんとかなったはずですけど)、そんな気はぼくにも両親にもなく、ぼくはぼくで祖父の買ってきた家具調ステレオ・セットでじゅうぶん満足していましたので、当時、その音質がどうのこうのとは思わなかったのです。そりゃあ同じレコードでもジャズ喫茶の音とは違うなとはわかっていましたけれども。

 

遅くともぼくが10歳のときには家にあって、その後大学卒業の22歳になるまで使いに使いまくった祖父購入の家具調ステレオ・セット。そのあいだ(約)12年間、特にこれといった故障もせず、レコードが正常に聴けないといった事態を一度も引き起さず、酷使に耐えてくれました。そのあいだに現在まで続く音楽趣味の土台が形成され人生が充実していますので、感謝もしています。

 

大学を卒業し自宅を離れ東京の大学院に進学したときに、はじめて自分でパイオニア製の小さなステレオ・セットを買いました。

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