ケンドリック・スコットとの初邂逅はいい感じ
https://open.spotify.com/album/6x36FYMhcxlEjJB97ikwA3?si=QAMPnUw7SJClJNFgHrd05Q
ケンドリック・スコット(Kendrick Scott) はアメリカ合衆国のジャズ・ドラマー。しかしぼくはちっとも知らなかった。今年の三月だっけな(いや、四月頭?)、ブルー・ノート・レーベルの公式 Twitter アカウントが、彼のグループ、オラクル(Oracle)の 新作『ア・ウォール・ビカムズ・ア・ブリッジ』(2019)の発売をアナウンスしていたのを見て、そこに写っているジャケットがいいなあ〜と思って、それではじめてちょっと聴いてみようと思っただけだった。
ケンドリック・スコットのオラクルは、プロデューサーがデリック・ホッジ。バンドはみずからのドラムス以下、マイク・モレーノ(ギター)、ジョン・エリス(リード)、テイラー・アイグスティ(鍵盤)、ジョー・サンダーズ(ベース)、DJ ジャヒ・サンダンス(ターンテーブル)。
新作『ア・ウォール・ビカムズ・ア・ブリッジ』もこのメンツでこなしているが、ぼくの持った最大の印象は、なんてなめらかでスムースなんだということ。耳あたりがとてもいい。やわらかく聴き心地がいいんだよね。このへん、以前ブラジルのマルモータを聴いても同じことを感じたが、ケンドリック・スコットのオラクルもそうだし、このへんの聴きやすさは現在進行形のジャズに共通するものだろうか??
https://hisashitoshima.cocolog-nifty.com/blog/2019/04/post-5c4e.html
それから従来のジャズ(/フュージョン)に相通ずるものも感じるのだが、最大の要素がジョー・ザヴィヌルのウェザー・リポートとパット・マシーニー(・グループ)だ。このふたつは間違いなくオラクルのなかにある基調。パットがあるということはブラジル音楽テイストもあるということで、これも疑いえないほど強く感じられる。ヒューマン・ヴォイスの活かしかたなどはそっくりだ。
ケンドリック・スコットのドラミングに特に強くなめらかさを感じるんだけど、でも彼はアルバム中ときどきかなり激しくパッショネイトに叩きまくっている。しかしそれがトータルな音楽性のなかに有機体として溶け込んでいるので浮きあがらず背景にあって、だからさほどには目立たないんだよね。フロントで吹いたり弾いたりしているひとたちのリズムと折り重なったりズレたりもしてポリリズミックになっているが、しかし曲全体がよく構成されている。だから異質感がない。
よく構成されているといえば、アルバム『ア・ウォール・ビカムズ・ア・ブリッジ』全体もそうで、曲間の空白がなくどんどん流れてくるせいもあるけれど、この曲の次にこれが来るという流れが実にいい。だから53分間で<一曲>を聴いているような印象があるね。サックスを吹くときのジョン・エリスもときおりエモーショナルに高揚するが、しかしどこかクールだ。
ともかくこのオラクルのアルバム、ジャケットがいいでしょ。ぼくも Twitter でそれが流れてきて一瞥しただけで「あ、いいね、カッコイイ、これ、だれ?」って思って気になったし、それで結局 CD まで買うことになった。イラストとレーベル・ロゴだけっていうシンプルさだけど、眺めていて心地いい。中身の音楽も聴いていて気持ちいいんだよ。爽やかで清涼感があってベタつかないし。
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