ストーンズ『レット・イット・ブリード』では A 面がいいね
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ローリング・ストーンズ『レット・イット・ブリード』(1969)では B 面がイマイチに聴こえるけれど、A 面は最高にすばらしい。黒っぽいリズム&ブルーズ調のオリジナル「ギミー・シェルター」で幕開け。そこからしてすでに文句なしだ。こういったブラック・ミュージック的なのはカヴァーが多かったストーンズだけど、バンド結成後七年でオリジナルでもここまでできるようになった。
2曲目「ラヴ・イン・ヴェイン」はロバート・ジョンスンのブルーズがオリジナルだけど、それがブギ・ウギ調だったのに対し、ストーンズはブルーズくささを消して、切なく甘いロッカバラードに解釈しているのがなんともいえず見事だ。ロバート・ジョンスンのオリジナルにバラード感覚がひそんでいると見抜いての展開で、本質をつかむとはこういったことを指すのだろう。個人的にはストーンズ・ヴァージョンでこの曲を知ったので、ロバート・ジョンスンのオリジナルはいまでも物足りず。
カントリー・ナンバーである3曲目「カントリー・ホンク」はもちろん「ホンキー・トンク・ウィミン」のプロトタイプだ。ブルージーなロック・ナンバーな後者に対し、ここでは完璧なるカントリー・ナンバー。フィドルまで入る。この時点でグラム・パースンズとの親交がはじまっていたに違いないとわかる音楽性だよね。カントリー・ロックではなくカントリー・ナンバーだ。
『レット・イット・ブリード』やこの時期のストーンズとしては、4曲目「リヴ・ウィズ・ミー」がやや異質なハード・ロック・ナンバー。出だしのエレベぶいぶいはどう聴いたってビル・ワイマンのはずがないぞと思って調べたら、やっぱりキース・リチャーズじゃん。ギターはもちろん弾いているが、ミック・テイラーとの役割分担がぼくにはわかりにくい。
ところでこの「リヴ・ウィズ・ミー」という曲のことがぼくは大好きなんだけど、理由のひとつとして中間部でボビー・キーズのテナー・サックス・ブロウが入るということがある。ジャジーだし、テキサス・ホンカーでありながら、ここでは都会的な夜の雰囲気を演出しているなと思う。キースの弾くエレベや(テイラーもふくめの)ギター・ワークとあわせ、洗練された都会の大人のムードがあるでしょ。AOR 的と言ってもいい??そんなところが大好き。
わかりやすくコピーしやすい5曲目「レット・イット・ブリード」。歌詞もメロディもリズムもいいね。コピーしやすいというのは本当で、なんたってこのぼくですらこのアクースティック・ギターの刻みをやりながら弾いて歌えていたほど。ちょうど20世紀の終わりごろ、ネットで知り合った音楽仲間たちとスタジオでこれをやって遊んでいた。きっかけはスキマ時間にぼくがギターを借りてこれを弾きだしたら後ろのドラマーがその場で合わせてくれたこと(そのひとは本来ベーシスト)。それでちょろっと歌ってみた。同じ3コード反復でカンタンなんだ。
しかし素人にはコピーできないのが、曲「レット・イット・ブリード」に漂うフワ〜っとした幕のようなサウンドというかアンビエンスで、たぶんそれがビル・ワイマンの担当となっているオートハープかなあ。もちろんライ・クーダーの弾くスライド・ギターも絶対に真似なんてできないもの。一曲全体をライのスライドがラッピングしていることで、この曲「レット・イット・ブリード」にアメリカ南部的なイナタさが付与されている。
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