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2019/06/23

男歌・女歌(二回目 with わさみん)

Img_8481一回目はこれ → https://hisashitoshima.cocolog-nifty.com/blog/2016/09/post-c90d.html

 

このリンク先の2016年9月付の記事以上の知見は持ち合わせていないのでくりかえしになりますが、二回目を書いておかなくちゃなと思うことが最近なんどかありました。

 

日本の演歌や歌謡曲や J-POP や、要するに大衆歌謡の世界に(男性が/女性が歌うべき)男性曲/女性曲といったものはありません。こういうことばをお使いになるかたがたの文章を拝見していると、男性歌手の曲を女性が歌ったりその逆だったりするのはイマイチなのだ、ちょっと遠慮したいのである、というご気分がおありだとお見受けします。でも、そんなことはないんですよね。

 

たとえば女性歌手が男性の持ち歌をやるのは、なんら不思議なことではありません。その逆も然り。歌詞内容が、男性が歌うような内容で男心を扱ったものでことばづかいも男ことばで、といった曲でも、女性歌手はどんどん歌っていますよね。それが<男歌>というもので、日本の歌の世界ではあたりまえのことなんですね。逆に男性歌手が女ことばで女心を歌ったものは<女歌>と呼び、それらどっちもごくごくふつうのことで、違和感はありません。

 

ちょっとそれぞれ具体例をあげておきましょう。上の過去記事とダブるばあいはご容赦ください。八代亜紀の「舟唄」。これは男歌ですね。歌詞内容も男ことばで男の心情をつづったものですが、女性である八代はなんの問題もなく歌いこなし、説得力のあるすばらしい歌唱を聴かせています。
https://www.youtube.com/watch?v=2kOQfc1FswE

 

わさみんこと岩佐美咲も歌った、川中美幸の「ふたり酒」も男歌ですよね。完璧な男口調じゃないですか。これをおかしいなどという演歌ファンはいないわけです。もっとも、このままアメリカなどへ持っていったら奇妙であると言われること必定ですけどね。日本ではまったくふつうです。
https://www.youtube.com/watch?v=8wUHmhgubks

 

わさみんの名前を出しましたので、彼女がカヴァーした女歌の例をあげておきましょう。森進一の「北の螢」がそうです。森は男性でありながら、女性の立場に立って女ことばで女性の(男性に対する)心情を切々とつづっています。これを聴いて、キモチワルイ〜などと感じる日本人演歌ファンはほとんどいないはずです。
https://www.youtube.com/watch?v=IoNdfSU4DyU

 

わさみんもギター弾き語りライヴで歌った「木綿のハンカチーフ」(太田裕美)なんかは、一曲の歌詞のなかで男の立場と女の立場がどんどん入れ替わりますよね。A メロ部は男性心情を男ことばで歌っていますが、サビになると突然女性になります。男女の対話形式で毎コーラスが進むんです。こういうのは例外かもしれませんが、太田裕美もわさみんも、男になったり女になったりして、一曲のなかで自在に歌い分けているんですね。
https://www.youtube.com/watch?v=_qzIG2SK3eI

 

男性曲/女性曲などとおっしゃるかたは、ぼくがここまで述べたようなことではなく、たんにオリジナル歌手が男性だから/女性だから、異性の歌手がカヴァーするのはどうかと思うといったニュアンスなのかもしれないですね。だから内容は男歌だけど八代亜紀の「舟歌」を同じ女性のわさみんが歌うのはべつに問題なく、いっぽう歌詞内容は男性/女性どっちでも OK なものだけど西田敏行の歌った曲をわさみんがやるのにはやや違和感があるとか、そういうことでしょうか。

 

しかし、わさみんは上でもあげましたように森進一の女歌や川中美幸の男歌を歌って見事な結果を示していますよね。いや、それは男性歌手がやったものでも女歌(女性心情)だから違和感が小さいということなのでしょうか。男歌(男性心情)でも川中美幸は女性歌手だからわさみんが歌っても違和感なしとかですか。う〜ん、それはちょっとどうなのでしょう。歌詞が男性内容/女性内容であるかどうかには関係なくどっちの性別の歌手でも歌えるのが日本歌謡の特徴なのですから、オリジナル歌手の性別いかんにこだわりすぎないほうがいいのではないでしょうか。

 

音楽だけじゃなく、一般に芸能・芸術表現の世界では、性別はしばしばクロスします。超えていくんです。このことは日本人であれば皮膚感覚で理解できていることじゃないでしょうか。歌舞伎の伝統がありますし、近代以後なら宝塚もあります。男性役者が女形を演じたり、女性が男役をやったりして、違和感がないわけですからね。それはたんに役割分担であるとぼくらもわかっているからでしょう。同性愛者だから、なんてわけではないと知っています。

 

演歌や歌謡曲の世界でも同じなんですよね。性別というか、歌詞内容の、または初演歌手の、性差にとらわれて、こっちの(同一)性別じゃないと歌えないとは、ぼくら日本人はふつう考えませんし、実際、歌手のみなさんも性別を超えてどんどんカヴァーなさっているというのが事実です。よくご存知でしょう。日本の歌の世界とはそういうものなんですね。

 

わさみんこと岩佐美咲には、だから女歌でも男歌でも、オリジナル歌手が男性でも女性でも、どんどんとりあげてカヴァーしてほしいなとぼくは思っています。なんでも歌いこなせる実力が身についてきているから、というのもあるんですけど、それ以上にもとからそういう世界なんです。わさみんもその世界に身を置いている、つまり伝統の一端を担っているんですから。

 

ぼくらファンもそれをちゃんと理解した上で、わさみんになにを歌ってほしいかは(性別関係なしで)柔軟に考えていったほうがいいんじゃないでしょうかヾ(๑╹◡╹)ノ。

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