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2019/06/07

ドナルド・バードの1969年 〜『ファンシー・フリー』

Bluenoterecords_2019may18https://open.spotify.com/album/1lpT5gGbaQJLy4YzFEqZXC?si=KCBoTZJFSkW6bGI6lqjj7g

 

ドナルド・バードの1969年作『ファンシー・フリー』では、やっぱりレコードの両面トップだった1、3曲目が聴きものかなと思う。いや、いま聴くとB 面の二曲(3、4曲目)はどっちもいいな。リズムがタイトでファンキーで、全体のサウンドもリズム&ブルーズ寄りになっている。だから『ファンシー・フリー』を大きく分けると A 面がジャズ・サイド、B 面がファンク・サイドということができるかも。

 

それでもアルバム・タイトルにしているんだから1曲目の「ファンシー・フリー」が目玉なのは間違いないんだろう。かすかに1970年代中期っぽいさわやかフュージョンも香るジャズ・ロックで、デューク・ピアスンの弾くフェンダー・ローズとジェリー・ドジオンのフルートが印象的。ドナルドのトランペット+フルート+サックス+トロンボーンという四管編成で、この時期のこのひとの作品はだいたいそんな感じの多管編成。

 

でも、アルバム『ファンシー・フリー』だとそんなやや大編成気味なアンサンブルの出番はあまりない。曲「ファンシー・フリー」でも管楽器は一人づつ出てきてテーマとソロを担当。テーマはフルートが吹いて、そのままソロへ。そのテーマ・メロディはドナルドの作曲となっているよね。これが実にいい感じだ。ジャズなんだけど、1969年当時のロックとかソウル、ファンクなど、要はブラック・ミュージックを強く意識したような旋律の動きで、心地よい。

 

曲「ファンシー・フリー」のリズムは、いかにも1969年のジャズ・ロックといった典型的なもの。しかし二名のパーカッショニストと、(ルー・ドナルドスンの『アリゲイター・ブーガルー』をやった)レオ・モリス aka イドリス・ムハンマドのドラムスという打楽器アンサンブルが、これまたさわやかだ。粘り気、湿度が足りないが、2019年に聴くと、ちょうどいい同時代感がするので不思議。

 

その点、1969年当時のジャズ・ミュージュックとしてはかなりコテコテのブラック・ミュージックに寄ったような3、4曲目は、当時なら<新しい>とされたところだけど、いま聴くとやや時代を感じてしまうところ。それでもぼくの好みでいえばこれら二曲のほうが圧倒的に好きなんだけどね。うん、間違いない。

 

だいたい3曲目の「ジ・アップタウナー」は、曲「アリゲイター・ブーガルー」の焼き直しでしょ。だから二番煎じでダメっていう意味じゃなくて、こういった種類の音楽、すなわちブルー・ノート・ブーガルーに分類できるジャズなら、いくら聴いても快感が増すばかりなんだ。どんどん聴きたい。それにこの曲では、このアルバム中唯一エレキ・ギター・ソロがある。それも「アリゲイター・ブーガルー」の流儀。

 

「ジ・アップタウナー」では、フランク・フォスターだってこんなにもファンキーなソロを吹くひとだっけ?とビックリするくらいカッコイイ。それに続くギター・ソロはジミー・ポンダー。グラント・グリーンとジョージ・ベンスンを足して二で割ったみたいだ。これはいい。主役のドナルドのトランペットの音色も輝いているしね。

 

「ジ・アップタウナー」は、おおもとをたどっていけばハービー・ハンコックの「ウォーターメロン・マン」やリー・モーガンの「ザ・サイドワインダー」とかに行き着くもので、どれもぜんぶラテンなファンキー・ブルーズ。ジャズがファンクになっていく経過ではラテン・ビートがやはり最も重要な役割を果たしていたね。

 

4曲目の「ザ・ウィージル」もブルーズで、この曲のテーマ演奏部でだけ四本のホーン・アンサンブルが聴ける。しかし聴きどころはやはりこのタイトなリズムだ。カッチョエエなあ〜。それに乗る一番手のドナルドのトランペット・ソロも見事だ。ところでこのひとのファンク路線傾倒が進むにつれトランペット・ソロの出番が減っていくのだが、『ファンシー・フリー』ではまだまだジャズだからなのか、バリバリ吹いていていいよねえ。

 

アルバム唯一のピュア・ジャズ・ピースともいうべき2曲目の「アイ・ラヴ・ザ・ガール」。ほぼドナルドひとりをフィーチャーするショウケースになっていて、こういったちょっとこじんまりしたかわいらしいラヴ・バラードをきれいに吹くこのトランペッターのチャーミングさがよくわかる。この曲の演奏にもぼくは好感を抱いている。

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