おいらのやることみなファンキー 〜 ルー・ドナルドスン
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ぼくにとってルー・ドナルドスンとはバッパーというよりファンキーなソウル・ジャズのひと。『アリゲイター・ブーガルー』みたいなやつですね。そしてここにも一個くっさぁ〜いアルバムがあります。1970年リリースの『エヴリシング・アイ・プレイ・イズ・ファンキー』(ブルー・ノート)。スタンダード「虹の彼方に」もやっていますけど、アルバムの約38分間ほぼ全編がファンキー路線で、も〜う!気持ちいいったらありゃしません。
このアルバムは1969年8月(4、5曲目)と70年1月(1、2、3、6曲目)の二回のセッションでの収録曲で構成されているんですけど、バンド編成はどっちもホーン二管にギターやオルガンをくわえるという『アリゲイター・ブーガルー』路線。でも大きな違いもありまして、こっちにはフェンダー・ベースを弾くジミー・ルイスが参加しています。オルガン奏者がいながらにベーシストも入れるというのは、リズム重視の時代の要請ってことでしょう。実際、ジミー・ルイスのベース・プレイは、オルガニストがフット・ペダルを操作するのでは実現不可能な細かく精緻なファンキー・ラインを奏でていて、大成功していると言えます。
アルバム『エヴリシング・アイ・プレイ・イズ・ファンキー』の全六曲では、3曲目のスタンダード・バラード「虹の彼方に」を除く五つすべてがブルーズ(かその亜種)で、そのうちラスト6曲目「マイナー・バッシュ」が4/4拍子のストレートなジャズ・ビートなのを除けば、残りは8ビートのファンキー・グルーヴを持っているという、はっきり言って万々歳な作品なんですね。
オープナーの「エヴリシング・アイ・ゴナ・ドゥー・ビー・ファンキー(フロム・ナウ・オン)」は、まずルーをはじめとする面々の会話からはじまって、曲題そのままのことばをルーが歌いだしたら本編開幕。ブルー・ミッチェルとの二管でそのテーマを再演奏し、まずメルヴィン・スパークスのギターからソロ・パートに突入します。どのソロもファンキーで、いやあ愉快爽快万々歳。オルガンでビャビャッとやっているのは大好きなロニー・スミス。その後ふたたびヴォーカル・コーラス・パートも出ます。
こんな軽妙でユーモラスでもある「エヴリシング・アイ・ゴナ・ドゥー・ビー・ファンキー(フロム・ナウ・オン)」の曲と演奏で、このアルバム全体の色調が決定していますよね。このファンキー・オープナーを聴けば、そしてノレれば、アルバムの残りの部分も保障されたも同然です。実際、すばらしく見事なんです。
2曲目「ハンプズ・ハンプ」はゆったりテンポでシンコペイトしながら揺れるビートを持つグルーヴァー。やはりメルヴィン・スパークスのギター・ソロがカッコイイです。また全曲で肝を握っているドラマーはイドリス・ムハンマド。ルーのセッションでは、かの『アリゲイター・ブーガルー』でレオ・モリスとして叩いていたひとですね。ムスリムに改宗して名前が変わりました。
4曲目「ドンキー・ウォーク」は完璧なる「アリゲイター・ブーガルー」系で、たぶんその改作みたいなもんですよね。リズム・パターンはまったくの同一。しかし大きな違いもあって、「ドンキー・ウォーク」では各人のソロのあいだストップ・タイムが多用されていること。リズムが止まっているあいだになにを演奏するかが最大の聴きどころです。ルーがガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」を、トランペットのエド・ウィリアムズが古いブルーズ・ソング「ワイ・ドント・ユー・ドゥー・ライト」を、それぞれ引用。イドリスのはたはたドラミングも快感です。
5曲目「ウェスト・インディアン・ダディ」。曲題どおり西インド諸島の音楽に言及したもので、カリプソ風味が強く感じられます。ジャズ楽曲のなかだとソニー・ロリンズの「セント・トーマス」にそっくりなリズム・パターンと言えましょう。しかもルーのこれはブルーズで、ファンキーでアーシーにくっさいっていう、なんともいえずたまらない心地よさなんですね。
いやあ、ホント、こんなソウル・ジャズこそ大好きです!
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