ジミー・ブラントンは23歳で、クリフォード・ブラウンは25歳で亡くなった
「まだハタチの女性だというのだから、驚かされます」…、って、なんでカタカナなのかもわかりませんけど、もっとわからないのは年齢と音楽的成熟とを結合させるこのかたの発想です。いままでもずっとそうなんですけど、若いけど音楽的に成熟していることに驚き、歳とっているのに音楽が若ければこれまた驚き、ってそんないつもいつも驚いてばかりいるもんだから、事実、実年齢と音楽は無関係であることを裏返しに証明しているようなもんですよ。
音楽の世界で、若くして、そうですねたとえば十代前半ごろで立派な歌を、演奏を、特に歌かな、聴かせるというケースは枚挙にいとまがないじゃないですか。美空ひばりもリトル・エスター(エスター・フィリップス)も鄧麗君もそんな年齢でレコード・デビューしていて、しかも当初から完成されていました。立派な大人の歌を(大人顔負けとかではない)聴かせていたと思うんですね。
楽器奏者でも十代でのデビュー時から円熟していたひとは多いです。ジャズ・トランペット奏者リー・モーガンは18歳でプロ・デビューしています。表題にしましたがデューク・エリントン楽団のベース奏者ジミー・ブラントンも、モダン・ジャズ・トランペッターのクリフォード・ブラウンも若年で成熟。亡くなったときに20代前半だったんですからね。その時点で彼らの演奏は完璧でした。
音楽的感性はしばしば十代で養われ、しかも完成することが多いですし、それは才能や本能といった部分だけでなく、鍛錬がその時期に集中的になされるからでもありましょう。それでメキメキ腕をあげ、歌手として楽器奏者として、二十歳を迎えたといったあたりの年齢でも完成するケースがいままでの音楽史で実に多いことをみなさんご存知のはずです。意地悪なことを言えば、その後は落ちていく一方なんていうひともいますけど。
もちろん生物学的な年齢を重ねるに連れ、音楽も充実度を増していくひとも多いですよね。実人生での経験の積み重ねが音楽にも反映されて、熟成度を増すんですよね。でもそれを音楽の世界における一般法則だなどととらえてはなりません。そういうケースもあればそうじゃないケース、すなわち若くして熟した深みのある音楽を実現できる存在もいるという、それだけのことなんで。
だから若くして熟した才能に出会っても、それでいちいち驚いていてはキリないですよ。歴史が証明しているようにそういう存在は音楽の世界ではわりと一般的ですから、決して例外だとか稀な天才だとかいうわけじゃないです。ごくふつうのことなんで、そういうひともいるんだな、またしても出会ったな、とふつうに受け止めれていればいいだけじゃないでしょうか。
ともあれ、音楽、スポーツ競技、数学。この三分野は十代で大きく花開くことのできるものなんです。そんなケースがあまりにも多いわけなんでごく一般的なことで、だから二十歳なんていったら(アイドル界じゃないけど)もう年寄り、そろそろ引退だと言われちゃいますよ。実際そうなったひとも多いですしね。
« 男歌・女歌(二回目 with わさみん) | トップページ | エディ・パルミエリのフォルティシモ 〜『フル・サークル』 »
「ジェンダー、ルッキズム、エイジズム」カテゴリの記事
- Trust Over 75 〜 後期高齢者ズ(2023.06.06)
- これって女子力?(2023.02.02)
- 恋愛しない人間もいる(2022.10.23)
- 年齢差別(2022.09.30)
- Say It Loud & I’m Proud! 〜 ぼくはパンセク(2022.08.23)
« 男歌・女歌(二回目 with わさみん) | トップページ | エディ・パルミエリのフォルティシモ 〜『フル・サークル』 »
コメント