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2019/06/14

美咲の歌唱技巧

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こないだ6月9日に箕面でわさみん(岩佐美咲ちゃん)と話したのは、歌詞の意味によって発声を自在に変えているよねということでした。その日は箕面温泉スパーガーデンでコンサートが行われて、わさみんは一部、二部あわせて計30曲歌いました。それをじっくり聴き、また以前より抱いている感想をそのときにいっそう確信しましたので、わさみんに話を向けてみたわけなんです。

 

あたりまえみたいなことだし、歌手ならみなさんやっているのがふつうだし、わさみんファンのみなさんもとうにお気づきのことだとは思います。歌詞の意味が明るい前向きのものであるときと、暗いというか陰なしっとり系の意味のことばであるときとで、わさみんの声はかなり違いますよね。

 

それは曲によっての歌い分けというだけではありません。同じ一曲のなかでも歌詞の意味内容が変化するにつれ、声のトーンをわさみんは各種使い分けているんですよね。歌手ならあたりまえといっても、わさみんはかなり微妙繊細な声質変化を実現していて、明るいトーン、しっとりトーンと、しかもどっちも艶があって輝いていますよね。完璧に使い分けるのはなかなかむずかしいことじゃないかと思うんです。

 

歌詞をどう歌ったらいいか、伝わるかを考えて、それをどんな声でどう発声してメロディの変化にもあわせていくかという方法論を実行するということを、最近、わさみんはわさみんなりに確立しつつあるでしょう。ぼくの聴くところ、どうも2018年のソロ・コンサートあたりからじゃないかと。それが2019年に入ってコンサートや歌唱イヴェントなどで深化しているという、そんな印象です。

 

たとえばですよ、大好きな「初酒」のことをとりあげましょう。オリジナル・シングル・ヴァージョンと、2018年、19年コンサート・ヴァージョンとでは、もうぜんぜん別物ですよ。ふだんはぼくも CD で聴いていますから、ときどき DVD(や生歌)で聴くとわさみんの成長にビックリしちゃうんです。もうね、声じたいも一曲全体でまるで違っていますけど、もっとすごいのは一曲のなかのパートパートで声を使い分けているところ。

 

「初酒」は曲そのものが前向きに笑って進んでいこうという人生応援歌みたいな内容なので、孤独や喪失を歌ったものが多いほかのわさみん楽曲とはもとから大きく違っています。だからわさみんも歌いかたをそれにあわせた明るい声のトーンにスイッチしているんですが、この曲でも箇所箇所でこまかく声の色や質を自在にチェンジさせながら歌っているんですよね、最近のわさみんは。発声そのものを変えているんです。

 

「生きてりゃいろいろとぉ〜、つらいこともあるさぁ〜」とふつうに歌いはじめていますが、ここでもうすでに2018年ヴァージョン以後は声が色っぽくなって艶が増しています。大人の女が、落ち込んでいるぼくらにやさしく語りかけてくれているような、そっと寄り添ってくれているような、そばに座って一酌やりながらなぐさめてくれているような、そんな色気が近年は出ていますよね。わさみんはスッとストレートに歌っているだけなのに…、と思わせるところが技巧が真に上達した部分で、実は相当練りこんで歌い込んだ結果なのですよね。意識してわさみんはこんなふうに歌っていますが、なにも意識していないナチュラルさだと感じさせる結果にまで到達しているということです。

 

すごいことですよ、これは。しかも続く「ここらでひとやすみ」の「ひと」を「ひっと」気味に歌い、声もいっそう明るみのあるものに変えてヴォーカル・トーンに軽みを出し、実際、軽い気分でちょっと休もうよ、という歌詞の意味に最大限の説得力を持たせることに成功しているんですね。

 

次の「我慢しなくていいんだ、よ」パートで、ぼくなんかは涙腺が弱いですから、ホロっときちゃうんですね。特に一拍休符を入れた「よ」の声質変化です。「我慢しなくていいんだ」までは強めのリキみ声を張り、おいお前そんなに気を張るな我慢すんなと説得されているような気分にさせておいて、一瞬間をおいた「よ」ではふっと力を抜くんですよね、わさみんは。もう、この「よ」でぼくはダメになっちゃうんです。親や教師がこどもを叱っておいて最後の最後にすっと優しくする一瞬でこどもを落とすでしょ、あれと同じですよ、わさみんのこの声質変幻技巧は。最近のことなんです。CD での「初酒」ではまだふつうですから。

 

わさみんはこういったことを、実にスムースかつナチュラルに実現していますが、なにも考えず自然に歌っているだけだと、聴いた感じそういう印象に仕上がっているのは、実は最高の技巧が凝らされている結果だからということなんですね。ほかの曲でも最近ぼくはそれを感じていましたが、6/9箕面で30曲聴いて確信に至り、終演後にわさみんと話してみて、その反応で、あぁ間違いないとわかりました。本人は工夫を重ね、その工夫とは結果的になにも工夫していない自然体なのだと聴こえるように練りこまれたものだということです。

 

ぼくが言っているのは「初酒」のことだけではありません。ほかの曲でもこういったケースが多々見受けられますので、2018、19年のソロ・コンサート DVD でみなさんも探してみてくださいね。じっくり聴き込めば、わさみんがリスナーに歌を伝えるためにどれほどの技巧を凝らしているか、気づくことができるはずです。

 

また箕面のコンサートや全国各地でやっている歌唱イヴェントなど、生歌でもこういったことは聴きとれるし、生現場ならではのわさみんとの近い距離感で、歌の内容がもっと胸に迫ってきて、小規模で気さくなさりげない親近感のある現場でも、わさみんが歌に本気の工夫を込めていることと、その結果の自然体を獲得していることを理解できると思うんですね。

 

CD を聴き、DVD を観聴きし、生歌現場で聴いて接近し、と三種総合でわさみんを味わってこそ、この歌手の真価と深化もわかろうというものだっていうことです。

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