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2019/07/16

1930年代のニュー・ヨーク・ルンバ(1)

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http://elsurrecords.com/2017/11/25/v-a-invitacion-la-rumba-en-nueva-york/

 

以前1930年代ルンバのパリ編のことを書きました。
https://hisashitoshima.cocolog-nifty.com/blog/2019/02/1-2518.html
https://hisashitoshima.cocolog-nifty.com/blog/2019/02/2-d92a.html

 

これらのなかで「ルンバ」という音楽用語の定義などは書きましたので、ご興味がおありならご一読ください。このときはディスコロヒア盤 CD 二枚組『ルンバの神話(パリ篇)』の話題だったんですが、もちろんニュー・ヨーク篇があります。のばしのばしにしていたそれのことを、また二回にわけて書いてみようと思うんですね。パリ篇の音源がすべてパリ録音だったのに対し、ニュー・ヨーク篇ではもちろん全編ニュー・ヨーク録音。なんたってキューバ革命前のラテン音楽のメッカはニュー・ヨークでしたからね。

 

ディスコロヒア盤『ルンバの神話(改訂版、ニューヨーク篇』(Invitacion A La Rumba En Nueva York)の CD1は、大きく言ってドン・アスピアス楽団とクァルテート・マチーンの録音が多数を占めています。簡単にメモしておきましょう。

 

ドン・アスピアス楽団によるこのアルバム1曲目が「南京豆売り」なのはわかりやすいですよね。この楽団によるこの曲の大ヒットこそ、1930年代ルンバ最大の象徴ですからね。ニュー・ヨーク録音のこれが売れたことで、アメリカ合衆国の音楽家であるルイ・アームストロングやデューク・エリントンといった大物も即座にカヴァーしたのはご存知のとおり。そのほかこの「南京豆売り」をやったひとは数知れず。とにかく多いです。

 

アルバムを聴いていきますと、ぜんぶで九つ収録されているドン・アスピアス楽団の曲に激しく快活なものは少なくて、やや落ち着いた中庸なものが多いというのが最大の印象です。そのあたりはいかにもカリブ、キューバの音楽だなと思うんですけど、ソンのギア部に相通ずるものだって感じるんですね、おだやかなメロディ重視の方向性には。

 

それでも4曲目の「ヴードゥー」はかなり躍動的。コンガ(音楽の種類としての)っぽい感じもします。聴いているとウキウキ気分が沸き立って、こりゃ楽しい。こういった音楽のことが本当に大好きなんです。ぼくのなかではこの曲が、このアルバムにおけるアスピアス楽団の収録曲 No.1。

 

ところで、ニュー・ヨーク・ルンバは1930年にレコード録音がはじまりますが、ご存知のとおり29年以来の大不況のさなか。だから、実はバンド編成も少人数のばあいが多かったみたいで、それでもなお歌とダンスという二大要素を不足なく満たせるようにいうことで、カルテット(四人編成)程度のバンドがかなりあった模様。その代表格がアルバム12〜16曲目にあるクァルテート・マチーンです。

 

クァルテート・マチーンは、というかそのほかのルンバ・カルテットもたぶん、ギター二台、パーカッション(多くはクラベス)、トランペットという編成でした。たった四人でもやっぱりトランペットが欠かせないのがいかにもキューバ音楽的です。クァルテート・マチーンも哀愁のあるラテン・メロディ、つまりソンのギア部みたいなものを歌っていることが多いみたいです。

 

アルバム一枚目終盤には、キューバではなくプエルト・リコやコロンビアのバンドも収録されています。このへんはいかにもニュー・ヨークっぽいところ。パリ篇にはちっともありませんでした。ニュー・ヨークのイースト・ハーレムにはプエルト・リコ人たちなどが多く住み、通称スパニッシュ・ハーレムと呼ばれたのです。

 

ラテン的デリカシーから遠いかもしれないですけど、ぼくの好みからしたら、二曲収録のコロンビアのバンド、ナノ・ロドリーゴ楽団の音楽が楽しいです。荒っぽいというか雑なんですけど、ロック・ミュージックっぽいし、かなりのエネルギーを感じる躍動感で、こういった熱はその後のマンボやサルサなどのニュー・ヨーク・ラテンへつながっていったものだったかもしれないとも思います。そのほか、プエルト・リコの大作曲家ラファエル・エルナンデスの楽団自身による「カチータ」も一枚目ラストにあります。

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