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2019/07/15

チュー・ベリーの魅力

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https://www.amazon.co.jp//dp/B00GXEXYZU/

 

ご覧のように猫ジャケであるエピック・イン・ジャズのシリーズの、一枚『チュー』。テナー・サックス奏者チュー・ベリーに焦点を当てた編集盤です。いままでも書いていますがくりかえしますと、エピック・イン・ジャズのシリーズはどれも録音は第二次世界大戦前の SP 時代のもの。それを戦後、LP 盤にまとめて再録しているものなのです。LP はエピック盤ですから、もちろん音源はすべてコロンビア系のレーベル原盤。

 

さて、スウィング・ジャズ黄金期の No.1 テナー・サックス奏者とされ多忙だったチュー・ベリー。しかしどうしてコールマン・ホーキンスじゃないのかといいますと、肝心な時期にホークはアメリカを離れヨーロッパで活動していたからなんですね。1934年末から39年までの話です。ちょうどスウィング・ジャズ勃興〜黄金期じゃないですか。しかもですよ、ジャズ・ミュージックにおいてテナー・サックスが大きな注目を浴びるようになったのとも時期的に一致するんですよ。あぁ、なんということでしょう。

 

いや、ホークはすでに影響力絶大でありましたし、帰国後に名声を再確立しました。ともあれ彼の不在期にアメリカでテナー・サックスがジャズの主要楽器として注目されるようになって以後、この楽器で大活躍したのが、ベン・ウェブスター、レスター・ヤング、そしてレオン・チュー・ベリーの三人だったんですね。

 

チュー・ベリーの生涯最高名演は、たぶんライオネル・ハンプトンのヴィクター・セッションで吹いた「スウィートハーツ・オン・パレード」(1939)でありましょう。ヴィクターへの吹き込みですから、コロンビア系であるエピック盤『チュー』には収録できません。ですけれど、せっかくチューの話題なんですから、会社のしがらみなどないこの個人ブログ、その演奏をご紹介しておきましょう。
https://www.youtube.com/watch?v=tG4udzyZpeY

 

どうです、このテナー・サックス・ブロウの豪快さといったら。これを聴けば、チューがスウィング期のテナー No.1と言われたのも当然だとわかりますよね。ヴォーカルはボスのハンプです。チューのテナーはソロ部だけじゃなく演奏開始から終了までずっと吹き続けていて、いわば一曲全体をテナー・ソロでラッピングしていますよね。ハンプの指示だったと思いますが、ここまでできる流暢さは驚異です。いやあ、なんてすばらしいテナーでしょうか。

 

この演奏をお聴きになってもおわかりのように、チューのテナー・サウンドは丸いです。影響源のホークのような硬さはないですよね。ホークのあの音はきれいに抜けているからなんですけど、チューはチューでこの独特の丸みを帯びたやわらかい音色でみんなを魅了したんです。またフレイジングはなめらかで、ここもときどき飛躍するホーク(やレスター)とは大きく違います。さらさらと流れるようなスムースさがありますよね。だから聴きやすいんですよね。歌心も満点ですし。

 

そんなチュー・ベリーのエピック盤『チュー』は、1〜7曲目までがチュー名義のコンボ・セッションから。8曲目「ウォーミング・アップ」はテディ・ウィルスンのブランズウィック・セッションからのもの。9曲目以後は(チューが所属していた)キャブ・キャロウェイ楽団の録音です。同楽団でのラスト五曲は、若き日のディジー・ガレスピーがロイ・エルドリッジの影響を聴かせたりするのも興味深いところ。

 

アルバム終盤のそれら五曲のうちでも、最後の三曲(1940、41年録音)は、とりわけキャブ楽団がチューのテナーにフォーカスした演奏内容で、彼の持ち味もよくわかる名演です。「ゴースト・オヴ・ア・チャンス」「ロンサム・ナイツ」「テイク・ジ・"A"・トレイン」。ご紹介しておきましょう。

 

「ゴースト・オヴ・ア・チャンス」https://www.youtube.com/watch?v=GzHCpklaEdM
「ロンサム・ナイツ」https://www.youtube.com/watch?v=a6-7JBwMKdw
「テイク・ジ・"A"・トレイン」https://www.youtube.com/watch?v=geeChTEC3hE

 

特に最初のバラードふたつが絶品ですよね。チューのテナー吹奏の魅力がよくわかるものだと思います。まずはテーマ・メロディをうまくフェイクしながらなめらかに演奏し、その後徐々にそのヴァリエイションを歌うがごとく朗々と吹き続ける暖かみのあるサウンドに感心します。バラードと言いましがが、正確には二曲ともやや違って、孤独やさびしさを扱った内容です。それをここまで真に迫って演奏できるチューの才能のすばらしさ。決して絶望や諦観ではなく、ハート・ウォーミングな心情を感じさせるのがこのテナー・マンの魅力ですね。

 

これら三曲では、上でも書きましたがブレイク前のディジー・ガレスピーがトランペットを吹いています。「ロンサム・ナイツ」「テイク・ジ・"A"・トレイン」で聴けるミューティッド・ソロがディジーなので、短いですが耳を傾けてみてください。まだビ・バッパーといえるだけのスタイルを確立していませんが、ちょっとおもしろいんじゃないでしょうか。

 

チュー・ベリーは、これら三曲より前に収録されているもの(1937、38年録音)でも、ソロ時間は短いながら立派に自己の表現をはたしているなとわかる立派な演奏です。もっとも、チューは自己名義のバンドを率いたことがなく、自身名義のレコードだってそのときだけの臨時編成で名義だけチューになっているというもの。しかも総数がかなり少ないのです。音楽生涯のほぼすべてをほかの偉大なリーダーのバンドの一員として過ごしました。といってもキャブ・キャロウェイ楽団在籍中の1941年にわずか31歳で亡くなってしまったんですけどね。

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