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2019/08/10

ライ・クーダーの、これはテックス・メックス・ライヴかな

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https://open.spotify.com/album/7fygV5lqrItwH3YU0T50nK?si=nR1DgrfbSXKGzMGSdKsSgg

 

2013年にノンサッチから CD がリリースされたときに買ったライ・クーダー&コーリドス・ファモーソスの2011年ライヴ。Spotify にあるのだと『ライヴ・イン・サン・フランシスコ』となっていますけど、現物には Live としか書いてないですね。でもたしかにサン・フランシスコのザ・グレイト・アメリカン・ミュージック・ホールでの2011年8月31日と9月1日の実況録音。

 

ライのこの2011年サン・フランシスコ・ライヴは、テックス・メックス作品と呼んでいいんじゃないかと思います。最初、幕開け数曲はルーツ・ロック色が濃いですけど、5曲目、ウディ・ガスリーの「ド・レ・ミ」あたりから完璧なるラテン、というかメキシカン・ミュージック・ワールドが展開され、その中心にフラーコ・ヒメネスのアコーディオン・サウンドがあるんですね。

 

だいたいこのアルバム・ジャケットが完全にメキシカンじゃないですか。バンド名が Corridos Famosos で、バックのブラス・バンド名も La Banda Juvenil なんだから、プロデュースもやっているライ自身、テックス・メックス/ラテン音楽のライヴ・アルバムを企画したというのは間違いないと思いますよ。

 

テックス・メックス路線をとる5曲目「ド・レ・ミ」以前にも伏線は引かれています。最大のものは、たぶん3曲目「ブーマーズ・ストーリー」ですね。そう、ライ最大の代表曲のひとつである過去曲ですよね。流れ者、ホーボーの物語をテーマにしたこの曲を前半部に置いているのは、テックス・メックス・バンド、コーリドス・ファモーソス(有名な無法者たち?)の登場を告げるものになっているんですね。

 

それにしても、フラーコがこんなふうにアコーディオンを弾く「ド・レ・ミ」を聴いていると、ウディ・ガスリーのオリジナルがどんなのだったか思い出せないほど。この曲以後フラーコはアルバムの最後までほぼすべての曲で大きくフィーチャーされていて、このコーリドス・ファモーソスの中心となって活躍し、アルバムの音楽を大きく特徴付けています。CD パッケージ内側に集合写真が載っていますけど、真ん中がフラーコで、向かってその右となりにライが座っているのも、このバンドと音楽をよく物語るっているでしょうね。

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6曲目の「スクール・イズ・アウト」が終わると、ライの紹介で次の曲ではテリー・エヴァンズとアーノルド・マッカラーの二名の歌をフィーチャーするとなっていて、次いでテリーがその曲紹介をやって、かのチップ・モーマン&ダン・ペンの「ダーク・エンド・オヴ・ザ・ストリート」がはじまります。ここでもフラーコのアコーディオンが目立っていて、まるでメキシカン・サザン・ソウル。あ、アメリカ合衆国南部はメキシコと隣り合わせなんでした。『ブーマーズ・ストーリー』にあるライによるこの曲の初カヴァー(1972)は歌なしのギター・インストルメンタルでしたが、ここでは艶のあるヴォーカル入りで、大きく様変わりしています。

 

続く8曲目がこのライヴ・アルバムの目玉でしょうね。ライいわく新曲だそうで、その名も「エル・コーリド・デ・ジェシー・ジェイムズ」(ならず者ジェシー・ジェイムズ)。銀行強盗などをはたらいた実在のアウトロー、ジェシー・ジェイムズに題材をとった曲ですね。このライヴのときのバンド名をコーリドス・ファモーソスとしているのと関連しますし、3曲目の「ブーマーズ・ストーリー」からの流れはここへ来ています。

 

曲「エル・コーリド・デ・ジェシー・ジェイムズ」ではふたたびライがリード・ヴォーカルをとっていますが、バンドのビートはいかにもな典型的メキシカン・ビートの三拍子。曲想、曲調、和声、サウンドなどとともに、どこをどうとってもメキシカン・ナンバーです。フラーコのアコーディオンは当然のように大活躍。後半、ラ・バンダ・フーベニールが派手に乱入し、ブラス・バンドのビッグ・サウンドで曲を飾るさまは壮観ですね。

 

一曲はさんで10曲目の「ボルベール、ボルベール」は全編スペイン語で歌われますが(そういうのはアルバム中これだけ)、そのヴォーカルを女性歌手ジュリエット・コマジェールがとっています(このライのアルバムでベースを弾いているのがジュリエットの弟ロバート・フランシス)。ロス・アンジェルスに拠点を置くシンガー・ソングライターですね。曲はビンセンテ・フェルナンデスや、それからなんといってもわれらがロス・ロボスも歌った、メキシカン・ランチェーラです。6/8拍子のリズムで、当然のようにフラーコのアコーディオンもラ・バンダ・フーベニールも大活躍。いやあ、楽しい。

 

その後のラスト二曲はアンコール的な位置付けかなと思いますが、最後の「グッドナイト・アイリーン」は、ライの超絶大名盤『チキン・スキン・ミュージック』の末尾を飾っていた有名曲ですよね。やはりフラーコがアコーディオンを弾いていました。ライとフラーコの音楽親交はあれ以来ずっと続いているわけです。あのアルバムもテックス・メックス音楽を大きくとりいれた作品でした。

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