大好き、イリーン・ジュウェル! 〜『ジプシー』
https://open.spotify.com/album/3XjRVqf066pbYdBUgHEMdH?si=V_mYeUjSRFqPmKKHKu9Phg
萩原健太さんに教わりました。
https://kenta45rpm.com/2019/08/21/gypsy-eilen-jewell-signature-sounds/
出だしイントロのドラムスに続きエレキ・ギターが弾きだすのはいかにもロックンロールというブギ・ウギのパターン。それを聴いただけで、あっ好きっ!って思っちゃうイリーン・ジュウェルの最新作『ジプシー』(2019.8.16)。イリーンは声がこれなんで(つまりキュートでアンニュイ)、みんなあんまり真剣に相手しないかもですけど、なかなかいいシンガー・ソングライターじゃないですか。
書きましたように1曲目「クロール」はシンプルなロックンロールなんですけど、色っぽいフィドルがするりとからんでいるのがイリーンの音楽らしいところですね。フィドルとかスティール・ギターとかマンドリンとか、全体的にアメリカーナっぽいフォークロア系の楽器がたくさん使われているのもこの新作の大きな特色です。カントリー・ポップみたいな趣が強いんですけど、それはロックンロールな「クロール」でもはっきり表れていますよね。黒いリズム&ブルーズ色がまったくないわけですから。
本当にアルバム1曲目の「クロール」だけで聴き手をトリコにするチャームをふりまいていると思うイリーン・ジュウェルの『ジプシー』。カントリー・ポップ側からロックに寄せてきているものや、ホンキー・トンクなスウィンガーなどがマジ魅力的ですよねえ。やっぱり1曲目「クロール」がその代表で、ほかには3曲目「ユー・ケアード・イナフ・トゥ・ライ」(はあまりロックじゃないけど)、5「ビート・ザ・ドラム」(ラテン調のニュアンスあり)、7「ジーズ・ブルーズ」、8「ワーキング・ハード・フォー・ヨー・ラヴ」あたりがそうですかね。
これら以外も魅力満載なイリーンで、ちょっぴりシビアで社会派ふうな歌詞もあったり(女性やマイノリティの差別を告発した4「79 センツ」、5「ビート・ザ・ドラム」)しますけど、音楽の衣はあくまで聴きやすいアメリカーナふうのポップ/ロックですね。ちょうどボブ・ディランに似ているなとぼくは感じます。ディランをそのまま21世紀の若い女性にしたらイリーンみたいなシンガー・ソングライターになるんじゃないですかね。
アルバム・タイトルになっている7曲目「ジプシー」は(曲題どおりややエキゾティックで)ドリーミーなバラードで、またちょっとルイジアナっぽい三連のスワンピーなロッカバラード10「ウィットネス」もチャーミング。イリーンのアルバム『ジプシー』は、歌詞でけっこうグサリと刺しながらもサウンドやリズムはキャッチーだし明快。しかもカントリー・ポップであるっていう、そっち側からブルーズやロックに接近しているっていう、いかにも2010年代後半的なコンテンポラリー・アメリカン・ミュージックです。
(written 2019.8.23)
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