アクースティック・ギターのキレるライの1977年ハンブルク・ライヴ
https://www.youtube.com/watch?v=C-9R6A05e3s
なんだかよくわからない会社から発売されているライ・クーダー1977年のハンブルク・ライヴの CD / DVD。バンド名がライ・クーダー&ザ・チキン・スキン・バンドとなっていますけど、この名前でツアーしたのか、それとも CD リリースに際し勝手に命名されただけか、ちょっとわかりません。いずれにせよ前年にスタジオ録音による大傑作『チキン・スキン・ミュージック』がありますので、それにあやかったものですね。
実際『ライヴ・イン・ハンブルク 1977』のバンドも、フラーコ・ヒメネスら『チキン・スキン・ミュージック』でのそれをだいたいそのまま起用したものですし、CD 収録の曲目も似た感じなんですね。知らない会社から発売されていて、権利関係もあやしいですけど、これはたぶん当時のテレビ放送用音源を流用したものですね。DVD も発売されているのはそれがソースでしょう。
細かいことはいいとして、ライの『ライヴ・イン・ハンブルク 1977』、音楽の内容はかなりいいです。ライのライヴ・アルバムのなかでも上等の出来に入るかもしれないですねえ。1977年のツアーですから、ライ自身最も充実していたし、充実するのが当然だったというべきでしょうか。フラーコのアコーディオンも斬れ味鋭く切れ込んできます。
まずは『チキン・スキン・ミュージック』でもやっていた「スタンド・バイ・ミー」をそのままのスタイルで披露。その流れで3曲目のおなじみ「ダーク・エンド・オヴ・ザ・ストリート」まで行きますが、その「ダーク・エンド」は、でもなんだかよくわからない内容です。前半はライらしいギター・インストルメンタルで、『ブーマーズ・ストーリー』(1972)でやっていたとおりだなと思っていたら、後半はヴォーカルが出ます。
しかしそのヴォーカルがあまりちゃんと聴こえないので「なんだかよくわからない」という印象になってしまうんですよね。録音状態のせいかミキシングかマスタリングかわかりませんが、当日の会場ではたぶんこんなことはなかったのでは。ヴォーカル隊はテリー・エヴァンズら三名のコーラス。「ダーク・エンド・オヴ・ザ・ストリート」後半でもその合唱でこなしていると思うんですけど。
でもその次の4〜7曲目の、ライのアクースティック・ギター弾き語りセクションがなかなかの聴きものなんですね。トラッド・フォークとかブルーズとか、ゴスペルみたいなものもあったり、オールド・タイム・ミュージックふうだったりもします。ギターのサウンドがキレていて、かなり内容がいいなと思います。7曲目の「レット・ユア・ライト・シャイン・オン・ミー」でコーラス隊が入る以外は、完全にライひとりでの弾き語りです。
このアクースティック・ギター弾き語りコーナーがかなり聴かせるものなので、だからそこにこのハンブルク・ライヴの価値があるんだと思うんですね。1977年だからライのギター演奏の腕前には1ミリの疑いもありません。いやあ、見事。うまいのひとことで、降参するしかない凄腕です。何気なくパラパラっとはじいているときですら、音色がキレまくっていますよねえ。
そのアクースティック・ギター・セクションが終わると、ライはふたたびエレキ・ギターを持ち、フラーコらバンドも戻ってきて、ライ言うところのポルカ・タイムに入ります。それがおなじみ「ド・レ・ミ」。そうか、こういうのはポルカといえばいいんですね。それもテックス・メックス・ポルカだと言えましょう。そのままこれもおなじみ「グッドナイト・アイリーン」に入り、ラストはメキシカン・ランチェーラ「ボルベール、ボルベール」で締めとなります。
(written 2019.8.30)
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