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2019/09/15

カラオケの出現

Img_0228

https://twitter.com/pitchfork/status/1148849358059843584

 

いまやすっかり世界で通じる国際語のカラオケ(Karaoke、カラオキ)。ピッチフォークのこの記事では、日本でこれが初登場したのが1971年だったとなっていますが、これは意外でした。もっと遅かったと思っていましたから。実際、ぼくがカラオケ装置というものに出会ったのは1982年に大学院に進学してからで、当時、カラオケ・バーみたいな場所に誘われてついていって歌ったというのが初体験でした。

 

いまでも鮮明に憶えていますが、当時、修士課程一年生のとき、東京都立大学大学院英文学課程の同級生中野くん(専門はシェイクスピア)に誘われて、院生数人で自由が丘のカラオケ・バーに行ったのです。東横線で都立大学駅の隣ですからね。これが人生初のカラオケ体験。中野くんは飲むのが好きなやつで、ぼくは下戸だけどみんなで楽しく騒ぐのは好きだから、八雲での大学院の授業が終わったあと、いっしょによく遊んでいました。

 

そのときぼくがなにを歌ったか、うまい歌だったのか、なんてことはどうでもいいです。上掲ピッチフォークの記事でカラオケを1971年の項に位置付けているのは、記事中にもありますように、井上大佑の主張をくんでのものですね。しかしカラオケを井上の発明としてしまうのはちょっとどうかとぼくは思います。生演奏による伴奏をぜんぶの機会で実行するのはかなり大変だからあらかじめ録音しておいてそのテープを…、という発想はもっと前からあったでしょうし、実行もされてきていたでしょう。

 

歌手や音楽家ではないぼくたち一般庶民がストレス発散の娯楽としてカラオケ(バーやボックス)で歌うという装置の登場が1971年と言われたら、最初に書きましたように意外なほど早かったんだなと感じますが、プロ音楽現場では、たとえばバック・バンドの演奏だけ先に完成させておいて、リード・ヴォーカルをあとから吹き込むという手法は、1960年代後半には一般的でしたからねえ。そんなのはいわゆるカラオケじゃないよ、と言われそうですけど、同じことです。そんな種類の発想からいわゆるカラオケが誕生したのは間違いありませんから。

 

マイナスワンということばをご存知のかたもいらっしゃるでしょう。たぶん歌というより楽器演奏練習法のひとつとしてあるものですが、曲の完成品から1パートだけ削除したもののことです。お目当の楽器の音だけ抜いたそれを聴きながら、その伴奏にあわせて自分の楽器を演奏して練習するんです。いつごろからあるのかなあ〜、もう死語だと思うんですけど、いわゆるカラオケの登場と相前後するのではないかと思うんです。ジャズの世界で使われることばなんですかね〜、マイナスワンって。よくわかっていません。

 

歌ということに話を限定すると、レコード収録などのスタジオ、あるいはラジオ放送、テレビ放送などで、完成品の録音済み伴奏を流して、歌手はそれを聴きながら現場で歌うという手法は1960年代からあったんじゃないかと推測します。娯楽目的の一般のファン向けにも、マイク入力つきの8トラ・ミュージック・ボックスや伴奏用ミュージック・テープなどが、いわゆるカラオケ普及前から存在したみたいですよね。

 

ですけれども、いわゆるとくりかえしておりますように、みんなが知っているあのカラオケ装置の爆発的普及以前と以後とで、ぼくたち一般のファンがふだん歌を歌って享楽のひとときを過ごすという体験が根本的に変化したのは間違いありませんよね。それがぼくの実感だと1980年代初頭ごろからだったんですけど、実際にはもっと早かったんでしょうね。

 

一般にカラオケは演歌やそれに近い歌謡曲分野を中心に、まずは普及していったと思うんですが、それらの分野、特に演歌かな、ある時期以後はシングル CD を発売する際にも、メインの歌とカップリング曲のあとに、カラオケ・トラックを収録してあるのが一般化していますよね。大好きな岩佐美咲ちゃん(わさみん)も例外ではありません。

 

わさみんのシングル CD に入っているカラオケ・トラックのばあい、しかしぼくたちファンの娯楽用というだけではない目的があるかもしれないです。歌唱イベントやコンサートでのわさみんは、基本、カラオケ伴奏で歌っているからです。CD 収録のものを(短縮編集したりもして)使っているのではないでしょうか。そんな気がします。

 

ほぼ毎週末ごとに全国各地で行われているわさみん歌唱イベントでは、その現場その現場の音響スタッフさんがオケをコントロールして流すわけですから、どこで歌唱イベントやるかによってその担当者はかわります。だからその際、どなたが担当なさろうとも同じオケが流れるようにしておくのは、わりと大切なことなんじゃないかと思えるんですね。

 

わさみんだけでなく演歌系の歌手のみなさんはどんどん各地でイベントをやり、ショッピングモールのなかの広場や、レコード・CD ショップなどのイベント・スペースなどで歌っているのが通例だと思いますが(いわゆる地方営業)、そんな歌手のみなさんも、たぶんですけど、わさみんみたいにシングル CD 収録の作成済みのカラオケ伴奏を流して、それにあわせて歌っているんじゃないかという気がするんですね。

 

いわゆるカラオケ装置って、最初は一般のリスナー、音楽ファンの日常の娯楽に供するために開発・提供されたものに違いありません。もちろん上で書きましたようにその起源は、プロ歌手が、ある時期以後は完成済みの伴奏をスタジオで聴きながらレコード収録などやるようになっていたことにあるとは思いますが、現在のいわゆるカラオケは、ファンのためのものです。

 

それが、わさみんや演歌系のみなさんなど、最近はプロ歌手でも現場で使うようになっているというのはなかなかおもしろい現象ですよね。もちろん、プロ歌手の歌唱現場での伴奏がカラオケでいいのか?!という疑問というか不満を表するかたは一定数いらっしゃるようですね。理解はできる気持ちなんですけど、たとえばわさみんも機会を捉えて生バンド演奏で歌ってはいるんですよね。

 

それにですね、どんなに立派なプロ歌手だって、レコードや CD 収録などの際に生バンドとの一発同時演唱でやる、やれる、というかたが、はたしてどれほどいらっしゃるのでしょうか?ずいぶん前に、生前の美空ひばりさんが原信夫さんのシャープス&フラッツを従えて、一発同時演唱でレコード収録をしていらしたと、読みました。

 

そんなのは伴奏者の側にもたいへんに高い緊張が要求されるんですね。前で歌う歌手が完璧な歌を聴かせている真っ最中に、もしミス・トーンでも出したらすべてがオジャンですからね。またぜんぶいちからやり直しとなります。歌うほうも伴奏するほうも、かなり神経すり減らすのではないでしょうか。完成品の精度・練度を簡便に上げるという意味では、伴奏トラックだけを先に完成させておいて、スターである歌手はあとから、そのカラオケを聴きながら歌入れする、これがある時期以後は一般化したはずですし、いまはほぼ全員がこのやりかたで行っていると思いますよ。

 

(written 2019.7.27)

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