野太い真性アフロビート・ジャズ 〜 マイケル・ヴィール
https://music.apple.com/jp/album/vol-two/1445521828?l=en
Astral さんに教えていただきました。
https://astral-clave.blog.so-net.ne.jp/2019-08-12
イエール大学で教鞭をとる音楽学者、マイケル・ヴィール。フェラ・クティやアフロビート研究の世界的権威らしいんですが、もうひとつの顔がミュージシャンということで、担当楽器はエレキ・ベースです。やっている音楽もド直球なアフロビート。しかもジャズ・フュージョンふうにアダプトしたとかいうんじゃなく、もろそのまんまなフェラ・クティ仕様のアフロビートをやって、それをジャズに展開しているっていう、そういう音楽家です。
そんなマイケル・ヴィール&アクア・イフェの最新作が『Vol. Two』(2018)。これがすごいんですよね。重たくずっしりくる正統派、王道のアフロビートで、なおかつそのままジャズをやっています。こういうのはアフロビート・ジャズっていうんでしょうか、ジャズ・ミュージシャン、DJ、プロデューサーたちのあいだでもアフロビートは人気で、どんどん取り入れ横断されていますが、このマイケル・ヴィールのやりかたはひとあじもふたあじも違います。
さすがはフェラ・クティ研究家だけあるっていう、野太い剛球ストレートなアフロビートを展開していて、それはリズム・パターンだけ拝借した(とかいうものは多いし、ぼくは決して嫌いじゃないというか大好き)んじゃありません、バンド・アンサンブルまるごとがフェラ・クティ・マナーなんですね。これはアフロビートが先かジャズが先かわからないっていうような、完璧な一本化じゃないでしょうか。
そのへんとてもよくわかるのが4曲目の「スーパー・ノーヴァ」です。そう、ウェイン・ショーターのあの曲ですね。ここでのマイケル・ヴィール・ヴァージョンだと、まずソプラノ・サックス・ソロがあって、そのあとにホーン・アンサンブルでかの有名テーマが演奏されます。そこを聴いてほしいんですけど、フリーなアヴァンギャルド風味だったウェインのあれが、完璧なアフロビート・アンサンブルに変貌しているじゃないですか。
しかも「スーパー・ノーヴァ」でも、この野太いグルーヴに貫かれています。リズム・セクションが、といった次元ではなく、バンド全体の出すサウンドにゴッツイ感じがありますよねえ。これ、もともとはジャズ・ナンバーだったんですからねえ。いやあ、ここまでのアフロビート仕様なジャズが仕上がるなんて、マイケル・ヴィール、すごいなあ。「スーパー・ノーヴァ」だけでなく、収録曲はどれも熱くごりごりハードなグルーヴをしていますよね。決してシャープじゃない(いい意味で)。
ヴォーカルはいっさいなしのマイケル・ヴィール『Vol. Two』。上に乗るサックスなどの管楽器ソロもたいして意味を持っていないようにぼくには思え、なんたって聴きどころはこのバンド・トータルでのグルーヴの野太さにあると思います。やっぱりアフロビートって聴くのにちょっと気合がいるなというのはこのアルバムでも変わらない印象なんですけど、準備万端で聴けば最高のジャズ作品のひとつが登場しました。ぶっといグルーヴに身をひたしたい気分のときはこれ以上ないアルバムです。
(written 2019.8.17)
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