さわやかな、マリア・テレーザ
https://open.spotify.com/playlist/5wO6v4Dd1nxK6OnvjtBNmR?si=pPSPzEv5RlKNmX0ooDEolw
http://elsurrecords.com/2019/03/01/maria-teresa-de-noronha-integral/
https://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2019-01-27
今2019年の、初春ごろ、いやまだ冬だったか、日本でもふつうに買えるようになったマリア・テレーザ・デ・ノローニャ(ポルトガル)の全集ボックス。そのうち最後の DVD を除いた CD 収録分はもちろん残さず Spotify で聴けますので、一個にまとめたプレイリスト(上掲、全六時間半)をふだんから BGM にしてずっと楽しんできています。だから、そろそろこのへんでちょっとした感想メモを手短に記しておきたいと思うんですね。
それは簡単に言って、マリア・テレーザの歌はさわやかで口あたりがよく、スムースでナチュラルだなっていうことです。重くない。同じファド歌手で同世代だとやっぱりアマリア・ロドリゲスが圧倒的な存在だと思いますが、アマリアにある濃厚さ、激しさ、情緒表現の過剰さ、重さは、もちろんそれがアマリアの魅力なんですけど、マリア・テレーザには薄いですよね。
薄いっていうのは悪いことじゃなくて、マリア・テレーザの全集を聴いていて感じるのは、清廉さですよ。しかもなんだかちょっとキラキラしていて明るいっていうか、さわやかで心地いいような、そんな声と歌じゃないでしょうか。特にメイジャー・キーの曲だと。伴奏サウンドはアマリアと同じような典型的なファドのそれですから、違いは主役歌手のヴォーカル資質です。
マリア・テレーザのファドでは、ときおり地中海の、あ、いや大西洋か、の青さを連想させるような、その上に青い空がひろがっているような明るさもあるっていうか、そんなさわやかなサッパリしたフィーリングが聴けますよね。(悪い意味でなく)軽い。そして濃すぎずやわらかい。こういったことがマリア・テレーザのファド全集を聴いていて感じる最大の要素です。
だから、何時間続けて聴いても、マリア・テレーザのファドは疲れないです。どんどん聴いて、いいなあ〜っていう心地よさを感じて、部屋のなかでおだやかな気分でゆっくりすわっていられます。心にさざ波が立たないっていうか、ときには立ったほうが刺激的でいい音楽作品ってことになるかもですけど、ふだんの愛聴盤としては薄味でサッパリさわやかなほうがいいですよね。
マリア・テレーザのファドは普段着姿の大人の女性っていう感じで、決して飾りすぎず、派手でけばけばしくなく、ヴォーカルにおける感情の表出もストレートで素直で、ナイーヴに感じることすらあります。豪放さはなく繊細ですし、いま2019年にオススメできるファド黄金期の歌手を選ぶならば、ナチュラルでなめらかなマリア・テレーザじゃないですかね。現代のフィーリングにフィットするような気がします。
それでもファドですから、哀切に満ちてはいるんですけどね。マリア・テレーザのばあいは、その哀切がひとびとの日常の生活感覚に根ざしたものだっていう気がするんです。
ただまあ全集となると DVD ふくめ全七枚とサイズも大きく、エル・スールで12800円と高価でもあるので、これからむかしの(黄金期の)ファド歌手をちょっと聴いてみたいんだけど…、という向きにそのままではオススメしにくいような気がしないでもないです。ですから Spotify とか活用なさっているかたならばそちらで聴けますので、ちょっと覗いてみてください。フィジカル派には、CD で二枚組程度のベスト盤みたいなのがあったら喜ばれるのになあ〜って思います。
(written 2019.8.26)
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