ガブリエル・グロッシの最新ライヴ盤がいいね
https://open.spotify.com/album/1IGs9QujlA2FedF4C8jDhY?si=H5xaH1wORcSG4SUMCltIaA
https://gabrielgrossi.bandcamp.com/album/motion
きれいなジャケットですねえ、ガブリエル・グロッシの最新アルバム『#モーション(ライヴ)』(2019.6.28)。ガブリエルはブラジルのクロマティック・ハーモニカ奏者。アルバムはライヴ収録で、編成は自身のハーモニカ以外、トロンボーン、ピアノ、コントラバス、ドラムスのクインテット。ほか若干のゲスト参加がある曲もふくまれています。全体的にはジャズ寄りの作品と言えるでしょう。
しかしこの『#モーション(ライヴ)』、2019年リリースの UK 盤なんですけど、今年の作品じゃないんだろうと思います。というのも bunboni さんが昨年ブログでとりあげていらっしゃったガブリエルの2018年盤『#Em Movimento - Ao Vivo』が同じジャケットで、読むかぎり内容も同じだとしか思えないからです。ということは2017年のライヴ収録ですね。
https://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2018-09-17
だから、今年になって UK リリースの再発盤ということでアルバム題も(ほぼ変わらない意味の)英語にして出しなおしただけのものじゃないですかねえ。そのへんちゃんとした事情がぼくにはわかりませんが、とにかく2019年のついこないだ八月にディスクユニオンが新リリース品として宣伝していたツイートを読み、去年のことをすっかり忘れていた(買わなかったから)ぼくは喜んで聴いて、つまりひっかかって、こりゃあいい!といまごろ思っちゃったんで、せっかくだからちょっこっと書いておいてもいいでしょ〜。
ガブリエルの『#モーション(ライヴ)』、全体的にはやはりジャズ・ハーモニカ作品ですけど、なかにはサルサっぽい展開を聴かせるものや、ショーロ寄りかなと判断できるような演奏もあります。サルサっぽいとは、エルメート・パスコアールが参加している5曲目「ラテン・ブラザーズ」のこと。特にエルメートがなにやら叫んでいるパートが終わったあと、ピアノのエドゥアルド・ファリアスがサルサ・スタイルの弾きかたをしていますよね。
もっといいなと思うのがアルバムの後半ですね。7曲目の「エンブレイシング・エイニョルン」以後。ここからラストまではマウリシオ・エイニョルンへのトリビュート・セクションになっていて、そして実際、終盤にはマウリシオ本人もゲスト参加しているんですね。マウリシオはクロマティック・ハーモニカ界におけるガブリエルの大先輩です。もう80代なかばを越す年齢じゃありませんでしたっけ。
トリビュート・セクション1曲目の「エンブレイシング・エイニョルン」もやさしくあたたかい手ざわりで曲題どおりの演奏で、とってもいいですよねえ。トロンボーンも地味に効いていますし、なにより曲想とハーモニカ&トロンボーンの演奏するこの独特の哀感こもる情緒、これこそサウダージですよ。ジャズであるとはいえブラジル人じゃないと表現しえないフィーリングですよねえ。いやあ、たまりません。
「バンゾ」「ア・トリビュート・トゥ・ビツーカ」では、ジャズ・ハーモニカ奏者としての一級の腕前を聴かせてくれます。いやあ、凄腕テクニシャンですね、ガブリエルって。いま現在の世界のクロマティック・ハーモニカ界ナンバー・ワンの実力者じゃないですか。クインテットのアンサンブルも見事。セルジオ・コエーリョのトロンボーンとのかけあいもすばらしいですよねえ。
そして、続くアルバム10、11曲目こそこの作品のハイライト、ガブリエル・グロッシとマウリシオ・エイニョルンとの共演コーナーです。いやあ、これは本当に聴きものなんです。10曲目の「ディファラント・ビート」では二名のからみがまだそんなに目立たないんですけど、11曲目のピシンギーニャの書いた名ショーロ「カリニョーゾ」が極上。これはハーモニカ奏者二名だけの完全デュオ演奏なんですもんね。こんなシンミリ沁みる「カリニョーゾ」、あまり聴いたことないです。現存する決定的なヴァージョンになったのではないでしょうか。このハーモニカ・デュオによる「カリニョーゾ」一曲だけのためにこのアルバムを聴いても損はないです。
(written 2019.8.29)
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