パワー・ステイションのあの妙なドラムス・サウンドとリズムがアガる
https://open.spotify.com/album/4IpUyI6R1fyDtJF3cmJS4E?si=94xIZt74QvC_bMmZY05tjw
そう、かつてわりと人気だった英国のバンド(というかユニットみたいなもん?)、パワー・ステイション。1980年代なかごろでしたか。ヴォーカルがかのロバート・パーマーなんですよね。ロバート以外はアンディ・テイラーとジョン・テイラー(デュラン・デュラン)、トニー・トンプスン(シック)で、この四人がメンバーです。1985年にアルバム『ザ・パワー・ステイション』が出ていますが、ぼくはそれを自分で買ったことはなし。ロック好きの弟が買ったレコードが自宅にありましたが、当時はレコードよりなんといっても MTV ですね。「サム・ライク・イット・ホット」と「ゲット・イット・オン」のヴィデオがバンバン流れていましたよねえ。
実際、フル・アルバムがあったとはいえ、パワー・ステイションといえばその二曲で決まりとしてもいいのではないでしょうか。「サム・ライク・イット・ホット」と「ゲット・イット・オン」は7インチ・シングルも発売されていたようですがやはり知らず。本当にもっぱら MTV で流れてくるこれら二曲を耳にしていただけです。だからそれがアルバム・ヴァージョンだったかシングル・ヴァージョンだったか、いまだわからず。でも妙に耳に残る忘れられないサウンドでしたよね。
いま Spotify でアルバム『ザ・パワー・ステイション』を見ると、オリジナル・アルバム分のあとにいくつか入っていて、7インチ・シングル・ヴァージョンも同様に流れてきます。聴いていると、ミョ〜〜に気分がアガるなあ〜という1985年当時からの印象は変わりません。そしてかの T. レックスの有名曲「ゲット・イット・オン」(マーク・ボラン作)を、ぼくはこのパワー・ステイションのヴァージョンではじめて知ったんですね。
「サム・ライク・イット・ホット」も、基本「ゲット・イット・オン」のパターンで組み立てているように聴こえないでもないですから、パワー・ステイションとは要するに1985年に「ゲット・イット・オン」をデュラン・デュランでカヴァーしたかったバンド、と言えるんでしょうか。アルバムのなかにはいろんな曲があるみたいですけど、いま聴いても魅力を感じるのはこの二曲ですからね。シングル・カットされたのは正しかったんでしょう。
それら二曲で最も強く耳に残るのは、ロバート・パーマーのヴォーカルだとかアンディ・テイラーのギターだとかいうんじゃなく、この圧の強く激しいドラムス・サウンドじゃないかと思います。これは当時そう感じたしいまでもそうです。なんなんですかこのおかしな音は。音響調整の具合というか、録音とミックスの際にイジるとこうなるんでしょう、まるでドラム缶を叩いているようなこのドラミング・サウンド。
しかも音色が妙なだけでなく、音圧も音量もすごく高いですよね、このドラムスの音。だからこれもミックスでそうしたんだと思いますが、ロバート・パーマーのヴォーカルなんか正直あまり聴こえないと言いたいほど。主役はトニー・トンプスンの、あ、いや、エンジニアがつくった、このドラムス・サウンドですね。カンカンカン!って、ちょっとやかましいですけど、ど迫力ですよね。
「サム・ライク・イット・ホット」でも「ゲット・イット・オン」でも、そのドラミング・パターンもそうですし、ホーン・セクションもギターも一体となって表現するこのグルグル回転するようなリズム・フィギュアがこれまたおもしろいように、いま聴いても感じます。一定の決まった短いパターン・フレーズをどんどん反復する(コピー&ペーストの)ループ感覚みたいなものがありますよね。1985年ですから、ちょっとヒップ・ホップ・ミュージックを先取りした手法であるかのように思わないでもないです。だれもパワー・ステイションでそんなこと言わないでしょうけど。
(written 2019.8.15)
« 短いからいいというものがある 〜「イン・ア・サイレント・ウェイ」 | トップページ | カイピーラ・ギターのネイマール・ジアスによるグッド・イージー・ミュージック »
「ロック」カテゴリの記事
- 完璧なキース・カーロック(ドラマー)on ドナルド・フェイゲン『ザ・ナイトフライ・ライヴ』(2022.08.06)
- ストーンズ本隊より好きなんじゃないか 〜 ミック・ジャガー『ワンダリング・スピリット』(2022.07.14)
- ぼくの『ジョン・ウェズリー・ハーディング』愛 〜 ボブ・ディラン(2022.07.02)
- ディランで聴くよりディランっぽい 〜 ニッティ・グリッティ・ダート・バンド(2022.06.19)
- 失意や逆境のメランコリアとぬくもり 〜 コステロ&バカラック(2022.06.15)
« 短いからいいというものがある 〜「イン・ア・サイレント・ウェイ」 | トップページ | カイピーラ・ギターのネイマール・ジアスによるグッド・イージー・ミュージック »
コメント