リンダ・ロンシュタットの再来、ドーリ・フリーマン、マジでいいよ
https://open.spotify.com/album/3nrtejgwleUGvNPWXMymV2?si=kuW8cVv4Q5uzE3gHAm806g
萩原健太さんにご紹介いただきました。
https://kenta45rpm.com/2019/10/01/every-single-star-dori-freeman/
いいですねえ、ドーリ・フリーマン。アメリカ人シンガーですが、まるで往年の、そう1970年代の、リンダ・ロンシュタットそっくりじゃないですか。今年の新作『エヴリ・シングル・スター』(2019.9.27)は三作目だそうですが、これではじめてドーリを知ったぼくはすっかりゾッコン。こんなにチャーミングなポップ・カントリー・シンガーがいまどきほかにいるでしょうか。リンダ・ロンシュタットの再来じゃないのでしょうか。いやあ、好きだぁ、ドーリ!
で、本人はヴァージニア生まれで、今回のアルバムもブルックリンで録音したみたいですけど、このサウンドの感じは完璧ウェスト・コーストのそれですよねえ。カントリー・ベースのポップ・ロックで、かすかにラテン香味もあり。ラテンありっていうのがいかにも西海岸的ですよ。こういった明るい陽光のもとで楽しく歌っているような(カリビアン・)カントリー・ロックって、ほ〜んとにいいですよね。曲の歌詞は陰影に富んでいるみたいですけど、サウンドは陽です。
曲も書きギターを弾いて歌うドーリを聴いていると、現代のモダン・カントリーが失ってしまったようなナイーヴな素朴さ、ナチュラルなチャーム、簡素な美しさとか、そんなような往年のこの種の音楽の魅力をとことん取り戻しているような、そんな気がします。それはつまるところ1970年代にはリンダ・ロンシュタットが体現していたようなアメリカン・ポップの最も良質な部分でもあって、だからドーリはリンダの再来じゃないかなとまで思っちゃうわけなんですね。
アルバム『エヴリ・シングル・スター』でぼくが特に気に入っているのは、ドーリひとりでのアクースティック・ギター弾き語りでしっとり聴かせるしんみりとした4曲目「ユー・ライ・ゼア」、10「アイル・ビー・カミング・ホーム」とかもいいんですけどそれよりも、たとえば幕開け1曲目「ザッツ・ハウ・アイ・フィール」のポップでライトな味付けで歌い出す瞬間とかです。この歌声を聴いてみてくださいよ。
その1「ザッツ・ハウ・アイ・フィール」、2「オール・アイ・エヴァー・ワンティッド」、そしてなにより大好きな7「ダーリン・ボーイ」などには、あきらかな中南米風味がありますよね。リズムのハネとかサウンドには間違いないラテン・テイストがあります。三拍子の曲「ダーリン・ボーイ」なんかメキシカンですもんね。
だから西海岸的に聴こえるなってぼくは感じるんですけど、実際アメリカ合衆国南部で誕生したカントリー・ミュージックには、南部発祥だからこその近接するメキシコやカリブ地域など中南米音楽要素が抜きがたくあります。ま、アメリカの音楽はなんでもぜんぶそうですけども、カントリー界も例外ではないっていうことですね。
そんなカントリー・ミュージックの本質的な部分はしっかり継承しつつ、往年のシンプルでポップな味付けで軽快に歌ってみせるドーリ・フリーマン。まだまだこれから飛躍しそうな気がします。しかしながらいまの時代に「新しい」音楽要素がなにもないっていえばそうなんで、だから2020年代に大人気となったりしないとは思いますが、地道に活動を続けていってほしいですね。応援したいです。
(written 2019.10.10)
« ベテランの安定感 〜 ゼカ・パゴジーニョ | トップページ | ヒル・カントリーのブルーズ・ロック 〜 ノース・ミシシッピ・オールスターズ »
「ロック」カテゴリの記事
- ブリティッシュ・インヴェイジョン再燃 〜 ビートルズ、ストーンズ(2023.11.23)
- いまどきラーガ・ロックな弾きまくり 〜 グレイン・ダフィ(2023.10.12)
- シティ・ポップとしてのキャロル・キング「イッツ・トゥー・レイト」(2023.09.05)
- ロックでサンタナ「ブラック・マジック・ウーマン」以上の悦楽なし(2023.07.18)
- 王道のアメリカン・ルーツ・ロックは永遠に不滅です 〜 トレイシー・ネルスン(2023.06.25)
« ベテランの安定感 〜 ゼカ・パゴジーニョ | トップページ | ヒル・カントリーのブルーズ・ロック 〜 ノース・ミシシッピ・オールスターズ »
コメント