明るく喜びに満ちたサンバ 〜 クラウジオ・ジョルジ(1)
https://open.spotify.com/album/1oXaPKmz0U6c3IuxJ0BVQF?si=WHP1WGLaRBy8Vwkv90HPvQ
bunboni さんに教わりました。お書きになっているのは2019年最新作なんですけど、ぼくは知らないひとだったので、紹介されている三枚を2001年作の『Coisa de Chefe』からぜんぶ聴き、すっかりその最初のやつが好きになっちゃいました。
https://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2019-09-02
いやあ、こんなに明るく楽しいサンバがあったんですねえ。聴いていてうれしいことこの上なしのクラウジオ・ジョルジ『コイザ・ジ・シェフィ』(2011)。ブラジル音楽では一般的な翳り、哀感というか、要はサウダージといったものではなく、明るい喜びに満ち満ちたサンバを書き歌いギターを弾くひとなんですね。
リズムも快活、大編成のバンドやマス・クワイアも喜びを全身で表現していて、これはもちろんクラウジオの書く曲がそうなっているからですね。アルバム『コイザ・ジ・シェフィ』でも、聴きはじめの1曲目「O Samba Melhor do Brasil」から楽しげで、聴いているこっちの気分も浮き立ちます。特に中盤ごろからカイーシャ(打楽器)のアンサンブルがにぎやかなビートを刻みはじめ、同時に大編成コーラス隊が歌いだしたら、もうたまりません。楽しいぃ〜っ!打楽器とコーラスだけのパートなんかも最高ですね。
こんな具合なので、2曲目以後もこんなアレグリア路線をどんどんまっしぐらに突き進むクラウジオ。ずっとそんな調子なのでモノ・トーンにならないかな?と思うと、不思議と飽かせずアルバム・ラストまで聴かせてくれます。約一時間が楽しいったらありゃしない。いやあ、いままでサンバを聴いてこんなに楽しい喜びの感情に満ちたことってありましたっけ?
アルバム中、でもちょっとした変化球がないわけではありません。特に10曲目「Só Você」とラスト14曲目の「Samba pro Luisāo Maia」。この二曲は基本インストルメンタル・ソングで、でも前者では後半しっかりクラウジオの歌が出るんですけど、後者では歌らしい歌はなし。どっちもインストルメンタル・サンバにして、ちょっぴりアメリカ合衆国西海岸のフュージョンを想起させますね。特に14曲目のほう。
サンバとジャズ・フュージョンはそこそこ関係があると思っていますけど、ブラジルの本家伝統サンビスタがこうやってお手本を聴かせてくれたらうれしくなります。14曲目のほうはこれでアルバムを締めくくっているわけで、それがかなりフュージョン寄りのインストルメンタル・ミュージックになっているのは、サンバのアルバムなのだと思うとやや意外というか、意表を突かれるおもしろさです。
聴くひとだれをも笑顔にしてくれる、そして踊らせてしまう、クラウジオの『コイザ・ジ・シェフィ』、CD とかは日本ではもはや入手困難みたいですけど、聴くだけなら特に問題ありませんから。
(written 2019.9.7)
« ニュー・ソウルへのサザン・ソウル側からの回答 〜 1972年のアル・グリーン | トップページ | ボサ・ノーヴァっぽいクラウジオ・ジョルジ 70 »
「ブラジル」カテゴリの記事
- ジャズ・ボッサでビートルズ 〜 オス・サンビートルズ(2022.07.31)
- フローラ・プリムのニュー・アルバムは圧巻の傑作(2022.05.10)
- ポップなリオ新世代の面目躍如 〜 ニーナ・ベケール(2022.05.01)
- 声の美しさとリリカルさがいい 〜 カロル・ナイーニ 2013 & 21(2022.04.20)
- 枯淡のエリゼッチ 〜『アリ・アモローゾ』(2022.04.05)
« ニュー・ソウルへのサザン・ソウル側からの回答 〜 1972年のアル・グリーン | トップページ | ボサ・ノーヴァっぽいクラウジオ・ジョルジ 70 »
コメント