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2019/10/11

ベテランの安定感 〜 ゼカ・パゴジーニョ

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https://open.spotify.com/album/4fN80AnER7ua5DH8U1A7k9?si=QwmBHCYeQxiyJ2xVw3z1cQ

 

ブラジルのサンバ歌手ゼカ・パゴジーニョの2019年新作が届きました。『マイズ・フェリス』(2019.9.17)。これがなかなかいいんですよね。もうベテランのゼカですけど、安定感は変わらず、良質の、そんでもってかなりポップなサンバ・アルバムとなっております。ゼカは歌いかたが、ちょっとこう、投げやりというか乱暴というか、まあそんな感じのひとなんですけど、新作でも人懐こい味はそのままに、伴奏陣は豪華でポップっていう。

 

アルバム『マイズ・フェリス』では、どっちかというと明るく楽しいサンバのほうが多いかなと思います。1曲目のアルバム・タイトル曲をはじめとして、テレーザ・クリスチーナがゲストのカルトーラ作4曲目、瀟洒なストリングス入りの5曲目、ヤクザな感じの6曲目、パーカッションがにぎやかなやや北東部ふうの7曲目、アコーディオン参加の11曲目、コクのある歌の味わいを聴かせる12曲目、大西洋的な明るさのある13曲目と、これらはアレグリア路線ですね。

 

つまりこれら八曲以外はどっちかというとしっとり哀感系、すなわちサウダージ路線がまさっているというか、サウダージがしみ出していると思うんですが、それらも沈んでいる感じはちっともなく、人生とはこういうもんだとでも言いたげな前向きの説得力をもって聴き手に迫ってくるしっとりした情緒があって、いいですねえ。

 

サンバって人生の歌そのものだと思うんですが、生きてりゃいろいろとつらいこともあれば楽しいこともあり、よかったり悪かったり、悲喜こもごも、ないまぜになってぼくたちは生きていると思います。ゼカのようなベテランのサンバ歌手がこの新作でも表現しているのは、そんな人生の機微みたいなものかなぁって思うんですね。

 

アルバム『マイズ・フェリス』では伴奏陣とバック・コーラスを豪華にして、わりと派手めなアレンジをほどこしてあるのも成功ですね。上でも書きましたがゼカはこういった持ち味の歌手なんで、そのまま少人数の地味めな伴奏陣でやると、ちょっと雑な感じに仕上がってしまうかもしれません。今回はどこまでもていねいに装飾をつけたことが、ゼカの投げやりな歌い口をかえってイキイキと聴かせる結果になっていると思いますね。全編でハーモニカも効いています。

 

しかしですね、アルバム・ラストの14曲目「アペロ」(バーデン・パウエル)、これだけはオーケストラ伴奏じゃなくて、アミルトン・ジ・オランダ(バンドリン)+ヤマンドゥ・コスタ(7弦ギター)のデュオだけがバックを務めているんですね。きわめて控えめな伴奏ですよね。この曲での伴奏二名の達人技もすばらしいですが、二本の弦楽器だけに乗って淡々と綴るゼカのヴォーカルがこれまたいいんですよ。ホ〜ント、味ですよね。これぞサンバ。こういうのを聴くと、シンプルな伴奏でゼカの歌をアルバム一枚聴いてみたいという気がしたりもするから、ぼくも勝手なもんです。

 

(written 2019.10.9)

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